トム・クルーズ

2015年10月10日

オール・ユー・ニード・イズ・キル日記 プラダのエミリー、戦場へ編

201510052014年作品「オール・ユー・ニード・イズ・キル」・・・日本のライトノベルズ(桜坂洋)が原作…評判でさほど触手は動かなかったけれど「プラダを着た悪魔」で好演のエミリー・ブラントがヒロイン役ということで興味津々。

タイトルも転々として「エッジ・オブ・トゥモロー」~「リブ・ダイ・リピート」と…でも一番しっくりくるのは個人的に「エッジ・オブ・・・」かしら。

原作では中高生向けという事もあり主人公は少年少女だけど、映画では米国メディア担当の少佐と戦場で名を挙げる軍曹という設定になっているの…原作通りの設定だと日本にありがちな、少年が戦いの中で成長していく系の漫画的な展開になりかねないが、主役を現役軍人にする事で物語全体が落ち着いて進行出来ている気がする。更に主人公のウィリアム・ケイジ少佐にトム・クルーズ、そしてヒロイン、リタにエミリーという両雄が揃った事で軽くならずにすんだと言えるわね。

舞台は近未来…地球はギタイという侵略者に脅かされ、防衛軍は機動スーツで対戦するも戦況は芳しくなかったの。戦場に出るのが嫌だったケイジは将軍の不興を買い、実践経験の無いまま戦場へ出ることになり、そこでギタイの「アルファ」と共に戦死・・・それから彼は自分が死ぬ前日に戻るというループを繰り返すことになったわ。

死んでは学び、そこから又進んでは死を繰り返し、軍の中でも凄腕の女軍曹リタも同じ経験をしていた事を知ってギタイ滅亡の為に力を合わせて戦うというストーリー。

映像的には何度もループを繰り返すという部分が肝でケイジが人々の発する言葉に先回りしたり、へっぴり腰で機材の使い方もわからない状況からプロ級に扱えるようになる過程が面白い…そしてリタは「ヴェルダンの女神」という渾名で呼ばれるほどの戦士で、あの「プラダ・・・」の時からは想像がつかないほど筋肉質でストイックなボディになっているのも見所ね。

トレーニング中、ケイジに呼ばれてすっと立ち上がるシーンは「おぉ!!」と叫びたくなるほど美しいわ。

ただギタイは蜘蛛のような軟体動物のような形状で、さほど気にはならない存在だったかも。これまで見たSF作品で、こういったクリーチャーは架空のものであってもちょっとした愛嬌というか存在感があるものだが、今回全く感じなかったのはきっと侵略者の背景がきちんと描かれていないからなのかもしれない。

やはりクリーチャーやパワードスーツ、戦場、美少女という日本独自のアイコンが並べ立てられているから、その背景まできっちりと描き込むには映画では設定をほぼ別物にするしか方法がなかったのではないかと推測。

ケイジが戦闘嫌いで戦場に出たくない、という理由が皮肉にも彼を戦場へ送り込むきっかけとなり、死が肉体を、リタへの愛情が内面を大きく成長させた要因という設定は納得がいくわ…最終的にエンディングはおさまる方向におさまったというのも嫌味が無くて良かった気がする。

とにもかくにもエミリーの勇姿は一見の価値有り!!と言えるわね。しかし、もし自分が失敗する日の前日をループしていたとしたら、とにかく成功させる為に努力し続けるだろうなあ・・・ゲームのようにリセット出来ない人生・・・確かにそれは酷だけどリセットし続ける方こそが苦しいのかもしれないわ。

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2015年04月24日

マイノリティー・リポート日記 誤差が導き出す真実編

201504162002年スピルバーグ作品「マイノリティー・リポート」…SFである事は間違いないけど、劇中で登場したアイテムがほぼ実現化しているというのは凄い!物語自体も良く出来てるけど、その点にも再確認よね。

物語は2054年のワシントンが舞台で"犯罪予防局"の第一線で働く男が主人公なの。ここは、3人の"プリコグ"と呼ばれる予知能力者の透視した犯罪場面を映像化して解明し、事件が起こる前に殺人を防ぐという最先端のシステムが装備されてるの。たちまち犯罪率は90%減少という成果を導き出したわ。

