アカデミー賞

2017年03月06日

LA LA LAND日記2 な、な、なんと怪作・・・!!編

20170302前作「セッション」では私達に一生忘れることの出来ないほどの良い意味で”トラウマ”を与えておきながら、今回もどうにもならない程の大きな楔を心に打ち付けてしまった。その映画こそ「LA LA LAND」よ!!

米公開と同時にかなり高い評価を受けていたので、チャゼル監督の感度の高さや切れのある作り込みが再評価されているのだとしか考えていなかった。

アカデミー賞受賞発表でも作品賞と発表され「ムーンライト」の間違いだった事件で一際記憶に残ってしまった歴史的作品…作品賞以外に6部門受賞と華々しかった。

予告編やポスターは主演のライアン・ゴズリングとエマ・ストーンのポップな色合いのダンス・シーンがピックアップされていたのでミュージカル・ラブロマンスなのだという認識しか持たなかったのだけど・・・やはりその予想は甘かった!!とてつもなく重く嫌な気分を抱え劇場を出る羽目に。

その後も数日に渡って内容を反芻し、何故ここまで心臓を抉られるのかを考え続けたの…自分が単にこれまで音楽や表現というものに対して真剣に向きあい己を削ってきたから主人公達のリアル過ぎる感情や行動にシンクロしたからというだけではない。

「セッション」も「LA LA」も共に”本能的な生命力の強さ”を描き切っているからなのだと気付かされたわ…更に面白い事に2作に共通点が…まずは主役の2人についてよ。

前作では一流のドラマーを目指す青年ニーマン、今回はジャズを愛し自分の店を持とうとするライアン演じるピアニスト、セブ・・・彼らは思うに監督自身を投影しているのではないかと考えられるのだけど、音楽に対してこだわりを持ち芯が強いけれどどこか女性的で優しい。

一方前作でニーマンの指導者であり、最終的には彼と同じ目的を持つ鬼教官フレッチャー、今作で女優を目指し邁進するエマ演じるミアは目的に向かって行動力もあり男気溢れる決断力、そしてとてつもない目力を持つ…どちらの作品でもラスト近くでお互いのパートナーを見つめるシーンがあるのだけれど、この点も意味合い的、演出的に共通したものがある。

音楽を題材にしてはいるけれど、彼らの目標に向かって努力し、落胆し、傷付きながらも這い上がろうとする生命力は底知れない…役者陣も素晴らしいけれど、こういった手法で表現するとは・・・恐るべし、チャゼル監督。

20170303

物語はジャズを愛するピアニスト、セブと女優を目指すミアが出会った冬、そして恋に落ちた春、それぞれの夢を叶えようとする夏、すれ違いと落胆の秋、そして5年後の冬という季節で括られ構成されているの…ストーリーは単純に思えるかもしれないけれど一筋縄でいっていないわ。

ハッピーエンド・・・ではあるけれど、その奥に潜む意味合いは深い…そして監督自身音楽畑出身だけあって時間経過の表現やストーリーのテンポがお見事!!…映画が1つの曲の様にAメロ、Bメロ、サビ・・・と絶妙なタイミングで進行し、これが観客を引き込む要因のひとつなのかもしれない。

そしてミュージシャンなら誰でも経験のある、巻き戻して細部を聴き込む作業、音楽に興味の無い人間につい熱く語ってしまう音と音の真剣勝負、仕事としてやむなく営業の音楽をこなす虚しさなど、細やかな演出が盛り込まれているのには感心させられたわ。

セブが生活の為に参加したジョン・レジェンド率いる営業用バンドの楽曲やアレンジも「らしく」て見事だし、そのバンドの撮影でのカメラマンの注文も思わず苦笑いしてしまうほどリアルで、経験者でなければここまで描けないなと唸らされてしまった。

そしてJKシモンズを堅物店主として登場させるとは・・・上手すぎる…とにかくセブとミアのミュージカル・シーンは文句無しに美しいけれど、そのシーンが美しく幻想的、ポップであればあるほど後半の展開にじわじわ効いてくるので覚悟して下さい。

