ピーター・ガブリエル

2016年02月01日

ヌスラト・ファテー・アリー・ハーン日記1 リアル・ワールドから伝説へ編

20160201世界的に著名なパキスタンのミュージシャンでありイスラム教神秘主義スーフィズムにおける儀礼音楽カッワーリの歌い手である「ヌスラト・ファテー・アリー・ハーン」…彼に関する情報は少ないけれど、その声を一度聴いたら最後脳まで震え上がってしまう。

世の中に素晴らしい歌い手は沢山存在するが、歌手、ボーカリスト、アーティストという従来のカテゴリーで彼を呼ぶのは軽々しい気さえしてしまう。歌は神に捧げるもの・・・やがてそれは長い歴史をかけて人々の暮らしに息づくものと変化していったけれど、ヌスラトの声はその伝統的な部分を差し引いてたとしても”生命の根源”そのものとしか言い様が無い。

残念ながら彼は48歳という若さで亡くなってしまったけれど、南アジアの歌手として最も多く西洋の聴衆の前で公演しカッワーリの分野に於いても最も多くの音源を残してくれた。

初めてヌスラトの声の洗礼を受けたのはピーター・ガブリエルのアルバム「UP」に収録された「Signal To Noise」を聴いた時…ピーガブの語るような一音ずつ置いていくようなボーカルの後にスッと流れ込んできたかと思えば一瞬にして巨大な空間を創りだし、そこをとてつもないエネルギーで満たしてしまった。

この2者の押し引きのバランスは実に見事で、後半はヌスラトが習得したカッワーリの独特な喉を鳴らす手法が余すところなく披露されているわ。

ピーガブはその才能は勿論ではあるけれど素晴らしいアーティストを見つける才能も兼ね備えているのだなと痛感し…伝統的な手法もピーターの手にかかれば本来の素晴らしさはそのままに、更に現代的なアプローチでより研ぎ澄まされたものとして再生されていく。

ヌスラトの発声がどうなっているのか今なお研究中なのだけどレッドボイスの強さと伝統的なカヤールなる喉奮わせの技法、更に神に届けと言わんばかりの精神的な上昇グルーブなどなど…所謂ボーカリストとしてこうあるべき、こうしなくてはいけないというつまらない禁忌を一蹴している事は明らか。

個人的には非常に理解出来る部分が多く自分の得意とする手法が活かせるはずなのでヌスラトの発声は時間をかけて自分のスタイルに取り入れたいと思うわ。

彼の声はピーター・ガブリエル主催『リアル・ワールド・レーベル』からもリリースされているので少しずつ集めていくつもりよ…出来ることならライブでヌスラト洗礼を受けたかったけれど今は天国…でも貴重なピーガブとのライブ映像を見つけたので是非ご覧あれ。

若干ピーガブが押され気味のセッション的な展開が見物!!そしてヌスラトの力強い目合図も見どころ…改めて”歌う”ということ”発する”という事の決意と責任の重さを思い知らされた1曲でありました…ヌスラト・ファテー・アリー・ハーンよ、永遠なれ!!

【Signal To Noise】

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2015年01月14日

ゲート日記 窮地の閃き!!編

20150112仕事始めでLOGICのセットアップをしていて、ふと思ったの…一昔前に大はやりしたドラムにかけるエフェクト…ゲートエコー。元々はフィル・コリンズとエンジニアのアイディアで生まれた事は有名だけど、そこに至るまでの経緯を知る人は少ないわ。

GENESISを脱退したピーター・ガブリエルがソロアルバムのレコーディングでフィルを呼び寄せたのだけど、その時の注文がドラマーの息の根を止めるようなオファーだったらしいの。何と、フィルに対して、「君の金物系の音が嫌いだから金物抜きのドラムセットを持ってきて・・」ですって!

ここで言う金物とはシンバルやハイハット等の事だけど、ドラマーにしてみると金物が無いとリズムがぼけて引締らなくなってしまってどうにもならない…ここで、エンジニアは試行錯誤してキラッとアイディアを閃かせるの!

スタジオには録音用のマイク以外に隔離された、ミュージシャンと話をする為の"トークバック"と呼ばれるマイクがあるわ。今に例えるならPCに内蔵されてるマイクのような性能で、低音など拾えないし歪むのよ。フィルとエンジニアはこのマイクでドラム音を録音、これにコンプレッサーを通して音を絞るようにし、余韻をスパッと切る事で金物に変わるリズム表現を編み出してしまったからビックリ。

後にあのゲートエコーと呼ばれる一時代を築いたエフェクトが誕生した訳なのよ!!。

PCの進化でマシンを起動させれば何でもメニューが揃う現代。とっても便利な環境になったけど、ネガティブな状況で結果を求められることで閃きがより輝きをます事を忘れがちな時代だけに、あえて遠回りな思考が何かをブレイクスルーするキッカケだと感じるこの頃でありました。

