トム・ウェイツ

2014年09月05日

ミステリー・メン日記 ストリートヒーロー原点!?編

201409071999年作品「ミステリー・メン」をご存じの方は、筋金入りのヒーロー通と認めるわよ!

今でこそマーベルを中心にアメコミの実写化でスーパーヒーロー作品は新境地を開いてるけど、シニカル的な先駆けはこの「ミステリー・メン」じゃないかしらね。

ヒーロー映画は以前から色々あるけれど、ここに登場するストリートなヒーロー達はあまり強くないのが見所よ!

物語は正義と平和を愛するけれどいつも失敗してばかりのドジなヒーロー達が努力し力を合わせ悪の権化を倒して本物のヒーローになるという内容よ…後にスマッシュヒットとなった「キック・アス」に通じるわね!

スコップを武器にする現場出身のシャベラー、怒るともの凄い力を発揮するフトュリアス、ナイフ投げの紳士ラジャ、人を失神させるほどのガスを出すスプリーン、透明人間になれるオタク少年インビジブル、極め付けは父の頭蓋骨を入れたボールを投げて攻撃するボーラー・・等々…それぞれを演じる役者陣もそうそうたる顔ぶれ。

個人的なツボはあのトム・ウェイツが遊園地の廃虚に住む武器デザイナーとして主演しているの…これだけで見逃せない!

「ミステリー・メン」は世間で地道に働く、いわゆる立場の弱い人にスポットを当て、敵方に自意識過剰な笑いをさそう人物が用意されて更に面白い…でも何より、努力する事、そして自分を信じる事がパワーの源になるという事、人間は言葉や態度でしっかりとコミュニケーションを取り、お互いのつながりを深める事が大切なんだなと改めて思い知らされたわ。


ただ面白いだけでなく、それぞれ現状の自分に置き換えられる奥行きのある作品なのよ。公開当時単なるおバカ映画扱いで殆ど日本では話題にならなかったけど、先週ピックアップした「トロピックサンダー」同様に表面的な笑いと内面的な個人の淋しさが上手くミックスされた上質な作品になってる。

今こそヒーロー映画全盛な時だからこそこの「ミステリー・メン」をオススメするわ!因みに、一押しヒーローはやっぱりボーラーね(笑)

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2014年08月14日

トム・ウェイツ日記2 酔いどれ天使は笑う編

20140814トム・ウェイツの声は人を酔わす

しゃがれただみ声でしょ?という人もいるけど、彼の吐息、呻き、呟き・・全てが「音楽」なのよ。

以前1999年の「MULE-VARIATIONS」をピックアップしたけど、やはり自分の中での神盤は1974年発表のセカンド「Heart Of Saturday Night(土曜日の夜)」ね!

自ら役者としても活躍しているトム、その表現の幅の広さから後期は前衛的な作品が多いけど、初期のJAZZ色が強いアルバムはシンプルながら、いやシンプルだからこそ素晴らしいわ。

初めて彼の声に触れたのは、ちょうど歌に興味を持ち始めた20歳の頃。そのときの衝撃と言ったら・・・天地がひっくり返るようなショックというものは後にも先にもこれっきりと断言出来る程よ。歌というものは声を使いその世界を表現するけれど、その声の持つ魅力、説得力、そして魔力というものは凄まじいものなのだと思い知らされたわ。

とにかくこの神盤、1曲目の「New Coat Of Paint」は度肝を抜かれる格好良さ!ナイトクラブでの一場面を切り抜いたような自然で"粋"なナンバーよ。ボトルの中には既に半分になったバーボン、煙草の煙が燻る中でキャスケットを被ったトムが酔客を前にピアノを弾き出す。彼自身も酒を呷り、呂律が回らなくなってきはじめた状態でのセッション、というシーンが浮かんでくるの。この1曲から全てが始まったわ・・・!

次に秀逸な作品は「Diamond On My Windshield」ね。ほぼベースとボーカルのみで進行していくというスタイルで、耳にした事のある人も多いはず。これまたトムの声の力を見せつけられた楽曲ね!サビの部分でようやくメロディーラインらしきものが確定するものの、後は全て語り。リズムには乗っているものの微妙な間合いが見事で、コピーをしようと思っても不可能よ。この間は彼独自のものなんですもの・・・くーっ、格好良すぎ。

ナイトクラブ・・・売春婦やストリッパー達の笑い声・・・男と女の駆け引き・・・それは決して淫靡なものではなくどこかあっけらかんとした、生きる人間のエネルギーを感じさせるものばかり。そしてその裏に潜む孤独・・・。ああ、この人は本当に人間が好きなのだと、アルバムを聴き終わる度に痛感するの。

時にパワフル、時に叙情的に、語るが如く歌うトム…ボーカリストという凡庸な呼称は彼にはふさわしくはない。"酔いどれ詩人"はこれからも人々を酔わせ続けるに違いないわ。

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2013年02月08日

トム・ウェイツ日記1 モダンと前衛の狭間酒魂編

20130206トム・ウェイツ日記 モダンと前衛の狭間酒魂編

「トム・ウェイツ」はいつも人を驚かせるわ。その声、その表現、その存在・・どれをとってもアートとしか言い様がないのよね。



彼のアルバムを何枚か持っているけど、どの作品もギョッとさせられてしまう。酒瓶と煙草と安い香水の香りがしてきそうな昔のブルージーな世界観が1番好きだけど、1週間に1回は聞きたくなるのが、1999年の「MULE-VARIATIONS」というアルバムなの!