これ以上書いてしまうとネタバレしてしまうので自分を制止するけれど、ミアがオーディションで叔母の話をする際「The Fools Who Dream」という曲に繋がっていくシーンはこの作品の中で一番の見どころだとお伝えするわ。

ミアが淡々と「ミュージシャンや画家、詩人、夢を追う全ての人・・・それがどんなに愚かでも、厄介な私達に乾杯を」と歌う歌詞に恥ずかしながら号泣してしまった。

夢を追うだけでは食べていけない、家族や病気、様々な理由で自分の人生を変えなくてはいけないという状況は幾度も訪れるもの…端から見れば愚かしく見えるだろうけれど自分の人生を切り開こうと藻掻くことを恥じることはないのよね…ただ何かを成し遂げる為には犠牲を払うのは必然…個人的にはその部分を経験し理解しているからこそ、この映画の根底にある重みを感じ取ることが出来た気がする。

長々書いてしまったけれど、この映画は決してデートで見てはいけないわ…自分自身と向き合い、これまでの己の生き様を再認識するという意味合いで”挑んで”頂きたい…どんなに愚かでどんなに厄介と言われようと自分の人生は己が祝福しなくてはね・・・!!

【LA LA LAND official】
http://www.lalaland.movie

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2017年01月10日

ドライビング・ミス・デイジー日記 心の暖炉がホッコリ編

20170102今年もアカデミーを筆頭に賞の季節となりました…関係者に今なおリスペクトされ続けている1989年公開の不朽の名作「ドライビング・ミス・デイジー」をピックアップしないといけませんよね。

アカデミー賞では作品賞、脚色賞など数々の受賞を獲得したけれど特筆すべきはこの映画を息吹かせた女優ジェシカ・タンディの主演女優賞ね…なんと彼女は歴代最高齢である80歳で受賞・・・でもそのパワー、美しさはその後も留まることを知らず、芸を極める情熱に年齢など関係ないのだと思い知らされたわ。

この作品の2年前に「NY東8番街の奇跡」ではUFOと心を通わせるマダムを演じ、今回は頑固ながらも次第に心を開いていく老婦人を演じ切っているのが実にお見事。大好きな「トロピック・サンダー」でも劇中で爆破担当スタッフがこの映画を引き合いに出していたのは記憶に新しいけれど映画界において金字塔的作品であることは間違いないわ

タイトルから想像したのは運転下手のマダムが奮闘しそこから何か事件が起きたりするストーリーだったのだけど、意外にもそんなエンタメ性の高い展開は無く終始会話劇だという事に気付いて仰天…何かが起きそうで起きない絶妙な匙加減、ただゆっくりと時間が過ぎその中で紡がれる日常がしっかりと描かれている。

これはやはり役者の力量が最も重要でデイジーを演じるジェシカと彼女の運転手ホークを演じるモーガン・フリーマンやSNLのダン・エイクロイドの演技力あってこそ成立したのだと痛感させられたわよ。

物語は元教師でユダヤ系の老婦人デイジーが運転をしようとして大事故を起こしかけてしまう。そんな母親の身を案じた息子ブーリーは運転手に黒人のホークを雇うことに…元来頑固な性格のデイジーは彼と馴染まず・・・しかしホークの持ち前の真面目さと明るさにデイジーの頑なな心もほぐれ2人は唯一無二の親友となるの…時代背景として黒人、ユダヤ人の人種差別が描かれているけれど「HELP」同様これがまた実にさり気なく生活の中に織り交ぜられているのが素晴らしい。

ストーリー上、人種差別という重いテーマを取り込めば若干ドラマティックになりがちだけど、警官の何気ないおしゃべりやデイジーとホークのキング牧師に対する考えの相違から起きるちょっとした喧嘩、今なお続く黒人の教育環境についてなどが会話から理解出来る。

