イタリア

2016年12月16日

TALE OF TALES日記 最も美しく残酷なお話編

20161210日本版ポスターの酷さについてお話したサルマ・ハエック主演で現在公開中の「TALE OF TALES/五日物語」…作品自体はトレイラーで度肝を抜かれた衝撃そのままに素晴らしかったわ!!

サルマと言えば最近では映画「ソーセージ・パーティ」でレズビアンのタコスのイメージが今なお濃く残るけれど、やはり実力派女優・・・今回は美しく気高い女王を演じきり、そのレンジの広さを見せつけてくれたわ。

邦題は「五日物語」…原作は世界最古の民話集「ペンタメローネ 五日物語」を元に幾つかのお話をピックアップしたものだそう…本編は3つの王国に登場する3人の女性に焦点を当て、それぞれの物語が交錯するのよ。ネタバレしてしまうと興醒めな作品なので今日は展開の導入部分だけご紹介…監督は「ゴモラ」のマッテオ・ガローネ。

まずロングトレリス国では、サルマ演じる不妊で悩む王妃が予言者に従い念願の王子を懐妊…懐妊するために海獣の心臓を食したり、心臓を調理した下女が王子そっくりの息子を同時に身籠もり、その後は王妃の偏執的な愛情が炸裂・・・。

続いての主人公はノミを溺愛するハイヒルズ国の王の娘で、彼女は自分を愛してくれない父に愛想を尽かし結婚を望んでいた…王は難問を解いた男性に娘を嫁がせることにしたのだけど、正解を出したのはなんと醜く凶暴な鬼だった・・・。

最後は好色なストロングクリフ国の王に勘違いで見初められた老婆姉妹よ…老婆の姉の歌声は美しく、王は彼女を絶世の美女と思い込んでしまう。王の心を掴もうと姉は策を巡らし、妹はそんな姉の後を追い・・・と、どの物語も不気味で奇妙なものが登場すると同時に顛末はギョッとさせられるものばかり。

グリム兄弟が描いた「グリム童話」も不気味なストーリーが多いけれど、それ以前にこの様な民話が存在していたとは・・・作者はなんと想像力豊かで自然や人間について深く理解出来ていたのかと感心してしまう。

3つの物語は全て女たちの欲深さ、依存心、孤独がリアルに描かれていて非常に恐ろしい…王妃は王子に、老婆の妹は姉に依存して墜ちていき、王子と王女は親から脱却し心身共に超えていくという対比が教訓的というか戒めの様で興味深いわ。

展開に救いが一切無く、欲を持つものは悉く破滅するという潔さが身につまされて良い…更にこの幻想的な世界を創り上げている衣装とメイク、ゴシックで重厚感のある色合い・・・物語に引き込まれるには十二分、おどろおどろしく崇高な美しさよ。

古典を文章で辿れば背景や慣習など細かい点は不明なので想像力で映像を創り上げるけれど、これは想像以上・・・きっとこうだったのだろうなと確信できるビジュアルにただただ圧巻よ。

海獣も巨大化したノミも劇中で何か意味を持つのかと思いきや、人間の欲深さの前にはただのマスコット的存在でしか無いの。生には死、美には醜、この世は全て相対する部分が存在しバランスが保たれているわ…時を重ね様々なものが進化していったとしても、人間が生き続ける限りこの濃厚な物語は紡がれていくに違いない。

オススメなので是非劇場へ!!
20161209


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2014年08月02日

ライフ・イズ・ビューティフル日記 生き延びる事の美しさ編

20140803第二次世界大戦下のユダヤ人迫害を描いた作品は多々あれど、1997年「ライフ・イズ・ビューティフル」…アカデミーでも7部門にノミネートされ、3部門受賞した名作ね…その重いテーマにも関わらず、チャップリン作品のようなテンポ良さと明るいトーンで仕上がっているのが素晴らしい…監督・脚本・主演ロベルト・ベニーニの世界よ。

こういった内容だと1度ならいいが2度は辛くて見たくない、と思ってしまうけれど、今作は人生の節目に何度か見てみたいと思えてしまう…きっとそれは、自分が弱っている時に自己治癒力を高めてくれるような、じわじわと愛の深さを思い出させてくれる作品だからかもしれないわね

物語は第2次大戦前のイタリアが舞台よ。ユダヤ系イタリア人のグイドは、地元の権力者の娘で小学校の教師をしているドーラに一目惚れ。彼はその陽気な性格と楽しい話術でドーラの心を射止め、駆け落ち同然で結婚したわ。やがて愛息ジョズエが生まれ、3人は幸せな生活を送っていたの。

しかし徐々にユダヤ人迫害が強行され、遂にグイドと息子は強制収容所に送られてしまう。イタリア人のドーラは彼らを追って自ら収容所に行くことを望み、女性房から彼らの無事を祈り続けていた。グイドは幼いジョズエを不安がらせまいと、収容所での悲惨な状況は全てゲームで、良い子にしていれば点数がもらえて1000点たまったら勝ち、本物の戦車に乗って家に帰れると嘘をつくの。