最近はゲートエコー全開のエフェクトが減ってるけど、それが完璧で全開で何か新しいサウンドに感じるのが以前ピックアップしたDennis Naplesの「Bullet」…ドラムは巨匠レニー・ホワイトなんだけど驚きのサウンドだから聞くべしね…フフ。

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2014年01月25日

ピーター・ガブリエル日記2 詩人は進化するのみ・・・編

20140123ピーター・ガブリエルには毎回驚かされっぱなしではあるけど、2011年にロンドン・ハマースミス・アポロで行われたライブ「New Blood Live in London」はまたもや歴史に残る名盤と言えるわね。

2003年ツアー『グローイング・アップ・ライブ』から8年…彼が度肝を抜く名手であることは周知の事実だけど、このライブはフルオーケストラのみで自身の曲をアレンジしたものよ。一部はカバーもあれど、ピーターの曲は複雑だし、あの世界観をどんな風に再編成するのかと期待大・・・そして、その期待を上回る完成形が!タイトル通り「血を入れ替えられて生まれ変わった」訳ね。

このライブでもピーターの娘がコーラス参加していて、一見、いや一聴不安定な印象を得るけれど、父のメインボーカルに心地良く混じり合うのが良い。しかしながら、自然や金属、吐息などを存分に使い、あの独特なグルーブで完成された曲達をフルオーケストラでどう再構成するんだ!?と思ったのも束の間、各セクションの楽器がその繊細さやダイナミックさでオリジナルをより的確に表現していたわ・・・これは恐ろしい事よ。

バンド・サウンドはそのボリュームや音色でパワーを発揮するし、楽器以外の音を足せばたちまちワールド・ワイドな世界が展開、そしてオーケストラでは、その楽器単体の持つ空気の様な流れが作品の内面がより濃く引き出している…これは、この世にある音という音を知り尽くしたピーターの挑戦ね。

日本でもある歌い手がオーケストラとボーカルでライブを行っていたけれど、ただ曲をオーケストラ用にアレンジしたもので歌い方もそれに合わせたものに過ぎなかったわ。

今回の音源を聞いて特に驚かされるのは、指揮者をはじめ各パートの奏者が曲を完全に理解しているとしか思えない繊細なフルオケアレンジをしていることね…正に-New Blood Orchestra-よ。冒頭で単音で『スーッ』と入ってくるにしても、その『スーッ』がどんな意味合いの『スーッ』なのか・・・それがわかっていなければそんな音は出ないでしょう!と言いたくなるほどの見事さ。

2枚組のCDには22曲という盛り沢山な音源が収録されていて、「Red Rain」や「Downside Up」など名曲は勿論のこと、「Diggin In The Dirt」も新たなシーンを感じさせてくれたわ。でもやはり一番のお薦めは「Darkness」…より深い闇が辺りを支配し、ヘッドフォンから別次元へあっという間に誘われてしまうの。

より重厚に、そして空間を自由に浮遊する音の波…もしかして、これがピーターの思い描く音の最終形?いやいや、彼はまだまだ進化し続けるわ。MCの合間合間に響き渡る観客の歓声が、これからも彼を新境地に導いていくから。

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2013年10月05日

ピーター・ガブリエル日記1 詩人とはかくありき・・・編

20131002歌姫ターヤ・トゥルネンの新譜でカヴァーされ、異彩を放っていた楽曲「Darkness」…その生みの親である、鬼才ピーター・ガブリエルの音を初めて耳にしたのは今から20年ほどかしら。

ご存じの通り、彼は"ジェネシス"在籍時よりその独創性とパフォーマンスで多くの人を魅了してきたわ。哲学的な歌詞の世界、物語性、そしてそれを完璧な形で再現する発想力・・・どれを取っても紛う事なきアーティストと言えるわね。

最新ツアーではオーケストラとの共演を果たし、重厚な音圧と最小限の映像表現のみでガブリエル・ワールドを表現し尽くしていたわ。しかしそれ以前、2003年に開催された「グローイング・アップ・ライブ」は、とにかく何度見ても彼の知的でシニカルなユーモアに魅せられっぱなし。

主にアルバム「UP」からの楽曲で構成されており、そのステージ構成も緻密かつ大胆で素晴らしいわ。円形のステージ上には、お馴染みトニー・レビンをはじめとする強者ミュージシャンが配置され、ピーターがその間を歩いたり走ったりしてパフォーマンスするの。楽曲の世界にシンクロして、頭上の球体が怪しい色を放つ卵のようなものであったり、大きく開いた翼のようであったりと様々な形に変化するのも見所のひとつよ。

キーボードの前に立ち、しっとりと「Here Comes The Flood」を披露した後に「Darkness」という流れは鳥肌もの。核になる人声と金属音をミックスさせたリズムに囁くようなピーターのボーカルが、一瞬にして深淵の闇を描き出したわ。