特に印象敵だったのはデイジーに長年仕える黒人家政婦のアデラが亡くなった後、彼女を偲びデイジーが『彼女は幸せだった』と話すシーン…ホークは複雑な表情を浮かべて少し間を置き「はい」と答えるの…この2人の会話の中にアデラは黒人として不幸せだったという思いとデイジーのもとで仕事が出来たのが幸せだったという色々な思いが交錯しているわ。

デイジーは頑固ではあるけれど、それは教師としての気質ということでなく元々慎ましやかなので裕福でもそれを成金と思われないかと危惧している・・・ただ正直で素直なだけ…前半の嫌味たっぷりな頑固ぶりは彼女の若さの象徴であり生き様だったのだと物語が進むにつれ気付かされたわ。

普通ならこんな嫌味な婦人に仕えたくないと思う反面、仕事を失いたくないから我慢するというのが自然の流れ…しかしながらホークは彼女のその正直且つ可愛らしさを見抜いていたので毒をまかれても楽しみ、常に自分のペースを守るという自然体でいられたわ。何を言われても小気味よいユーモアで返し、常に笑う・・・なかなか出来るものではないけれど、これまで辛いことを乗り越えてきたからこそ出来るのよね…そんな彼だからこそデイジーの大親友になれたのかもしれない。

人間は親子でも夫婦でも友人でも時に傷つけ合いいがみ合ったりしてしまうのは当然…でも相手が何を考え思うかを一歩先読みし理解出来れば、腹も立たないだろうし辛くもないのかも。その為にはまず自分をきちんと見据え確立していかないといけない・・・2人の生き様を通して諭された気がするわ。

デイジーやホークの様に自然に時を重ねていくことが出来たらどんなに素敵だろう・・・ありとあらゆる利害を取っ払った友達とは、どんな関係よりもずっと深い…ラストシーンの2人を見て自分の中にあるトゲトゲとした感情が一気に柔らかくなっていたわ…改めて人間同士生きる事の良い部分を見つめ直すことが出来た気がする…そしてハンス・ジマーの音楽も作品にひと花添えて、心にホカホカと染み入ってくるわ。とにもかくにも恐るべし「ミス・デイジー」・・・彼女のドライブは不滅です!!

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2016年07月18日

エクス・マキナ日記2 エヴァ、フォーエバー!!編

20160710数年前からその強烈なヴィジュアルで惹きつけられた映画「EX_MACHINA」…日本では公開予定は無かったけど、昨年アカデミー他メジャーな映画祭でノミネート…アカデミーでは「STAR WARS」をおさえての特殊効果賞受賞などで配給が慌てて今頃日本公開って流れね。

ストーリーは予測していたものとは異なり、なんとも後味の悪さが残って良かった。

携帯電話やPCなど当たり前の様に私達の生活に入り込み、AI、検索エンジンによる個人情報の収集と利用といった最新技術は不可欠なものになりつつあるわ。しかしその反面、テクノロジー全般に対する恐怖が徐々に芽生え始めているのも事実ね。

「エクス・マキナ」そんな人間の心理を見事に突き、美しいビジュアルを以て完璧に表現しているのがお見事…こういったテーマだと脚本もビジュアルもゴタゴタとした装飾がついてしまいがちだけど、実に無駄が無く簡潔・・・冒頭から本筋への導入、AIのエヴァの登場、各々の心理戦のテンポなど、見ている側が試されてるかのような絶妙さであっという間に引き込まれてしまった。

物語は世界最大のインターネット検索エンジンに在籍するプログラマー、ケイレブが社内抽選に当選し、CEOであるネイサンの別荘に招待される所から始まるの…ケイレブは浮かれて別荘へ向かうけれど、実は人里離れた、携帯の電波も届かないこの別荘でネイサンは密かにAIを創り、その完成度を試すチューリング・テストの試験官として彼を呼んだのよ。

美しい女性の姿をしたAIエヴァと対面したケイレブはテストを繰り返すうち彼女に惹かれていき、ネイサン、ケイレブ、エヴァ、それぞれの思惑が動き出すというものよ。エヴァ演じるアリシア・ヴィキャンデルのキュートさといったら・・・ケイレブの為にワンピースやウィッグをつけるシーンは可憐としか言い様が無い…最早天使レベルね!