ある日いつものように仕事をしていた男は、自分の殺人予知現場のデータを見て愕然とし追う側から追われる側になってしまう!男はやがてこの完璧なシステムに僅かな誤差を見いだし、企てられた真実を見つけ出そうとするけど・・・という内容よ。

驚いたのは、今現在iPhone等を扱う際当たり前のように行なっていた"モーションコントロール"という動作が劇中で同じように行われてるわ!その他にも網膜認証、デジタル広告など、実際に目にしたり耳にしていた事が既に13年前のこの作品内で展開…何という発想力かしらね。

特に興味を引かれたのは、個人に対して"追ってくる"そして"話しかけてくる"ターゲット広告!!…網膜で個人データが読み込めてしまうから、カード会社の宣伝のポスターから美女が笑顔で現れ『旅行はいかが?』と声をかけてくるし、商店では『この間お買上のタンクトップいかがでした?』なんて声がしてきちゃうの。このシステムもそう遠くない将来現れるかもしれないわね。話しかけられた照れそう・・・ドキドキ。

そんな最新のツールとは対照的に、人々が身を寄せ合い生きている貧民窟や愛嬌のあるクモ型網膜探査機など、人間の体温を感じられる部分がコミカルに描かれていて、所々でスピルバーグ節を楽しんだわ。人間はこの世界に生を授かり、ありとあらゆる知恵を使って快適に生きようと努力する。

結局どんなに世の中が様変わりしても、変わらないもの・・・それは人間の"生きようとするエネルギー"なのかもしれないわね。

因みにこの作品…TVシリーズとして計画されてるらしいから、最新版では更なる現実感のある近未来を見せてくれそうで期待大ですね、そうそう同様な近未来と言えばテリー・ギリアム「ゼロの未来」も間もなく日本公開…こちらも注目ね…フフ。

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2014年08月28日

トロピック・サンダー日記 やり切る楽しさ編

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先週ピックアップした「チャーリー」で主演のロバート・ダウニー・Jr.が映画界に本格復帰の前哨戦とも言えるのが2008年異色のコメディ作品「トロピック・サンダー」よ

「アイアンマン」とは同年のリリースなんだけど、アカデミー賞他、各賞に助演男優賞としてノミネートされ実質的な前線復帰作と言ってもいいかも…だって彼の演じるのは黒人役なんですから!…作品的には、もう素晴らしいの一言…制作・原案・脚本、そして主演・監督も務めたのがお馴染ベン・スティラー。

物語は戦争映画の撮影現場でベン・スティラー演じる落ち目のアクションスターとジャック・ブラック演じる下ネタ系コメディアン、そしてロバート・ダウニー・Jr.演じるオスカー常連俳優の3人が背景の違いからもめ事に・・そこで怪しいこの作品の原作者が「役者をリアルな恐怖の中に放り込め!」と監督に耳打ち、そして実行されるのだが想定外の事態が起きてしまうの。

放り込まれたジャングルは麻薬製造地帯のとってもデンジャラスな場所。手の込んだ仕込みと勘違いする役者がリアルな戦闘に巻き込まれ、持ち前の俳優魂と個性でサバイバルしていくのだが・・と言うのがベーシックな流れよ。

何しろ、監督のスティラーの映画好きが組込まれたこの作品…「地獄の黙示録」「プライベートライアン」「レインマン」「エージェント」の視聴経験が必須ね。他にも「ランボー」や「戦場に架ける橋」その他もろろの名場面もリスペクトされて映画マニアにはたまらない作品に仕上がってる。

コメディだからと言って、アクションやセットが手抜きなんて全くなし…「ジュラシック・パーク」の撮影場所(ハワイ)に8週間も滞在しての長期ロケだし、最近のアクション映画と同等の火薬量を使用してるんですもの。その中で演じる3人+2人のボケぶりは羨ましいわ。

