サミュエル・L・ジャクソン
2017年02月17日
ミス・ペレグリン日記2 ダーク・グリーン・ファンタジー編

ティム・バートンお得意のダークファンタジー・カラーで描き出された”奇妙”さは役者陣の演技力により実に自然で、ラストまで前のめり…個人的にはギレルモ・デル・トロが手掛けたなら「パンズ・ラビリンス」の様に更にダークさが増して面白かったろうなと思うけれけど、ティム・バートンのお伽噺的世界観も楽しめたわ。
主人公の16歳の少年ジェイク…彼は、幼い頃から祖父エイブに昔から奇妙な物語を聞かされて育ったお爺ちゃん子だったの。ある夜、ジェイクは両目を失って倒れているエイブを発見…虫の息で祖父は「ケインホルム島へ行け、鳥が全てを教えてくれる」と謎の言葉を残し亡くなってしまう…ジェイクは昔祖父が話してくれた物語を思いだしエイブ宛にきたメッセージカードを頼りにケインホルム島へ向かったわ。
そこにはハヤブサが人間の女性に姿を変えたミス・ペレグリンが管理する施設が存在していたのよ…軽すぎて重しなしでは飛んでしまう少女、透明人間、体内にハチを飼う少年、二口少女など、様々な能力と個性を持ちあわせた子供達がペレグリンの保護の元幸せに暮らしていたわ。
しかしホローガストと呼ばれる悪の異能者バロンが、ペレグリンを追い続けていたの…彼は永遠の命を得るため彼女の時間をループさせる力を欲していた・・・という物語…ベストセラー小説を映画で全てを描ききるのは難しいけれど、ホローと呼ばれる怪物が能力者の子供の目玉を食べると人間になれるのか、ハヤブサが何故人間の女性に変化するのか、などの気になる部分は深く描かれていない。

子供達の衣装も同様にそれぞれの個性を表現し、軽い少女エマが身につけるドレスはシフォンの青くエアリーなワンピース、重し代わりに履いている重厚な靴はスチームパンク、片目から夢を投影するお洒落好きホレースのスリーピースは体にフィットし、彼のこだわりが見えたりと衣装やヘアメイクだけでもバートン・ワールドを垣間見ることが出来る。主役のジェイクは「ヒューゴの不思議な発明」で子役だったエイサ・バターフィールド。
でもやはり祖父エイブを「プリシラ」等でお馴染みのテレンス・スタンプ、ペレグリンと同じ仲間のミス・アヴォセットに「007」のゴットマザーMことジュディ・デンチ、悪役バロンに「アベンジャーズ」のフューリー長官ことサミュエル・L・ジャクソンという実力派が杭を打ち込んだことで物語に重みが出たのは間違いないわ。
子供達のキャスティングも素晴らしく子供らしくはしゃぎながらも日々悩み考えて成長していく微妙な過程が演じ切れているのが恐ろしい…当たり前だけど、ここには劇団ひまわりは存在せず、各自が各自の役を理解し演じきっているのよね。
劇中後半ペレグリンが子供達を助けようと彼らに別れを告げるシーンには言葉なし・・・その後スッと回転して鳥に変化する姿の美しさ、潔さは一見の価値有りと言いたい…ビジュアル的にも演出的にも存分に楽しめる作品であるという事は間違いないわね。
この映画を見て、ふと「Xファイル」のTVシリーズ「サーカス」に出てきた異形の人間達を思い出したけれど、この子供達にはそんな陰鬱さはなく、それぞれの生きる時間を楽しんでいるというのが良い…バートン・ワールドは常にハッピーでカラフル、それが救いになったのかなと考えさせられたわ…敢えて言うなら『ダーク・(エヴァ)グリーン・ファンタシー』ね。
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2016年02月17日
交渉人日記 役者淘汰編

