黒澤明

2016年12月23日

Mifune: THE LAST SAMURAI日記 ジェダイマスター編

20161202STAR WARSシリーズのスピンオフ的作品「ローグ・ワン」が現在日本でも公開中ですが、元々ルーカスがこの物語を制作するにあたりインスパイアーされたのがSAMURAI SPIRITって事をご存じかしら。

そんなSAMURAI SPIRITを演じてきたのが三船敏郎…その彼のドキュメント映画がスティーブン・オカザキによって制作されたのよ…タイトルはズバリ「MIFUNE: THE LAST SAMURAI」

彼の剣術は流麗と言うよりワイルド…一番好きな萬屋錦之介が美しい型の世界の鋭さを見せるのとは対照的に刀を完全な武器として扱ってるのよね。

錦之介が刀に神的な魂を宿らせ対峙する構えに対し、三船は己が相手を魂レベルで制圧する剣…正にジェダイマスターそのもの。

特に黒澤監督作品は素晴らしくて「羅生門」「七人の侍」他、どれを取っても完璧すぎて驚きよ。近年の邦画はTVの延長線上的な作りなので、この時代の日本映画は本当に凄かったのだなとあらためて感じる次第。

チャンバラによってバラエティ化する前の本物の剣劇は今やSTAR WARSによってSPIRITが受け継がれ国内では見た目だけの存在になってしまったようね。是非この「MIFUNE: THE LAST SAMURAI」をご覧になってSAMURAI SPIRITを復活させて!!若い衆!!



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2014年05月03日

黒澤明日記1 「影武者」編

20140504「映画界の巨匠、黒澤」「世界の黒澤」…黒澤明監督の名前を知らぬ者は、世界に於いても殆どいないと言って良いわね。恥ずかしながら自分はこれまで彼の作品をしっかり見ていなかったので思い立ち、カンヌ映画祭グランプリ受賞した1980年公開の「影武者」をじっくり鑑賞。

まずプロローグの段階で「しまった!」と後悔…どうしてこの作品をこれまで見なかったのか、と。無駄の無い台詞、舞台の様な演出に加え、斬新な手法にただただ引き込まれるのみ。この時点で黒澤明という人が独自の世界観を持ち、それをアウトプット出来るとてつもない器量の持ち主だったかを思い知らされたわ。

ルーカスやコッポラ、そしてスナイダーの様に若く才能ある監督達が彼の作品から様々なものを取り入れ嚥下し、次世代の素晴らしい作品を世に送り出している・・・そういう意味合いでも、黒澤明の映画界における功績はとてつもない。

「影武者」はルーカスとコッポラの助力で予算を確保し完成したというエピソードは有名ね。次作の最高傑作「乱」も同じく外国資本投入という形で完成している訳だけれど、ここが日本の映画界腐敗の大きな原因であるという事を認識すべきね。

これほどの作品を創り上げ、世界レベルで結果を出している黒澤監督に対し、日本企業は資金を渋りネガティブ・ピックアップ・ディールという条件を出すという始末・・・こういったエンタメに対する日本の姿勢は今も変わらず、むしろ悪化し続けている…だから今日の日本のエンタメの惨状は当然といえば当然よ。

さて本編にお話を戻すわね。「影武者」はそのタイトル通り、戦国時代磔にされそうになったこそ泥が、武田信玄の影武者となり数奇な運命を辿るというものよ。武田信玄は重臣達に「自分の死後は3年間動かずに領地を固め、嫡孫の竹丸の成長を待て」という遺言を残していたの。

ある夜、信玄は狙撃され命を失い、信玄の影武者である実弟の信簾は信玄そっくりの盗人を影武者にたてたのだけど、卑しい生まれの為品性の欠片もない彼は逃亡を試みる始末。しかし盗人は信玄の死を目の当たりにし、初めて信玄と言葉を交わした時の事を思い出して影武者として役目を果たすと決意…信簾や重臣達に指導されながら、持ち前の人の良さや機転の良さで側室や嫡孫をも欺くことに成功したわ。

しかし後見人の資格のない信玄と側室の子である勝頼は、影武者に反感を持ち自らの力を誇示しようと独断で出陣し、敵対する織田信長と徳川家康の前に敗れてしまうの。決戦の前に影武者の任を解かれた盗人は、実の孫として情を交わしていた竹丸との別れを悲しみ、武田の家臣達から石を投げられ屋敷を去り、最終的には武田信玄としての終幕を自ら選んだわ。

影武者として生きる事の辛さを味わい、真似ぶことから武田信玄として存在する意味を見出し、盗人は磔になって死んでいた方が幸せだったのか否か・・・ラストシーンを見ながら、何ともやりきれない気分に。

シーンによっては舞台の様であったり、壮大かつ繊細な絵であったりして、黒澤監督の絵コンテが1枚1枚見えてくるようよ。映画というよりは上等な"動的絵巻"と言うべきかも。そして最も驚かされるのは「超リアル」さね!要所に音楽は使われているものの、殆どが風の音やピンと張った空気の振動、松明の炎、川の水音といったもののみ。

着物や鎧の皺や汚れ、火縄銃の操作、建物の木の質感、そして馬に麻酔銃を打って足掻かせた戦場のシーン・・・どんな細かい部分も妥協を許さない、という気魄が伝わってくるわ。シーン終わりも微妙に余韻がに残っており、その場面に登場する人物の心が空気のように伝わるの。

自身の経験で、レコーディングの際に録音した音はぶつ切りにせず、空気を吸う音まで録るという理屈と全く同じだわ!そして意外だったのが、笑いを含ませたシーンが多いという事ね。太っちょとガリガリ、背の高い、低い家臣を対比させてみたりして緊張感を解いてくれる所も素晴らしいわ。

しかしながら、信玄と影武者を演じた仲代達矢氏の演技力は圧巻・・・!盗人から竹丸を愛する只の爺、一族の頭領になるまでの心の推移が見事に演じきられているわ。当初キャスティングされた勝新太郎氏が降板して良かったかもしれない。

ただ残念なのは、子役と徳川家康のキャスティングね。彼らの登場で空気感が現代に変わり興醒めしてしまうけれど、これは唯一目をつぶらないといけない点かも・・・。女性キャストは乳母と側室の3人のみ。現代なら大人の事情でもっときれいどころを入れて、等とキャスティングしてしまうのだろうけれど、戦国時代に城を守る状況なのだからこの人数であるのは当然・・・これもリアルよね。

カメラアングル的に人物をクローズアップするのではなく、引きで背景の中で自然に動く様を捉えるという手法は、絵を描く黒澤監督だからこそ成し得た方法だと思うわ。照明や音声なども含め、この時代では相当時間も必要とするし困難だったろうけれど、その表現が見る側の五感をフル活用させ、物語を細胞レベルで惹きつける要因になったのは間違いないわね。

これほどまでに天晴れな作品を生み出しながら彼に続く監督が日本に存在しないというのも数々の弊害があったからであり、それは今尚蝕み続けている。

「影武者」に触れて、自分自身日本人である事に誇りを持てたという事に感謝したい。そして本当に映画を愛する黒澤監督の情熱と挑戦に刺激されつつ、今一度エンターテインメントと向き合い、発信し続けることこそが優先であると確信したわ。日本も捨てたもんじゃない、もう一度そう言わなくてはね!

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