映画マニアは勿論楽しめるけど、もう一つ、米の映画制作の現場を知ってる人(究極!?)にとっては本当に大爆笑なのよ。一例解説すると、物語に登場する監督はイギリス人なんだけど、"紅茶野郎"とか罵られたりとか実際の現場でもアメリカ人ってイギリス系の監督を嫌いな人が多いわ。英語のしゃべり方がまどろっこしいとか、理屈っぽいとかでね。だから最近の映画の悪役はイギリス系になる事が多いのよ。

それと、映画制作におけるそれぞれの立ち位置、つまり誰がその場のボスかって事ね。映画のエグゼクティブプロデューサー役にあのトム・クルーズがカメオ出演するのだけど、その考え方がデフォルメしてはあるものの事実なのよ。本当の意味で最高に笑えるのがこの人物。

その他にも、黒人蔑視問題とかコメディながら巧みに脚色されてるし社会的な皮肉もたっぷり表現されていて素晴らしいの。サントラも良く出来てるし、またっくもって妥協がないコメディの大傑作と言っても過言ではないわ!!特にロバート・ダウニー・Jr.ファンは必ず見るべし!

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2014年08月22日

エージェント日記 千里眼編

20140821トムクルことトム・クルーズ…アイドル的スタートから今では俳優・プロデューサーとして常に最前線なポジションで映画を楽しませてくれている。

彼の素晴らしさは、オファーを受けたときの脚本読解力…つまりどの作品に出るべきかの選択判断能力がずば抜けてること。アカデミー主演賞をとっても、以後しょうもない作品ばかりに出てアレアレみたいな役者が多い中、かれは常にベストな作品を選んでるわ。

そんな彼のセンスを感じさせるのがアカデミー他様々な映画賞にノミネート・受賞した1996年に公開された「ザ・エージェント」…トムが演じているのは全米一のエージェント会社に勤める有能エージェントなの。やり手である彼は、高価な年棒と引き換えに選手の家族の気持ちを犠牲にしてきた事に気付き、会社に対して提案書を提出。理想に満ちた企画書は同僚の賛同を得たと思ったのも束の間、彼は会社をクビに。

5歳の子供を抱えた経理のシングルマザーだけが彼に付いて会社を辞め、大勢いたクライアントも同僚にさらわれ只一人落ち目のフットボール選手だけが残る始末。全てを失い一から立ち上がろうとする彼はフットボール選手とシングルマザーから愛する事の力強さと素晴らしさを学ぶ。

とにかく前半は、あっという間にトムが契約の鬼であった状態から自責の念にかられる部分までがテンポ良く進み、後半はじっくりと彼が人を愛する事に苦悩しつつ一生懸命になる部分が描かれていて凄く良かったわ。日本ではあまりスポットの当たらないエージェントという仕事の滑稽な部分もリアルに描かれていているから面白いの。

シングルマザーが、トムを愛しながらも子供がいる事で引け目を感じ自分の思いをセーブしたり、いつも冗談ばかり言っている選手が命がけで家族の為に戦ったり、相手を思うが故に自分を犠牲にするという愛情が伝わって人間の強さを改めて思い知らされた気がする。

アカデミー助演男優を受賞したキューバ・グッディング・Jr演じる落ち目のフットボール選手の「金持って来い!」のトムとのかけ合いは素晴らしくリアルで生き抜く原点を感じ取ったのよね。仕事は結果を出してなんぼ、青臭い事ばかり言っていては食べてはいけない…確かにその通りだけど、青臭い部分も持ち合わせていないと心がすり減って大事なものを見落としてしまうわ…改めて今の自分の心の在り方を考えさせられたわ。

そして、トムクルの脚本レベルでの完成時を想像できる千里眼は、その後も「マグノリア」「Eyes Wide Shut」「コラテラル」他、毛色違う作品でも十二分に発揮され、最新作「Edge Of Tomorrow」も成績は今一だったものの、作品の評価は高かったわね。

トム・クルーズ…きっと晩年も素晴らしい俳優・プロデューサーとして大活躍していくでしょう!