物語はサミュエル演じるシカゴ警察のトップ人質交渉人が相棒を殺害されてしまう…でもその背景には、警察内部の人間による横領事件が大きく関係していたのよ。相棒の殺人と横領の疑いをかけられ追いつめられた交渉人は真犯人を見つける為に連邦政府ビルに関係者を人質に立て篭もり警察内部に裏切り者がいると判断した彼は西地区のトップ交渉人を指名…真相を究明すべく交渉人同士の命を懸けた頭脳作戦が展開なの。
主役2人を見ていると当たり前の事ではあるけど、役毎に見事に別人になれるものなんだと改めて感動!!…反面近年の日本のドラマや映画では、その当たり前の事が出来ている役者(タレント!?)が激減…1本の作品を通して見ても登場人物の色合いがベタ塗りされたように単調で、心情が見えてこないのよね。
サミュエル演じる交渉人は銃を持つ事にふと恐怖を感じ、愛する妻と仲間から得る仕事の充実感を得て、自分の正義を貫く為に命を投げ打ち、時に感情的なりつつも戦う・・・ストーリーの進行と共に心情の変化が見事に表現されてるわ!!
ケビン交渉人も同様に、家庭を大事にする父親の顔から、張りつめた現場で冷静な判断を下すプロへ、そして自分の信念を貫く強さが目まぐるしくよく見え、視聴者側がまるで彼らとはずっと知り合いだったかのように感じる。
いやぁ~演技の何たるかをまざまざと見せつけられてしまいましたよ!!…この作品を見たら軽い気持ちで役者を目指していこうと思ってる方は断念してしまうかもしれない・・・なんて心配してしまう傑作なのでした。
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2016年02月11日
アンブレイカブル日記 ギリギリの対極編

物語はB・ウィリス演じる父親が列車事故に遭遇し唯一の生存者となるの…彼は以前から事故に巻き込まれてもケガひとつ負わない己の体を不審に思いつつ、愛する妻と息子と静かに暮らしていたわ。そんな時、サミュエル演じる漫画コレクターギャラリーの黒人オーナーがコンタクト…彼は骨形成不全症という難病に冒されていて幼い頃から漫画にのめり込み、その世界に学び、自分の様に脆い肉体の対極には不滅の肉体が存在すると確信し探していたのよ。
そしてようやく見つけた該当者が父親で、その力を漫画のヒーロー同様弱者を救う為に使うべきだと言い出したの。最初はオーナーを変人扱いしていた父親だけど、自分が人に触れるだけで相手の行動が見えるテレパス能力や恐ろしいほどの腕力を持っている事に気付き、自分の使命を全うしようとするの。でも彼は恐ろしい事実を知ってしまう・・・という筋書きよ。
なかなかドキドキする内容だけど一番感心したのは画面の構成ね…列車の席の合間、クローゼット上部、背景は固定されている中で役者が演技をする・・・一種監視カメラ的な感覚だけど、実に絵のように見事な構図になっているし役者の演技も光るわ。最も見事だったのはブラウン管のテレビモニターに映り込んだ影のような幼少時代のオーナーと母親の姿だけで会話するシーン。
留まった世界で表現すると言う事は本当に難しい・・・でもきちんと出来れば、観客に瞬時にそのシーンの背景、人物の関係、空気感が伝えられる!!…でもただひとつ惜しかったのは親子愛を誇張し過ぎた所かしら・・・見ていて「イラッ」とする事が何度もあったのよ。前作の流れをひきずっていたのかもしれないわね、それが残念。
人間は常に自分にないものに対して憧れを抱き続けるわ。自分にないからこそ崇高で美しいものだったりするんだろうけど、時として手に入らず憎いと思う時も有る。こうして人間は常に対極の気持ちを持ち合わせているんだけど、それを自分が納得する為にどうコントロールするか・・・もしくは激情に身を任せるのか・・・あなたならどちらを選ぶ?
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2014年10月21日
サミュエル・L・ジャクソン日記2 怪優を支える妻編

クラック常用者、殺し屋、ドジな刑事・・様々な役柄を演じ、作品の至る所でその大きな存在感に目を奪われてしまう。そんな素顔のサミュエルは、努力家で完璧主義者だそうよ。
若い頃は将来を有望されたエリート学生だったのだけど、人種差別を訴える学生運動がきっかけでその道は閉ざされてしまったの。でも運命の女性、ラターニャと出会い彼女と共に演劇への道に進み、紆余曲折の末現在の彼の地位が築かれたという訳よ…最近マーベル系作品への出演とモーガン・フリーマン出演のTVCMを間違えられた時の怒り様は凄まじかったのはこんな背景があるからなのね。
彼にとって、ラターニャは妻であると同時に良き理解者でありソウルメイトであり肝っ玉母さん!彼女なくして現在のサミュエルは無かったと言っていいかも。
学生時代から常用していた酒と薬物が原因で彼が倒れた時、ラターニャは彼だけでなく、周囲の友人を怒鳴りつけたんですって。そんな彼女の深い愛を感じたサミュエルは薬物と酒をやめる決意をし、夫婦二人三脚努力して薬物依存を克服出来たというから素晴らしい!何という深い愛なんでしょう・・・。
その後S・L・Jの快進撃は続き、60本以上の作品に出演する押しも押されぬスター俳優になっても、自らを"経験豊富な性格役者"と呼び、驕る事無くどんな役柄にも真剣に取り組んだそうよ。その結果、長い間の夢だった「STAR WARS」のジェダイを遂に演じる事になったとの事。
地道な努力と芸に対する厳しさ・・ブレイク前にアカデミー賞のスピーチを練習していたという自信、そして妻と娘の大きな愛の支え・・サミュエルは俳優になるために生まれてきた男なんだわ!彼のブレイクは40代・・50代になってからも自らの可能性に挑戦し続けている。
自分の周りでは、以前"若くないから無理"と年齢で諦めてしまう人がいたけど、それは本当に愚かな事だと思う。諦める前に挑戦すべきなのよね!勿論その為には、才能の他に命を削るほどの努力と信念が必要ではあるけど・・。エンタの世界は決して外から見るほど華やかでないし、仕事として行なう以上色々な事を犠牲にして、地道な努力を続けるしかないんですもの。サミュエルを見習わなくちゃ!!
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2014年02月15日
サミュエル・L・ジャクソン日記1 笑いながらキレてる編

