桜庭一樹

2015年05月05日

桜庭一樹日記2 ポップとインモラルの狭間編

20150501以前六本木アカデミーヒルズで、いやに気になる本を発見。桜庭一樹著の「私の男」…タイトルから恋愛小説であろうという匂いはしたのだけど、期待通りあっけらかんとした内容ではなかったわ。

簡単に言うと、父と娘が親子という枠を超えお互いを求め慈しみ合うという禁忌的なストーリーではあるのだけど、これは彼らが"究極の血の繋がり"を欲した結果に過ぎないの。

身体的でもなく精神的でもなく、細胞レベルと言うべきか・・・これ程までに人間同士が深く繋がり合えることがあるのだろうかと、羨ましい気にさえなってくる。物語は6つのチャプターに分けられており、娘の視点、父の視点、父の元彼女の視点で描かれ、ストーリー自体が少しずつ逆行して構成されているのよ…各登場人物の心情を知る事で、より深くこの親子の心情の変化を理解することが出来るわ。

不思議な事に舞台は現代の日本のはずなのに、読み進めて行くうちに何だか現世ではない様な錯覚を覚えてしまう。9歳の時両親を事故で亡くした花は、27歳の淳悟に引き取られ、嫁ぐまでの10数年間奇妙な親子生活を送るの。実は本当に血のつながっていた2人は強い絆で結ばれ、自分たち以外に全く興味を持たなかった・・・しかし世間の"モラル"が彼らの関係を打ち壊そうと襲いかかり互いを守ろうとした親子は罪を犯してしまう。

幾つもの重い秘密をもった事で、本来ならドロドロの荒んだ状態になっても不思議ではないこの2人は、不思議なほど優雅にひっそりと、そして清々しく生きているのよ。どんな男女が訪れようとも自分たちの血に勝るはずが無い、という揺るぎない自信が自分たちの愛を貫かせている。これほどまでに人間同士が愛し合い、溶け合う事が出来るのだろうか・・・これはもはや、人類への挑戦と言っていいかもしれない。リアルであって夢物語、夢物語であってリアル・・・一種浮遊感を覚えるかも。

この不思議な小説は直木賞受賞で注目を集め2013年に遂に恐れていた映像化を果たしたわ。淳吾役に浅野忠信がキャスティングされたということでイメージ的には近いものはあれど、骨を折りその奥にある内臓まで食らわんばかりの貪るような愛情を理解し描ききれるのだろうか、という懸念は残るのよね。

この物語は決して興味本位のインモラルな恋愛ストーリーではないわ。人間としての本能を呼び起こされ試されるという事を覚悟して挑むべきね。生きるとは食らうこと・・・その一言に尽きるかも。

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2013年04月04日

桜庭一樹日記1 ノンフィクション的フィクション編

20130406作家、桜庭一樹というはとにかく女性の描き方が絶妙なの。

「私の男」という作品でも、登場する女性全て親近感が湧くくらいの生々しい描写だったわ。今回ご紹介する「ばらばら死体の夜」という作品も、登場する女性陣が活き活きと描かれていてお見事よ。

タイトルがホラー仕立てではあるけれど、ストーリーはちょっと物悲しさを感じさせるわ。本書は6章から成り立ち、1章は神保町の書店の2階に住む美しい女、沙漠、2章はかつてここに下宿していた40代の翻訳家、解、3章は解の同級生で翻訳家の里子、5章は書店の大家の視点でストーリーが進んでいるの。4章は過去の沙漠、6章は現在の解の視点で描かれており、それぞれの時間軸が交差していて1度読んでからもう1度読み返すときに鮮度を保てるのが良い。

ストーリーは神保町にある書店の2階に下宿する美女、沙漠がかつてここに下宿していた翻訳家の解と出会う所から始まるの。2人はいつしか身体を重ねる仲になり、沙漠は解の身につけているブランド品から裕福さを感じとり、300万円貸してくれと言い出すの。一見裕福そうでも、実は解は妻の実家から援助を受けている上債務者だったのよ。解はお金を渡すから、と沙漠を連れ出し、かつて自分が育った貧しい家へと連れて行き・・・というものよ。

どこか非現実的でファンタジー的要素もあるけれど、2人を中心に彼らを取り巻く人々もお金に翻弄されて流されているというのが現実的よ。お金によって生まれる欲望、嫉妬、悲しみ・・・どれもがあり得ることだけど、そのどろっとした沼に身を沈めて生きて行くのか、そこから浮上するためにもがくのか、選択肢は幾つでも存在する。しかし解が選んだ道は実に感情的で人間らしい、そんな気がしたわ。

人を殺す、ましてやばらばらにするなんてぞっとする事だけど、その行為は彼にとって好意なの。何故そんな風に思えるのかというのは、解の抑圧された幼少期を辿っていくと感覚的に理解出来るような気がするわ。

人間の幸せは物や人や地位、色々な事で満たされるけれど、果たして自分にとって一体何が幸せなのか・・・沙漠のように目に見えるもので感じられるのか、解のように目に見えない感覚で感じられるものなのか、それともどちらも必要で不必要なのか・・・ふと現実の自分と向き合いたいときにお薦めの1冊よ!・・・あなたは今、幸せですか?満たされていますか?

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