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2014年02月04日

マグノリア日記 愛と不信、24時間のあがない編

20140203ちょっと宗教的意味合いの濃い作品をご紹介…それは1999年作品「マグノリア」

ここはロスの郊外マグノリア・ストリート。人々は一見、お互いに無関係な存在ながら実は運命の糸に絡まっているの。そんなお話を3時間の長編で描き出した短編的構成、それが「マグノリア」よ…監督はポール・T・アンダーソン。

この作品に主役はいないの。主だった12人の運命が24時間同時進行しながら展開、一つの話に終結していくのね。冒頭で、主人公すべてが人物紹介のようにガイドされるところから物語がスタートするの。

主な登場人物は"クイズ番組の司会者""天才少年""死に行く男とその生き別れた息子""恋する警官"他…構成は大きく二つの流れが…一つは病気(ガン)で余命幾ばくもない、元TV局のプロデューサーと生き別れた息子(トム・クルーズ)に、そのプロデューサーと遺産目当てに結婚した若い妻(ジュリアン・ムーア)よ。

そして、そのプロデューサーが現役の時に制作し、今でも人気を得ているクイズ番組の司会者とその妻に、番組で人気者の天才クイズ少年がもう一つの流れなの。ここに、死に行く老人を介護する男や番組司会者の娘、その娘に一目ボレする警官、天才少年の父に元天才少年などが巧みにストーリーを織りなし終結していくわ。

彼らに共通するのは寂しさ。そして人生の岐路に立たされる事…決断する者、迷って後回しにして更に問題が大きくなってしまう者と様々よ。良かれと判断したことが・・。例えばクイズ番組の人気者だったドニー(元天才少年)は今や一文無しでツキにも見放されている。そこで初めて気付く!かつては拒絶していた愛情や仲間付き合いを求める事に…その結果・・。それにオーバーラップするように描かれる現役の天才少年の孤独。遺産目当ての妻が、夫が死にかけようとする瞬間に感じた愛。米のシンボル的な円満家庭でも娘は性的虐待からドラッグ中毒で親とは不仲。

この社会との疎外感が、正直すぎて落ちこぼれてしまった優しい警官と同調してコミュニケーションが芽生えるの。と、全てがアメリカの影の部分に焦点を当てているような・・。テーマは家族の絆の大切さと寛容。脈絡が無いようでも、それぞれが影響を及ぼす…臭ってきそうな程に人間味のある風変わりなキャラクターはアンダーソン監督の得意とするところね。

大好きな「American Beauty」のサム・メンデス監督とそう言った意味では同じ時代の見方をしているわ…メンデスが全体として闇の向こうに明るさを見せたとすると、アンダーソンは闇(人間不信)をリセットする描写に徹したの。これは一昔前であればインディペンデントでしか表現できなかった世界だけど、観客層の変化でメジャーな作品として世界に流せる時代になったのが素晴らしいかも。

各パートの役者の演技と演出が素晴らしいのよ。キャラクターに見事に溶け込んでいたのには驚き。クルーズは女嫌いなのに女性から好かれまくるカリスマTVパーソナリティという矛盾した役柄で、役者としての幅を広げたわ…他のキャストも同様よ。

そして、「マグノリア」を見る前に絶対に知っておかないと全体の意味が通じない大事な場面があるわ…それは"カエル"…ここに象徴的に登場するカエルは旧約聖書に出てくるカエルよ。それはモーゼに率いられたユダヤ人の出エジプト記を描いた章で、"ユダヤ人を奴隷から開放しないエジプトの王に神は災難を与える"というものよ。その災難がカエルの大量発生なのね。つまり不信を抱くものへの罪のあがないがベースにあるの…そのカエルがどこで出てくるかは見てのお楽しみ~。

罪と罰、愛と不信、名誉と孤独…宗教的要素を背景に3時間でこれだけ密度の濃い作品は初めて見たわ。アンダーソン監督を含め、独学で映像を学び一般的な映画制作のセオリーに組する事なく表現できる監督がこれから評価されると確信を得た作品でもあったの。

テーマがとても重く、予測の出来ない物語で、日常の何気ないライフスタイルに潜んでいるリアルな物語を独特のテンポで見せてくれるたわ。万人に受ける作品ではないと思うけど、必見の作品と言えるわ。