しかもワンピースを脱いで機械のボディに戻る時、人工皮膚でオールヌードになる時よりエロティックに見えたのだけど、その意味は物語の結末を見届けてから納得…そんな要所要所に細やかな演出が施されていて素晴らしいわ。

エヴァのボディデザインは秀逸で、メッシュの肌、シースルーのボディの中に光る線維と、一見アンバランスでありながら完璧な美を保っているのが凄い…リアルでありながら幻想的、という境界線ギリギリの部分をクリアしているのが感動ね。

個人的に好きなクリエーターの田島光二氏がエヴァ初期モデルのデザインを担当しているのを知り、少し嬉しくなってしまった。更に本編ではネイサンの世話係、キョウコというAIが登場するのだけれど、従順、ダンスが踊れる、しかし英語は話せないという設定で物語に色味を加えているの。

ストーリー的にはしっくりくる設定だけど、やはり海外での日本女性のイメージというのはまだまだこういった感じが拭い去れないのかしら・・・などと思ってみたりして。

エクス・マキナの意味合いはラテン語の「機械仕掛けの神」なのかそれとも演劇用語の「どんでん返し」なのか、はたまたPC用語なのか・・・どれも当てはまってしまいタイトルとして申し分ないわ。

女性はしたたかな生きもの…それは生身からAIへ踏襲されていくのだとしたら、女性が更に強くなる未来が訪れるのか・・・!?

【日本公式web】
http://www.exmachina-movie.jp

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2016年06月08日

エイミー・ワインハウス日記3 濃密だった歌姫人生「AMY」編

20160605エイミー・ワインハウスが他界して既に5年…時が経つのは早いもの…あの独特の歌声は今でも心に染み入るの。そんな彼女のドキュメンタリー映画「AMY」が日本でも7/16から公開されるわ。

今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を見事に受賞した作品だけに注目よ。ご存じの通り彼女はアルコール過剰摂取でこの世を去ってしまったのだけど作品はこの辺をどのように描いているのか気になる。

実は作品は高評価ながら彼女の父は批判的なのよ。

ドキュメント作品にはありがちな傾向なんだけど『自分のコメントが都合良く編集されてる』『作品に悪意を感じる』『彼女の真の姿を描いてない・・・』等々。

予告編を見る限りでは悪意的な部分は感じないけど、親にしてみれば少しでも娘に対して否定的な描写があると過剰反応してしまう気持ちもよく分かる。いずれにしても彼女の歌にかける情熱や生き様が作品として結集されていると信じましょう。
【エイミー公式web】
http://amy-movie.jp 

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2016年05月27日

地獄の黙示録特別完全版日記 狂気の魔作編

201605121979年名作「地獄の黙示録」…これまでの戦争映画の捉え方を根底から覆し映画界に於いて歴史的大作であるというのは周知のこと。

「プラトーン」「プライベート・ライアン」「トロピックサンダー」等々、他にもこの映画をオマージュした作品は数知れず。

最近家のベランダからヘリコプターが数機デモンストレーションを行っているのを目にする度、『あ、地獄の黙示録だ!!』と冗談を言っていたのだけれど、じっくり鑑賞出来ていなかったので2001年にコッポラ監督が再編集した「特別完全版」を鑑賞することにしたわ。

この完全版202分という気合いが入った長編にも関わらずあっという間に鑑賞してしまったのよね…ストーリーは皆さんもよくご存じの通りベトナム戦争後期のカンボジアが舞台…陸軍空挺士官のウィラード大尉は軍の上層部に呼ばれ元グリーンベレー隊長のカーツ大佐の暗殺という極秘任務を受けるの。