普段どおり明るい冗談交じりの父の言葉を疑うことなく、ジョズエはゲームを楽しみ父のいう事に従ったわ。それが父の命がけの守護だとは気付かずに・・・。やがて戦況が変わり、ナチスが撤退という動乱の中、父は隠れんぼと言い含めて息子を守り凶弾に倒れてしまうの。最後まで隠れんぼだと信じ抜いたジョズエは救助され、父の言葉どおり勝者としてアメリカ軍の戦車に乗り母に再会したわ。

あまりの悲惨なストーリーに思い出してもじわじわくるはずなのに、それが悲しみではなく人間が持つ最もハートフルな部分に訴えられてほんわかしてくるから不思議よ。

強制収容所での労働、生活、ガス室に関して克明に描かれていたり、もともと知り合いだったドイツ軍の軍医が助けてくれるのか・・・と思いきや何もしなかったりとリアリティを重んじているだけに、グイドのどこか浮世離れした明るさが救いという見事なコントラストは圧巻。

でも一番のリアルは、彼が息子と妻を守ろうとする愛情の強さなのよね。最も印象的なシーンは、兵士に連行されたグイドが息子に恐怖を与えないよう、おどけた行進ポーズをとってみせる場面よ。その直後兵士の連射音だけで彼の死が表現されるのだけれど、秀逸としかい言い様が無い。

彼はどんなに貧しくても、苦しくても、恨んだり泣いたりはしないの・・・それは彼が聖人君子だからという事ではなく、とてつもなく豊かな愛の持ち主だから。それは彼自身しか持ち得ないもので、誰にも奪うことは出来ないわ。自分自身含め、人間は辛い状況に遭遇すると誰でもマイナスに陥ってしまうもの。

即プラス思考に変換出来るようになるには相当の鍛錬が必要だし、なかなか悟りの境地には至らないわ・・・。それでも自分の守るべき愛するもの、自分が楽しんで生きることを忘れずにいられたら、人生はこの上なく輝き出すに違いない。悲しいときにこそ、笑おう・・・そんな事を思い出させてくれた1作でありました。

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2012年08月04日

ローマ法王日記 コメディに見せかけて・・・編

20120806現在公開中の映画「ローマ法王の休日」。予告編だけ見るとコミカルだけど、内容は非常にシリアスだったわ。

舞台は法王が逝去し法王選挙が行われることになったローマ。誰もがこの大役を免れたいと願っていたの。遂に新法王に選出されたメルヴィル枢機卿は、大聖堂のバルコニーで信者への祝福を・・・という場面で号泣!

自分にこんな大役は務まらないという卿に対し、報道官や関係者達は精神科医に診察させたり、外部のカウンセラーに診察させたりと苦肉の策を巡らすけど、問題解決にはならず。やがて少し歩きたい、という新法王の気持ちを汲んで散歩を許可すると、一瞬の隙を突いて逃げられてしまった!さぁ、世界中の信者や教会関係者が見守る中、メルヴィル卿は一体どんな決断を下すのか・・・というストーリーよ。

しかしながら、ローマ法王が脱走という発想は考えつきそうで考えつかないわね。例え神に仕えようともどんなに身分が高かろうとも、人間は所詮同じ・・・怒りもすれば不安にもなるし泣きたくもなるわ。主人公を法王にすることで、このテーマを実に明確に表現しているのはお見事よ。ピポ子は銀座の老舗の劇場で作品を鑑賞したのだけど、びっくりするくらい周囲はご年配の方ばかり・・・。

場所なのか、時間なのか、作品の傾向なのかわからないけど、メルヴィル卿がややコミカルな発言をしたり、教会側が立てた卿の代役が指示通りおかしな動きをしたりすると笑い袋のように笑いが起きるのにはびっくりしたわ。笑いのツボが全く読めないし、反応する部分が意外だったけれど、物語が進行するに従い笑い声は少なくなってきたので安心したわよ。それだけ物語の展開や演じ手の力がぐいぐい観客を引っ張っているという事よね。

とにかく見事だったのは主役の新法王を演じたミシェル・ピッコリ。

選出された瞬間の"落胆を隠す"笑顔、やっと自由になり解放を得た"不安"、カウンセラーに偽りの情報を話す中"小さな真実"を話す喜び・・・どれもが自分の事のように心に響いてきたわ。前半のおばさま達の馬鹿笑いを聞けば聞くほど、彼のやるせない悲しさがどんどん伝わって来て泣きそうになってしまったの。

今回精神科医役に監督と脚本を務めたナン二・モレッティ氏が出演していて良い味を出してるけど、この肝になる役をもうちょっとどっしりとした俳優さんが務めたら更に全体が締まったかも・・・

ま、ここは大人の事情って事で。人間は上に立てば立つほど人から期待されるし、そのプレッシャーをおいそれと漏らせないようになるもの。自分を奮い立たせてその位置付けにふさわしくなるよう努力しようと思うけど、なかなか思い通りには行かないものね。そのせいで自信を持って取り組んでいたことが出来なくなってしまったり、精神的に自分を追い詰めたりしまう事もしばしば・・・

この映画の衝撃のラストを見れば、きっとそんな自分を愛おしく思えるかもしれないわ。人間は所詮人間。時には片意地張って生きるのも大事だけど、自分を大事に出来るのは自分だけかもしれないわね。

【ローマ法王の休日web】
http://romahouou.gaga.ne.jp


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