ニール・ブロムカンプ

2016年11月01日

BMW films日記1 復活編

20161101

BMW filmsと聞いて、あ!と思った人はかなりの映画通…今から15年前の2001年にあの高級車BMWが自社の車をテーマにショート映画をリリースしたのよ。

BMWなので、綺麗に撮影された同社の車が煌びやかにCM的映像化されてると思ったらビックリ…登場するのは勿論BMW車なんですが、その扱いが実にシュール。何作品かあり、どれもが実に奥深い設定になっているのです。

当時、一番印象に残ったのが今は有名になってしまったガイリッチー監督作品。主演はマドンナ…もしかしたらコレをキッカケにお付き合いとか・・・。それはさておき、内容はマドンナがLIVE会場もしくはレセプション(記憶が定かではありませんが・・・)に時間通りに到着できそうになく、運転手に「定刻通りにつけろ」と命令します…ドライバーは冷静に「了解しました…」と、ここからが凄い。

もちろんその車はBMW…恐ろしいドライビングテクニックでタイヤをキーキー鳴らしながらショートカットで都市を右に左に疾走…もちろんマドンナはその都度車内で過酷なGに怯えおののき息をするヒマさえありません…そして、会場に見事定刻通りに到着・・・で、ドアマンがBMWの後部ドアを開けると、何とマドンナは失禁しているじゃありませんか・・・。

いやービックリしました…BMWの中でマドンナがおしっこお漏らしですから…これがオチになるわけですから素晴らし過ぎます。他にも、BMW車が戦争での棺がわりに兵士の死体を運ぶ作品があったり、正にゆりかごから墓場までの映像化ですよね。

あくまでもPR的な戦略なんですが決して車を美化するのではなく、道具として、家族として、時には犠牲的視点で物語を支えているのです。知る人ぞ知る作品集でカルト的に語りつがれ、今ではメジャーな監督の才能を見事に開花させたBMW filmsなのでした。

そんなBMW filmsが今年復活!!…その第一弾が10/28にオンラインでリリースされたのです…監督は「第9地区」ニール・ブロムカンプで「THE ESCAPE」…なにやら違法な人間クローン実験で生まれた女性をESCAPEさせるような展開…本編は是非オンラインでご覧になって下さいね。

当時YouTube等の映像メディアが無い時代に、いち早く配信での上映を試みたのですからたいしたものです…米ではNETFLIXやAmazonが市場を活性化してますが、相変わらず日本はダメダメですね。作り手も国内の仕様もない映画祭で肩書きを得ようとしてるインディペンデンス系監督も含め、自身で切り開く姿勢と意欲と知識が足りなすぎます…環境のせいにしてもダメダメ…スポンサーとクリエイティブが高次元で結びつくとこの様な作品を生み出せるという見本なのです。

「THE ESCAPE」についてはまた後ほど。

【BMW Films】
bmwfilms.com


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2014年11月12日

チャッピー日記1 あのテイスト編

20141111前作「エリジウム」が何だか生ぬるかったニール・ブロムカンプ監督…特にデビュー作品「第九地区」で大傑作と評価されただけにかなりのプレッシャーだったと想像できますが、そんな彼の最新作が「チャッピー」。

ポスターもご覧の通りやはりブロムカンプ色ですよね…その予告編が届きましたのでご紹介。

詳しいプロットはまだ不明ですが、予告を見る限り、知能的に生まれたてのロボット「チャッピー」が時系列で学習成長している様子がうかがえますね。で、何らかの組織に組み込まれ戦場!?の場へ。

学習による善悪を基軸に物語は展開されていくようですが、ブロムカンプ的善悪は一貫して社会的差別による不平等が根底にあります。前作「エリジウム」ではその部分が、ちょっとステレオタイプに描きすぎで今ひとつな感じだったのですが「チャッピー」は大丈夫かちょっと心配。

主演はウルバリンでお馴染みのヒュー・ジャックマン…彼とロボットだと「リアル・スティール」がありましたが、これもちょっと感動を押しつけ過ぎな内容だったので残念でしたね…映像はよく出来てましたが・・。勿論、あのシャールト・コプリーも出てますよ!!

ブロムカンプ的差別描写は一貫してゲットー的な軟禁状態の地区を背景に、そこで生き抜く生命体の有り様なんですが、「チャッピー」も同じテイストなので期待したいです。くれぐれも感動押しつけ作品にはしないでね…フフ。


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2014年11月08日

エリジウム日記 あ、あと、一歩・・・!編

20141107傑作だった「第9地区」のブロムカンプ監督と実力派マット・デイモンがタッグを組んだ、2013年公開の「エリジウム」…共に近未来が舞台であり、「第9地区」ではコミカルなテイストで人種差別、今作では一変、シリアスに格差社会を描いているわ。

正直な感想としては、冒頭から前半にかけての流れは惹きつけられるけれど、肝心のラストの部分が間延びしてしまった事で感動が薄らいでしまったかも・・・。アクションシーンの演出や編集、物語の整合性において違和感を感じてしまう部分がある事から「惜しい」感は否めないわ。

ただマット・デイモン、ジョディ・フォスターをはじめとする役者陣の存在感は素晴らしく、前作で主役を演じたシャールト・コプリーが今回は残虐な悪役を好演しているのも見所のひとつね。