【PS】
丁度このBLOGをアップしてる時に、看護師役で出演していた名優フィリップ・シーモア・ホフマンが薬物の過剰摂取の為、亡くなってしまったわ…お冥福を祈ります。 

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2013年11月26日

コラテラル日記 フィルム・ノワールの闇と夜明け編

20131123CGによるVFX盛り沢山の作品が多かったので、一転フィルム・ノワールにひたってみようかと思って2004年にトム・クルーズが悪役を演じて話題作だった「コラテラル」を鑑賞…監督はリアリスティックな表現で男の世界を映像化するマイケル・マンよ。

「ヒート」や「インサイダー」などの作品で有名ね。

舞台はロス、日没から翌朝までの出来事を、殺し屋(トム)とタクシー運転手(ジェイミー・フォックス)の関係を心理描写を巧みに絡めながら物語は進んでいくの。



「ゴッドファーザー」のように男系映画は先入観があってあまり見る機会がなかったけど、最近面白さが分かってきたのかもしれないわ。この作品も、仕事として淡々と殺しをしていくクルーズが時に寂しく、むなしく、空虚にも思えるけど、背景的に知的な世界観や哲学を持ってるから、どこか悟り的な部分を多く感じたのよね。



相反する小さな夢を追いかけていたら、殺し屋ツアーに捲き込まれてしまったフォックス演じる運転手…自分の人物像を淡々と分析されキレてしまうも、結局逃れようとせずに従属的に(コラテラル)流されてしまう自分の弱さ。この二人の対照的でありながらどこか同穴的な共通点の描き方はお見事。それを見事に演じきるクルーズとフォックスは素晴らしすぎるわ。



映画はフィルム・ノワール的な行き場のない閉塞感を、色味やBGM、台詞にちりばめ、マイケル・マンが得意とするロスの風景を背景に世間では何事もなかったように時間だけが過ぎ、それを夜明けとラッピングさせながらシミが消されていくかのように人の虚無感を表現しているの。



悪役のトムもかっこいい拳銃使いではなく実践的な銃さばきで、この作品のためにトレーニングしているのだなと感心していまったわ。そして何と言ってもジェイミー・フォックス!



フォックスは同年のアカデミー賞で「レイ」の主演男優賞を受賞して、この「コラテラル」でも助演男優賞にノミネートされてたのね。それにしても、彼は出る作品の選出感覚が素晴らしい!「ドリームガールズ」「路上のソリスト」他、秀作ばかりなのね。これも彼の強みかもしれないわ。

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2013年03月08日

スタンリー・キューブリック日記2 最後のラビリンス編

20130311キューブリックの遺作展をピックアップしたので、彼の最後の作品となってしまった1999年の作品「Eyes Wide Shut」に触れようかしら。

物語はニューヨークに住む内科医(T・クルーズ)とその妻(N・キッドマン)のお話よ。夫は妻の精神的浮気の告白を聞き、今まで感じたことのない嫉妬心と妄想を抱いて街をさまようの。そのうち、ふとしたことがキッカケで、淫靡な集会の扉をくぐるのだった…というものよ。

と、その前にキューブリックの歴史を振り返りましょう。


彼は映画界だけではなく直接的にも間接的にも各分野のクリエイターに多大な影響を与えてるわ。キューブリック青年は17才の時にルック誌に写真が売れてからルック誌でカメラマンとして働きながらコロンビア大に通いつつ映像を学ぶの…そして人生の大半をイギリスの田舎で過ごしていたようね。スチール写真の影響でドキュメンタリー作品からスタートした映画人生、彼がメジャーになるキッカケになったのがカーク・ダグラス。



キューブリック初の大作「Paths of Glory -突撃-」に主演したダグラスは「スパルタカス」出演時に最初の監督が降板したさいキューブリックを後任監督に指名したとの事。



1960年代の米のTVや映画はピュアーな恋愛が中心のいたってノーマルな世界。そんな時に「ロリータ」を発表し世間をかき乱す…あの時代に現代の憂鬱を描写してしまったのだね。そして「博士の異常な愛情」で究極の恋心!?を導き出し第一幕終了。