カーツは軍の意向を無視してカンボジアに侵攻し、そこで自分の王国を築いているという…ウィラードは海軍の河川哨戒艇に乗り込み数人の部下に何も知らせないまま任務を遂行すべく前進…ようやく王国を発見するが・・・というものよ。

目的を果たすその過程でサーフィン目的でベトコンの前哨基地を襲撃する陸軍のキルゴア中佐…疑心暗鬼になりすぎて船に乗った村人たちを惨殺する部下たち…戦地の慰問に訪れた際ヘリが足止めを食ってしまい燃料の代わりに兵士の相手をさせられるプレイメイト…そしてカーツの知性と恐怖での王国統治など”戦争の狂気”が剥き出しに描かれているのが素晴らしい。

戦争は敵国を倒し自国を守るものと言ってしまえば単純だが、そこに存在する兵士や民にとって”普通に生きる”感覚があればこそ、狂っていくのは間違いないことよね…毎日のように死を目撃し、いつ終わるとも知れない恐怖に追われている・・・そのストレスたるや想像を絶するわ。

「地獄の黙示録」…これまでの戦争映画には無い人間の理不尽さ故の狂気に着目しているという点が斬新であり、それを演じきった俳優陣も魔懸かっているわね。しかしながら、キャスティングの変更やスケジュールの遅延、それに伴う莫大な制作費等々、コッポラ監督自身が狂気に見舞われてもおかしくない現状にも関わらず、その強い信念が生みだした魔作と言うべきかもしれないわ。

歴史的名シーンは多々あれど、やはり印象的なのは”ワルキューレ作戦”と陸軍のキルゴア大佐の大爆破をバックに『朝のナパーム弾の匂いは格別だ』と宣うシーンね…彼は自分が無敵の存在と心酔し銃弾が飛び交う中でもただ一人胸を張り立っている・・・可笑しい事だけれど、その確信ぶりにはぞっとしてさせられる…このワンシーンだけでロバート・デュヴァルはアカデミー助演男優賞にノミネートされたのもうなずける。

「ゴッド・ファーザー」でお馴染み、要のカーツ大佐を演じるマーロン・ブランドの小太りぶりには誰もが納得いかないけれど、その分他のキャストが奮闘しているという事で良しとすべきかしらね。

特別版ではプレイメイトのシーン同様、フランス人入植者とウィラードとの交流という未公開シーンが追加されており、ここで荒んだ心情から癒やしへのワンクッションとなってはいるものの必要性をさほど感じられず本編でカットされて正解だと思うわ。

更に特筆すべきは音楽…冒頭でドアーズの「ジ・エンド」をセレクトするなんて・・・凄いセンス!!…劇中のコーラン的アプローチの楽曲も、より世界観を濃厚なものにしていてお見事よ。

今はCGでどんな表現でも出来る時代でありそれに慣れてしまっているけれど、改めてこの映画がリアルに撮影されているんだと気付くたび益々魔に魅入られているな、と感動してしまう。ヘリコプターから巻き起こる渦のような煙、炎の赤さ、人々の悲痛な叫び、そんな”リアル”がそこに存在する、と認識した瞬間見ている私達も同じ狂気に、魅入られてしまっているのだろうか・・・。

いずれにせよコッポラ監督が全身全霊を傾け、映画界の新たなる幕開けを導いた巨編であるという事は明らか…戦争が終わり穏やかな日常を迎えても私達の中に宿る狂気は生き続けているのだと気付いてしまった・・・きゃーっ。

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2016年03月26日

ハリーとトント日記 天使が導くその先に・・・編

20160312猫が登場する映画は興味あれど、老人と猫が主人公という点で辛い結末だったら・・・と不安感が募ってしまいつい避けてしまった1974年公開「ハリーとトント」…結果、その斬新な演出と心温まるストーリーにブラボー!!

