幽霊画

2015年07月30日

幽霊画日記 掛軸からの視線編

20150720夏の風物詩といえば、やはり「幽霊」…以前、千駄木にある「全生庵」というお寺で三遊亭円朝の幽霊画コレクションを見に行った事があるのだけど、これが実に見事なのよ。

毎年夏限定で公開されているそうなのだけど非常に人気が高く、多くの来訪者が所狭しと飾られた幽霊たちにヒンヤリ・・・。

幽霊=女性=怖いという感覚で見てしまいがちだけど、その考えは一瞬にして吹き飛んでしまう。

どの作品も女性の「情念」「暖かさ」「ユーモア」が表現されているわ。目をむき出し血を滴らせ、蚊帳の上からニヤリと家主を覗くなど、オーソドックスな光景でありながら背筋にゾクッと来るものがある。

しかしながらやはり美人の幽霊というのは怖い!掛け軸の中で「うらめしや・・・」とか細い声を漏らしながらも急に変貌して襲いかかってきそうな勢いを持っているんですもの…中にはだまし絵風に表現されているものもあったりして、現代の広告に繋がるデザイン的な作品もちらほら。

幽霊というものがこれほどまでに生々しく且つアーティスティックに描けるなんて羨ましい限りだわ。

個人的に気になったのは、菊池容斎作の「蚊帳の前に座る幽霊」…行灯の中に紛れ込んだ蛍・・・そのうちの1匹が灯となってぼうっと照らし出した蚊帳の先には、女性の幽霊が!という構図なのだけれど、タッチが非常に現代的で行灯しっかり描かれているのが興味深い。

通常なら蚊帳の手前をしっかり描き向こう側が淡く描かれて当然なのだけど、わざと逆転しているのが面白いのよね。きっと現実世界ではおぼろげな幽女が、あやかしの世界で現実感を増すという趣向なのだろうけれど、特に際立っていたのは彼女の目よ!誰かを待っている・・・でもそれは流れない時間の中で、寂しいと言うよりも虚しさが増してゆくだけ。そんな物語を想像してしまうほどの切なさを感じるわ。近くで見ると行灯と幽霊の質感に違和感があるというのに、全体的に見ると完璧な融合!終わりのない女の悲しみが見事に表現されているのが素晴らしいわ。

他にも俗世的な感覚を超越していると痛感したのは、円山応挙の「幽霊図」かしら…他の幽霊画は墨の濃淡や別色の加筆でアクセントを出すという手法をとる中、この作品はワントーンで勝負しているの。袂に手を添えややうつむき加減の幽女は、今世の私達を「クスッ」と笑ってるようにさえ見える。気品に溢れた表情としなやかさに暫し見とれてしまったわ。

絵というものは見る側の気持ちや状況によって解釈が変わるもの…彼女達から放たれるメッセージはその都度変化し、私達の心の奥底をじっと見つめているに違いない。どの幽霊からも人間が人間であることの愛おしさ、そして虚しさすらも感じるわ。もしあなたが幽霊になるとしたら、どんな風に描かれたい?そうねえ、自分ならスリムでセクシー・・・ひゅーどろろ~。

pipopipotv at 00:00|PermalinkComments(0)