とんでもないことにエンタメ番組司会者が「ロボコップ」PRに出演してるサミュエル・L・ジャクソンに『スーパーボウルCM凄い話題ですね・・』と・・マジ顔でキレそうになったサミュエルは「ロボコップ」などそっちのけで、司会者に間髪を入れさせない強烈なマシンガントークでやり込める映像なんですよ!
その内容がキレ味抜群と言うか、要訳すると『おまえら黒人でひとくくりにしやがって、ローレンスと俺は別の黒人、モーガン・フリーマンも別の黒人、それでもメジャーなエンタメレポーターかよ!・・」と。
司会者は「すみませんでした謝罪します」と何度も謝って必死に「ロボコップ」の話題に切り換えようとするのですが、サミュエルが絶妙の間で引きずり戻して許してくれません!
後半でカットされてる部分があるので、危ないお言葉でサミュエルが一喝した事と予測できますが、凄いなぁ~と感じたのが、サミュエルの笑いながらキレてる様子…オンエアーを意識してマジギレしてしまうとマズイので笑いながらキレるという役者魂を垣間見させていただきましたよ(笑)
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2013年07月04日
アフロサムライ日記 ネオ・ブラック・ジャパン・カルチャー編

内容もさることながら、この時代の背景や文化が克明に描かれているのが素晴らしい。主人公のアフロはその名の通りアフロヘアーなんだけど、デニムのベルボトムタイプの袴を穿いているし、女性陣も着物に大振りピアスやアクセサリー、どこからどう見ても時代劇に登場するような和テイストの飲み屋なのに、巨大スピーカーでボンボン音を出していたりと、一見異様に見えて良いはずのものがどれも"しっくり"融合されているのがお見事よ。こういうお店をオープンしたら間違いなく流行りそう…新たなビジネスモデルとして成立する程の完成度が高さだったわ。
幼少時代のアフロが父を容赦なく惨殺されるシーンは目を覆う程の凄まじさなんだけど、力ない者はただ泣き黙っているだけでいいのか?という差別社会に対する強いメッセージともとれたわ。復讐が復讐を呼び、かつての友が敵に変貌していく中、アフロの友人は"ニンジャ・ニンジャ"と呼ばれるおしゃべりの陽気な男だけ・・アフロが無口な分ニンジャは口数が多く、彼の心中を代弁しているのだけど、実はニンジャはアフロの中のもう一人の人格で、その存在がアフロを孤独と狂気から救っていた・・という設定なのよ。これも、現代社会を色濃く反映させている気がしてならないわ。
怒りは恐怖と悲しみを生みだすけど、それらが枯渇した先は"無"なのかも・・。ストーリーは分かりやすいけど、そのテーマは実に深く、見終わった後はお腹いっぱいよ。声優陣のキャスティングも素晴らしく、アフロ、ニンジャはサミュエル・L・ジャクソン、天敵ジャスティスはなんとあのロン・パールマン!とにかくはまりすぎて違和感が全くなし!
RZAのサウンドも作品の作品の世界観をより色濃いものにしているわ。実にクールよ!全米をターゲットに展開した今作、日本では逆輸入という形を取っているけど、日本のサムライスピリッツがこういった形を経て発表されるというのは、あとに続く若いクリエーターの為にも必要な事ね。
背景、独自の世界観、キャラクターデザイン…どこをとっても羨ましい程の完成度!今作は、原作者の岡崎能士氏が自費出版で作ったのがきっかけだそうなんだけど、やはり作品のそこここから「好き」エネルギーが強く感じられるのよね。好きが仕事に結びつくというのはクリエーターにとって至福の喜びであるけど、岡崎氏はその才能で見事にやり切られたんじゃないかしら…フフ。
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