主演の老人ハリーを演じたアート・カーニーがアカデミー主演男優賞受賞、そして脚本賞もノミネートされていたというのは大納得だわ。

物語はNYマンハッタンに住む老人ハリーが区画整理のため立ち退きに遭い、愛猫トントと共にアパートから出ることになる所から始まる…彼は長男の家に移り住むもののうまくいかず中古車を購入しトントと共に長女いるシカゴへ…その間様々な人達と出会い交流していくというロードムービーよ。

ハリーの3人の子供達はそれぞれ悩みや問題を抱えており、そこに父親の同居という問題が生じて一悶着というのが定石だけど、この点は実にサッパリと描かれているのが良い…と言うのもハリー自身子供を愛しているけれど彼らに深く介入せず72歳という年齢にも関わらずきちんと自立しており、トントを相棒に人生を楽しんでいるのよ…日本的な老人の苦悩や貧困などは全く無く、見ているこちらが元気をもらえたわ。

ハリーは道中、家出娘の少女と出会い、決してお説教じみたことを言わず彼女の良いようにしてあげようと行動するの。あとで気付いたけれど、この少女はハリーを導く天使的役割を担っており、彼に若さと行動力をもたらしたわ。

その次は自然食品のセールスマンからジューサーとビタミンを購入して元気になり、その次はなんと美しい娼婦に気に入られてその効果を実感、次はトラブルに巻き込まれて警察に囚われるも、そこで知り合ったインディアンにジューサーと引き替えに長年痛めていた肩を治してもらう・・・と、コミカルではあるけれどハリーが人の為に行動する事で彼自身がどんどん良い方向に進むという”わらしべ状態”になっていくのが面白い。

常に彼はトントに話しかけたり歌ったりし、そこで己の心情や状況を表現出来ているのが素晴らしいわ。ほぼひとり芝居と言って良いかもね。

トントもそんな主人の勝手な振る舞いに付き合いながら気ままに行動する…こんな似たもの同士だからこそベスト・パートナーなのかもしれないわ。でもそんな二人にも別れはやって来てしまった・・・体調を崩したトントは動物病院の小さな個室の中で息を引き取るのだけどハリーはずっとトントに歌い語りかけていたの。

トントが逝ってしまったのを悟ると「さよなら」と呟きすぐ退室…一見冷たく思えるかもしれないけれど、この演出には本当に無駄が無いどころか感動よ!!…くどくど描かないことでハリーがどれだけ相棒を愛していたかが理解出来るもの。日本にありがちな涙を流し「トント~」などという過剰演出だと真の悲しさは伝わってこないわよね。

この映画は全編通して自然で無駄な部分が一切無い…だからこそ役者の力量が際立つから更に名作となる訳だわ。

最終的にハリーは公園で猫を保護する猫おばさんに口説かれたり、公園でトントそっくりの猫を見つけ海岸まで追っていくという救いのあるラストになるのだけど、海岸での猫とのシーンは本当に美しいの。

天使が導くその先に繰り返される輪廻転生・・・ハリーは自分に人に対し正直に一生懸命生きているからこそ人生という長旅を楽しめるのかもしれない。何事も自然に・・・というのは難しい事だけれど、もう少し力を抜いてみることも必要かなと思えてきたわ。もし、あなた自身のロードムービーを描くことに迷っていたとしたら、是非お試しあれ!

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2016年03月09日

アカデミー賞2016日記 クリス・ロックが凄かった編

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先月末に発表された米アカデミー賞…今回はノミネート発表後に何かと人種差別が問題となって別の意味で盛り上がってしまいましたね。今年から総合プロデューサーが変わったので今までのような派手さが無くなり悪く言えば地味になった感じがありましたが、それを覆してしまったのが司会のクリス・ロック。

何せノミネート後の問題をネタにオープニングから飛ばしまくりでした。もし、このシーンの主役が黒人だったらの編集映像とかコンプトンからのインタビュー映像とか最高…ちなみにコンプトンとは先のケンドリック・ラマー出身でも話題の北米の中でも際立って犯罪率が高い地区として有名で、黒人をステレオタイプで揶揄される場所となっています。