ピーターとメンバーも淡々と演奏する中、唯一女性ボーカルが大きな動きで"動"を表現しているのが言葉にならないほど格好良い!しかもこの女性ボーカル、ピーターの愛娘ときいて更にビックリよ。そう言われてみればどことなく面差しが似ているし、ボーカリストとしては存在感は薄いものの父の声によく混じるので納得。

しかも中盤「Downside Up」では父ともども宙吊りで歌うという度肝を抜く演出も。子供を育てるためにバンドを脱退した父としては、娘との共演はこれ以上ない喜びだったでしょうね。

名曲「Sky Blue」ではそのメロディーの美しさが際立ち鳥肌が立つ立つ・・・。曲の後半で伝説のコーラスグループ"ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマ"が更にその美しさに生命力を与え、全細胞が揺さぶられるほどの魂の叫びを堪能したわ。

個人的には、TV業界を皮肉ったファンキーなナンバー「The Barry Williams Show」がお気に入りなのだけど、これまたピーター自身がカメラを縦横無尽に操作し、いたずらっ子のように自身や聴衆やメンバー、スタッフを撮影しまくるという演出が素晴らしいの。

"ジェネシス"時代は詩的な世界を滑稽なコスチュームとパフォーマンス、その後は最新の機材などを取り入れ、近年はシンプル且つじっくりと自分の世界を表現していく…これこそまさに理想の形ではないかしら。彼はアーティストという言葉では簡単に言い表せない、革新的な詩人といったところかしら。

常に人を楽しませることに全神経を注ぎ、まるで物語を紡ぐように一瞬にしてシーンを変えて魅せてくれる…こんなに格好良い60代、どこにもいないわよ!最近改めてデュエット曲の最高峰「Don't give up」を聴き返したけれど、やはりKate Bushとのコンビが無敵ね。才能溢れる2人の素晴らしい化学反応・・・秋の夜長に是非堪能してみてくださいね。彼の音楽歴は本当に豊かなので、今後さかのぼってピックアップしていこうかしら!!えぇい、どこをとっても格好良いぜ!ピーター!

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2013年06月13日

ウォーリー日記 エコロジーな心編

20130611昨日「ショート・サーキット」を紹介したので、ついでに映画「WALL・ E」も…「カーズ」のJ・ラセター制作総指揮によるPIXER作という事で期待はしていたけど、思わず感涙してしまったほどの素晴らしさ!



時は29世紀、ゴミ溜めと化してしまった地球をひとりぼっちで掃除するロボット"ウォーリー"。彼は人間が捨てた大昔の雑貨や音楽を愛する情緒豊かなロボットなの。そんなある日突如として現れた巨大な宇宙船の中から、探査の使命を受けた最新型ロボット"イブ"が現れたわ。



ウォーリーはイヴに恋してしまい、自分の宝物である植物を彼女に見せたのよ。その植物を見たイヴは急にフリーズしてしまい、再び宇宙船が彼女を連れて行ってしまったの。ウォーリーは彼女を追って地球を飛び出し…というストーリー。



エコロジー、自然や健康についての原点回帰だけでなく、人の"心のあり方"の原点を見事に表現していたわ。毎回感心させられる細かい描写は勿論だけど、登場人物がロボットで台詞らしい台詞も殆ど無いというのに、どの子も個性豊かでちょっとした心の変化までが巧みに描かれているのには参った!



単純な指のパーツが恥じらいながら動く様、怒りから困惑するライトで表現される目、寝ぼけて足のローラーを落とす様子…挙げたらきりがないけど、制作側がどれほどこのキャラクター達を愛しているかガンガン伝わってくるの。



しかもウォーリーが起動するときはmacの起動音と同じという遊び心も忘れていない。宇宙船の中で優雅に暮らす人間達は全員おデブさんという設定もなかなか皮肉たっぷりで面白いし、故障中のロボットを集めた修理室ではストレスに冒されてしまったロボットが登場したりして、まさに現代の縮図と言った具合ね。「2001年宇宙の旅」もしっかりとオマージュされていているのも素敵。



見終わった時にはどの子も可愛くて可愛くて、久々に心の奥から込み上げる感情を抑えきれなかったわ。機械なのに・・ここまで表現出来てしまうのか・・思い起こせばPIXERの制作スタッフは昔からCGの無機質的な質感にどうやって情感を表現するかを熱心に研究していたわ。出来てしまえば当り前だけど、そこまでの苦労が個人的には感じられるわね。いつものようにエンディングも凝ってるけど、ピーター・ガブリエルの歌声がバッチリはまりすぎてます!



感動って、人間のギザギザした部分を取り除いてくれるのね。



米では昔からアニメは子供の見る物と割切ったマーケティングがあったけど、日本アニメ市場の研究やアメコミ作品の映画化の成功等でマーケティング戦略も変わったわ。PIXERもディズニーに買収されたらディズニー色が入り込むのではではと一部では心配されていたけど大丈夫そうね。



それよりも、出涸らしの日本のコンテンツ業界!!このままでいいのだろうか?

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