第2幕は今世紀を代表する傑作「2001年宇宙の旅」…キューブリックは精神世界へと見るものを誘い「時計じかけのオレンジ」「シャイニング」で暗転…しばらくこの暗転は続くのよ。



7年後、突然幕が上がる。「フルメタル・ジャケット」…戦争映画だった”フルメタル・ジャケット”とは軍が標準装備する弾丸の名称で、人間の体を貫通する弾丸なのよね…冷たく光る”フルメタル・ジャケット”の鈍い輝きに恐怖が映り込む。第三幕のテーマは?と悩む暇もなく突然また暗闇に・・。



12年後、最終幕が上がり始めたがそこにキューブリックの姿はなかった。置き手紙のようにフィルムを一つ残して・・。



『キューブリックは映画界の神様でしたから絶対に近づくことができない存在でした』と関係者が語ったそうよ。そんな彼を支えてきたのがワーナー・ブラザース・ピクチャーズ社。「時計じかけのオレンジ」以来25年以上キューブリックを支援、制作費を提供すると同時にいかなる無理な注文にも答えていたとか。



「フルメタル・ジャケット」の場合はイギリスの自宅近くに東南アジアを再現するセットを作り、「シャイニング」では空撮が必要な場合でもコロラド州にいる撮影スタッフにロンドンから無線で指示を送るなどしてイギリスを離れる事はほとんど無かったそうよ…スタジオに行く時でも自宅から車で時速50キロ以下で運転させるなど、イギリスの田舎に完全に自分が管理できる世界を構築していたとか。



芸術に関しては決して譲らないキューブリック。ワーナーも制作に関しての全ての権限を彼に与え、見せてもらえるのは完成品だけで、意見の出しようなどなかったとか…また、同じシーンを100回以上取り直しさせても俳優達は一切文句を言わないのね。



遺作となった「Eyes Wide Shut」は当時夫妻だったキッドマンとクルーズが本能的に異常で危険な心理学者を演じるスリラー作品。スタッフは小規模ながら70億円の予算で制作、ワン・シーン60テイクも撮るなど(19ヶ月間も撮影していた)、最後まで完全主義を貫いたそうよ。



イタリア人監督ロベルト・ベニーニは『キューブリックはフェリーニやカフカのように私たちに夢を与えてくれ、物語の楽しさを教えてくれた』と・・。



完全主義者と称されるキューブリック、『私には安っぽく思われるこの言葉を、私を攻撃するために用いるのはいかにもジャーナリスト的だ。我々は何かを創ろうと試みる時、それが最良のモノとなる事を望む。私は時間も金も浪費する訳ではない。良いモノを創りたいだけなのだ』と語っているのも象徴的。

映画を芸術の域に高めたキューブリック…時代はまだキューブリックに追いついていない気がするわ。そして、彼の脳裏にあった映像には誰も近づけないのかもしれないかも・・。



と言うことで「Eyes Wide Shut」…ジャケットやタイトルから想像するに、期待?欲望?謎?…と人間の煩悩がめくるめくよう。本編を見終わって思うのは、全てはキューブリックの計算通りなのかも!?という事よ。普段の生活で人が考えたくない“欲望”“SEX”“嫉妬”“強迫観念”を追及した洗練された作品だわ。この嫉妬と強迫観念に苦しむ男をテーマに、人間臭く、個人的で、そして楽観的に2時間半の時が刻まれるのよ。

映像的には“エロティック”という言葉を、そのものでなくアート的な感覚でコーティングした美しさがあるわね。色彩的な構図は言わずもがな。ピアノの単音だけで聴かせる効果音には驚愕よ!キューブリックの才能が遺憾なく発揮されている今作、是非愛する人とご鑑賞あれ。



一度見ただけでは「Eyes Wide Shut」の奥が見えないわ・・。キューブリックが見る者に問いかけた最後のラビリンスよ。もう彼の映画が見れないのはとても残念ね。



“キューブリックよ永遠に”

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