各賞に関してもこの影響が感じられ、例えば「ロッキー」で有名なシルヴェスター・スターローン等は助演男優決定な雰囲気でしたが「クリード チャンプを継ぐ男」がスケープゴート的扱いになってしまい「ブリッジ・オブ・スパイ」のマーク・ライランス受賞となりました…でもマークは純粋に演者として素晴らしかったので順当と言えば順当でしたね。

作品賞は「スポットライト」でしたがノミネート全体が地味感があったので無難な受賞に…個人的にはクリスチャン・ベイルの「マネーショート」を期待したのですが残念。

監督・主演は「レヴェナント」のイニャリトゥ監督と念願のディカプリオなんですが主演に関して今回は飛び抜けて凄かった男優が不在だったのでディカプリオはラッキー…主演女優賞のブリー・ラーソンも同様でしたね。

ただ「リリーのすべて」助演女優のアリシア・ヴィカンダーは別格の凄さでした…本来は「エクス・マキナ」でもノミネートされても良かったぐらい素晴らしい…今回アカデミー全ての賞の中でも彼女は断トツの存在感でした。

その「エクス・マキナ」は視覚効果賞で「STAR WARS」他、名だたるビックバジェット作品を打ち破った受賞はお見事…他の作品の1カット分ぐらいの予算で世界観を表現したのですから完璧です…できれば脚本でもノミネートしてほしかったですけどね・・・。もう一つ、元々アカデミーはSFやアクション、コメディ系に冷たいなか「MAD MAX」がここまで注目されたのも感動です。

一つ腑に落ちないのが歌曲賞「007スペクター」…作品も今一で楽曲も何ら印象に残らなかったのに"なんで~"って感じですよ。面白コメントとしては短編ドキュメンタリー賞プレゼンターを務めたルイスC・K「短編ドキュメンタリー賞はお金にならない。一生お金持ちになれない人たちへの賞だ」ってのがリアルすぎて汗でしたね。

まぁー黒人問題やアカデミー会員の構成比率(6291人中白人多数で平均年齢62歳)他、色々ありますがクリス・ロックがMCを含めここまで掘り下げる事ができたと言う事で今後のアカデミー変革に十分期待ができます。方や国内の名前だけはアカデミーな受賞スピーチで批判的な部分は全てカットされてる状況とは大違いです。

兎にも角にも、今年はクリス・ロックに始まってクリス・ロックで締めくくったアカデミーでありました。そうだ、長編ドキュメンタリーの「Amy」が早く見たいですね…Amyとはあのエイミー・ワインハウスですから…フフ。

【アカデミー賞2016受賞一覧】
http://variety.co.jp/archives/6723

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2015年06月01日

アパートの鍵貸します日記 恋のメビウスの行く先は・・・編

201506011960年代を代表する映画といえば、まず思いつくのは「アパートの鍵貸します」ね…アカデミー作品・監督他5部門受賞…原題は「The Apartment」だけれど、この邦題はストーリーを凝縮しつつ見る側に期待させるという見事さ・・・映画が最も映画らしかった時代を物語っているかも。

物語はご存じの方も多いかと思うけれど、NYの保険会社に勤める平社員のバクスターは、自分の部屋を4人の上司と愛人との密会場所として貸していたの…彼はその見返りといて勤務評価を上げてもらい遂に出世することに。

自信をつけたバクスターは前から気になっていたエレベーターガールのフランをデートに誘うけれど、すっぽかされてしまう。実は彼女は、バクスターが自分のアパートを使っていた部長のお相手だったのよ。フランは部長との関係に悩み、真実を知ったバクスターは傷心、部長は家庭を守りながらもフランを手放そうとしない・・・そんな中、部長との関係に疲れたフランはアパートで自殺を図り、そこから彼らの運命が大きく変わり始めたわ。