物語は2154年の地球が舞台…大気汚染や人口の増加などから、富裕層のみが"エリジウム"と呼ばれるスペースコロニーに移住できるという特権を得ていたわ。そこには豊かな自然や生活が存在し、高度な医療ポッドで人々は病とは無縁の生活を送っていたのよ。一方地球は劣悪な環境で、人々は貧しさと病気に苦しんでいた・・・。マット演じる主人公のマックスはエリジウムを夢見て、幼なじみのフレイを思いつつ日々労働に明け暮れていたのよ。

ある日彼は仕事場で致死量の照射線を浴びてしまい、余命5日と診断され解雇されるの。エリジウムの医療ポッドを使えば命が助かる、そう考えたマックスは闇商人スパイダーと無謀とも言える取引をし、自らの体を改造する事に同意したわ。スパイダーの条件はエリジウムの片道切符と引き替えに特権階級のデータを奪い、脳内にダウンロードしてくるというもの。

マックスが選んだ特権階級はエリジウムのシステムを構築したアーマダイン社のCEO・・・彼は防衛長官のクーデターに加担しており、エリジウムの全てを書き換えるデータを保持していたの。そのデータを奪ったマックスの前には防衛長官と傭兵クルーガーが立ちはだかり、死闘の幕が切って落とされたわ。

マックスはエリジウムに行く為の資金を得ようと犯罪に手を染め、真面目に働けば事故に遭い、愛しい幼なじみには既に白血病を患う子供がいた、親友は失うし、この上ない辛い人生を生きてきたのに最期も人々のために命を捧げるのよ。神話ベースのストーリーでは当然の展開にせよ、何とも後味が悪い…そう感じるのは、前述の通り後半彼が死を決意するまでの流れが長く、核になる線がぼやけてしまったから。しかもラストに幼なじみの笑顔、というのが腑に落ちない。子供が助かった後彼女が起こす行動は、必死でマックスを探すというのが当然だから笑ってられないもの!

ラストは「グラディエーター」のそれを彷彿とさせる要素が強く、死によって導き出される幸福の描写が薄らいでしまったのは非常に残念ね。人間は生きて集団の中にいれば、必ず格差を感じるもの。必ずしも平等というものは存在しないにせよ、強い信念を持ち邁進し続けることでその感覚は多少なりとも変化していくのだと思う。

エリジウムに住むことは誰もが望む幸せかもしれないけれど、エリジウムを目指す事こそが幸せなのかもしれないわ。日々是精進・・・地味ではあるけれど人類の課題はここから、ですかね。そしてブロムカンプ監督新作「チャッピー」に期待しつつ。

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2012年04月21日

第9地区日記 真のドキュメンタリー編

20120413低予算、無名俳優のみの起用などをもろともせず数々の賞を受賞した2009年公開の映画「第9地区」。その見事な発想力と映像に、まだ記憶に新しい方も多いはず。

物語は、南アフリカ共和国の上空に突如エイリアンの宇宙船が出現したところから始まるわ。エイリアン達は支配層の死亡と宇宙船の故障により難民となり、MNUと呼ばれる超国家機関の監視の下、第9地区に隔離されるの。しかし市民とエイリアンの争いは絶えず、エイリアン対策課職員のヴィカスは彼らを強制収容所へ移住させようと第9地区から立ち退かせようとしていたの。その際、ヴィカスはあるエイリアンの家にあった謎の黒い液体を不注意で浴びてしまい、やがて身体に異変が起きてしまう・・・というストーリーよ。

何よりもお見事なのは、一見ばかばかしいともいえる状況を"真剣に"ドキュメンタリーにしているところね。

MNU職員のインタビュー、手持ちカメラでの臨場感ある映像、どれこれもがきちんと作られていて笑えるけど笑えない、という印象よ。エイリアンのルックスは甲殻類でグロテスクだけどキャットフードが大好物、ギャング団の食い物にされ食料のツケを払わせられたり暴行を受けたりと、かつてのエイリアンのイメージを覆したわ。この設定だけでも大笑いだけど、ストーリーが進行するにつれエイリアン達の悲哀と苦しみがじわじわと滲みだし、アパルトヘイト政策、差別といった本作のテーマを十二分に理解出来たの。

そしてとにかく印象深かったのは、ヴィカスを演じたシャールト・コブリーね。セリフの殆どがアドリブというのがお見事だけど、それが更にドキュメンタリー度を増す結果になったのでしょうね。最初は冴えない、妻の父親に頭が上がらない優男だったヴィカスがエイリアンに変貌していく間、妻への愛と孤独、人間としての卑怯で愚かさを晒していく様は実に生々しく人間臭く、非常に心を打たれたわ。

人間誰しも世間で生きて行く以上、上司や親、親戚とうまく関わっていかなくてはならないし、立ち回っていかなくてはいけないのよね・・・でもそれは時に自分を偽ることにもなる。だけどその中で自分にとって大事なものは守らなくてはいけないし、信念を貫くべきなのだわ。

登場するエイリアン、ヴィカス、彼の家族と同僚、ギャング、それぞれの立ち位置が自分の日常に当てはまってくるし、大笑いして見ていても最後は己の心と向き合わされる・・・この作品は、本当の意味でのドキュメンタリーなのかもしれないわね。

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