ポール・マザースキー

2016年03月26日

ハリーとトント日記 天使が導くその先に・・・編

20160312猫が登場する映画は興味あれど、老人と猫が主人公という点で辛い結末だったら・・・と不安感が募ってしまいつい避けてしまった1974年公開「ハリーとトント」…結果、その斬新な演出と心温まるストーリーにブラボー!!

主演の老人ハリーを演じたアート・カーニーがアカデミー主演男優賞受賞、そして脚本賞もノミネートされていたというのは大納得だわ。

物語はNYマンハッタンに住む老人ハリーが区画整理のため立ち退きに遭い、愛猫トントと共にアパートから出ることになる所から始まる…彼は長男の家に移り住むもののうまくいかず中古車を購入しトントと共に長女いるシカゴへ…その間様々な人達と出会い交流していくというロードムービーよ。

ハリーの3人の子供達はそれぞれ悩みや問題を抱えており、そこに父親の同居という問題が生じて一悶着というのが定石だけど、この点は実にサッパリと描かれているのが良い…と言うのもハリー自身子供を愛しているけれど彼らに深く介入せず72歳という年齢にも関わらずきちんと自立しており、トントを相棒に人生を楽しんでいるのよ…日本的な老人の苦悩や貧困などは全く無く、見ているこちらが元気をもらえたわ。

ハリーは道中、家出娘の少女と出会い、決してお説教じみたことを言わず彼女の良いようにしてあげようと行動するの。あとで気付いたけれど、この少女はハリーを導く天使的役割を担っており、彼に若さと行動力をもたらしたわ。

その次は自然食品のセールスマンからジューサーとビタミンを購入して元気になり、その次はなんと美しい娼婦に気に入られてその効果を実感、次はトラブルに巻き込まれて警察に囚われるも、そこで知り合ったインディアンにジューサーと引き替えに長年痛めていた肩を治してもらう・・・と、コミカルではあるけれどハリーが人の為に行動する事で彼自身がどんどん良い方向に進むという”わらしべ状態”になっていくのが面白い。

常に彼はトントに話しかけたり歌ったりし、そこで己の心情や状況を表現出来ているのが素晴らしいわ。ほぼひとり芝居と言って良いかもね。

トントもそんな主人の勝手な振る舞いに付き合いながら気ままに行動する…こんな似たもの同士だからこそベスト・パートナーなのかもしれないわ。でもそんな二人にも別れはやって来てしまった・・・体調を崩したトントは動物病院の小さな個室の中で息を引き取るのだけどハリーはずっとトントに歌い語りかけていたの。

トントが逝ってしまったのを悟ると「さよなら」と呟きすぐ退室…一見冷たく思えるかもしれないけれど、この演出には本当に無駄が無いどころか感動よ!!…くどくど描かないことでハリーがどれだけ相棒を愛していたかが理解出来るもの。日本にありがちな涙を流し「トント~」などという過剰演出だと真の悲しさは伝わってこないわよね。

この映画は全編通して自然で無駄な部分が一切無い…だからこそ役者の力量が際立つから更に名作となる訳だわ。

最終的にハリーは公園で猫を保護する猫おばさんに口説かれたり、公園でトントそっくりの猫を見つけ海岸まで追っていくという救いのあるラストになるのだけど、海岸での猫とのシーンは本当に美しいの。

天使が導くその先に繰り返される輪廻転生・・・ハリーは自分に人に対し正直に一生懸命生きているからこそ人生という長旅を楽しめるのかもしれない。何事も自然に・・・というのは難しい事だけれど、もう少し力を抜いてみることも必要かなと思えてきたわ。もし、あなた自身のロードムービーを描くことに迷っていたとしたら、是非お試しあれ!

pipopipotv at 00:00|PermalinkComments(2)