トムの前期は、人間臭さ満載の色合いが主流だったけど、後期は映画も手がけていたせいかかなり実験的な要素が色濃くなっていて正直聞きづらい部分もあったのよね。でもこの作品は前衛的になり過ぎてはいないけど、音的にも構成的にも尖っていて心地よい敗北感を覚えたわ。



彼の声は卑怯なほど格好良い。音楽的、理論的なものをすべてを超越している…ある意味無敵なのよ!どんな楽器が挑んできたところで到底勝てる訳がない わ。オブリガード的に時たま顔を出すホーンやギター、パーカッションというより"その辺にあった太鼓ひとつ"の音がキーマンになっていたり、彼自身の声や その場に存在する音にちょっとしたエフェクトをかけてループにしてみたりと、自分が長年挑戦したかった方法を次々と形にしてしまっているの。



でもこの方法は付け焼き刃では出来るはずがないのよ。トムの世界観と表現力と声があって初めて完成されているんですもの!



だからこそ自分が挑戦するときは、十分な期が熟してからでないと薄っぺらいものになってしまうわね。お薦めは、トム自身の声がループになっている1曲目の 「Big In Japan」と14曲目の太鼓の音がお腹にずしっと来る「Fillpino Box Spring Hog」…他にも度肝を抜く作品が目白押しなので機会があれば是非皆さんにも驚いていただきたいわ。



どんな言葉で彼の事を伝えようとしてもなかなか良い言葉が出てこないの…彼は音楽という手段を使って己のすべてをぶつけてくるから。ああ、今も酒瓶片手に笑いながら何かを創っているんだろうな。かなわないなぁ・・。

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2012年12月28日

Dr.パルナサスの鏡日記 リアル・ブラック編

20121224その衝撃的な個性にノックアウトされてしまった名作「未来世紀ブラジル」の監督、テリー・ギリアムの「Dr.パルナサスの鏡」をダークな年末を過ごしたいあなたにオススメするわよ!



お話は以前に悪魔との賭で不死を手に入れたDr.パルナサス。その代償として自分の娘を16歳の誕生日の日に悪魔に捧げないといけない。何とかそれを避けたい博士はある行動に出る…!という物語よ。



主役の博士から命を助けられる商才豊かなトニーを演じるのが、今は無きヒース・レジャー…ヒース・レジャーと言えばあの「バットマン:ダークナイト」で狂気のジョーカーを見事に演じきった素晴らしい役者さんよね…この撮影中に他界してしまったので、未完成のままでお蔵入りかと思われていたけど、友人でもあったジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの3人の協力で別世界のトニーを演じる事で無事作品は完成。違和感ない仕上がりになってたわ。ちなみに、彼らはギャラをそのままヒース・レジャーの娘に寄贈したとの事よ。ヒースは本当に役者として、人間として愛されていたのね…素晴らしいわ。



あの「未来世紀ブラジル」ではフィルムをスタジオ側に散々いじられ結末まで変えられてしまい、作品の持っていた本来のテーマが伝わりにくいまま公開・・ご立腹のまま「映画制作が嫌いになった!」という状態に陥ったギリアムが送り出した今作。期待を裏切らないその独特の世界観にまんべんなく酔わされたわ。



ベースにはパルナサス博士の一人の人間の本音部分(欲)と、家族を持った後の母性的な部分(愛)があって、その欲に絡みつくコミカルな悪魔が博士の心を通じて様々な人間の本性をえぐり出すのよね。その描き方がギリアム・ワールドなのよ。



それを表現するのに大きな役割を担っていたのが、お話の核となる旅芸人Dr.パルナサス一家の移動式旅小屋。見せ物小屋的で一見楽しそうだけど、どこかもの悲しい部分や暗の部分が背景にペーストされてる。そのギミックな作り込みがギリアム・ワールド。



衣装や小道具、メイクも一見ヨーロッパのクラシカルなデザインなんだけど、よく見るとモダンなの。中でも日本の着物とドレス生地をうまくコラージュしていたり、僧侶が舟形鳥帽子をかぶって登場したのには驚かされたわ。色々な個性の強い要素が含まれているにも関わらず、それがひとつの世界の色合いとして成り立っているのよね。このセットデザインの混沌さがギリアム・ワールド。



そして、その混沌さが登場人物のそれと上手く対比してるのよ。酔っぱらいから色情婦人、えせヒューマニストからイブ的快楽…。タイトルにある『鏡』はそれらを増幅させるアンプのような存在で、醜い自分をもっと好きになるというブラックなユーモア…これこそギリアム・ワールド。



そんな世界観で終始登場する悪魔を演じるのが歌手としてピポ子の崇拝するトム・ウェイツ。本人のキャラをそのまま出し切って一癖も二癖もある"はまりすぎキャスティング"ね。トムが普段から表現している世界にに見事シンクロしてる。でも、ここでの悪魔は結構愛があるのよ。自分が楽しむ余興の世界を演出してるの。これまたギリアム・ワールド。



そしてその結末は…やっぱりギリアム・ワールドよ。



役者陣もとにかく大健闘!博士の愛娘を演じたリリー・コールは『マーク・ライデン』の画集からそのまま抜け出たよう。改めてキャスティングの重要性というものを思い知らされたわ。



この世は常に相対するものがありシーソーのように作用するから、生きる事に意味がある・・一見摩訶不思議で美しい世界を見せているかと思いきや、人間の内面をまたもやズルズルと引きずり出したギリアム監督!やってくれましたね!もっと語りたいのだけど、多くの方に見て頂きたいのでこの辺で…フフ。

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