一歩間違えばそれこそソープディッシュのような展開であるにも関わらず、ジャック・レモン演じる主役のバクスターのリズミカルな動きを基軸に物語全体のテンポが構成され、実に小粋でコミカル且つハートフルに仕上げがっているのが素晴らしい。

冒頭、社内の遠近的な天井と机が並ぶという構図の中で、バクスターが上司にアパートの時間予約の確認をする場面では、彼が会社の中の歯車の一部でありいかに無能であるかということが完璧に表現されているわ。この手法は「アメリカン・ビューティ」でもオマージュされており、主役の夫、レスターのうだつのあがらなさがよく表現されていたのが強く記憶に残っているのよね。

フランを演じるのは、今や精神世界の著作でも有名な女優シャーリー・マクレーン…彼女の演技力は、当時女優はビジュアルのみの添え物であるという役割を覆したと言えるかも。可憐で明るいマスコット的存在でいながらその心の奥で道行きならぬ恋に苦しむという、女性誰もがかかってしまう恋愛病を演じきり、非常にシンクロ率は高かったわ。そして驚くべき事に、若き日の彼女はビョークに似ている!!!

その他にも以前部長と関係のあった秘書が一波乱起こしたりと、どことなく少女漫画的展開であればあるほど全体のテンポが上がり、バクスターとフランの純粋さが強調されているのも素晴らしい。他にも女性達のファッションやヘッドドレス、アパートの内装なども見所はたくさんよ。

お洒落をして映画を見に行くというのが最大の娯楽だった時代・・・そんな良き時代に思いを馳せながらモノクロームの世界から語りかけてくる彼らにシンクロしてみては?これぞまさに「映画」よ。

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2015年02月24日

アカデミー賞2015日記 バードマンとセッションするのがセオリー編

20150220日本時間で本日午前中にに発表された米アカデミー賞…既に結果をご存じの方も多いハズ。結果を振り返ってみると毎年の事なのですが順当な受賞に見えるから不思議です…先ずは主要部門

【作品】「バードマン」…白人が好きそうな「アメリカン・スナイパー」や妙にテンションが無くて感動する「6才のボク」をおさえての「バードマン」…受賞の背景にはヒーローと言う流行を逆説的な視点で現代にフィットさせたのが要因かもしれません。

【監督】「バードマン」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ…個人的には「フォックスキャッチャー」かなと予想したのですが残念。

【主演男優】「博士と彼女のセオリー」のエディ・レッドメイン…これは作品的にも早くから一押しだったので素直に嬉しいですね。

【主演女優】「アリスのままで」ジュリアン・ムーア…これも個人的にはリース・ウィザースプーンを応援していたので残念…風格負けか(笑)

【助演男優】「セッション」JKシモンズ…もうこれは予告編を見ただけでもその威圧感で決定でしょ…日本公開が待たれます。

【助演女優】「6才のボク」パトリシア・アークェット…これは作品との相性でマッチングの勝利。

【脚本】「バードマン」…この展開は過去にも同じような作品があったので新鮮味は感じなかったので「6才のボク」かなと予想しましたがハズレ。

【脚色】「イミテーション・ゲーム」…普通に納得

その他、編集で「セッション」が受賞したのは素晴らしいですね。美術・衣装・作曲の「ブダペスト・ホテル」も納得です。主題歌の「Selma」も心に響きます。ただ、唯一納得がいかないのが長編アニメの「ベイマックス」…元々ノミネートすらされなかった「The LEGO MOVIE」が誰もが認める今年のNo.1…であれば「ヒックとドラゴン2」しかない…が自他共の予想がディズニーに・・・流石にこれは同社の政治的な営業の動きを感じてしまうのでした。

地味ながら「博士と彼女のセオリー」や「セッション」がどこまで食い込めるかが見所だったのですが大健闘な結果ではないでしょうか。そんなアカデミーも終わって、夏にかけてはアカデミーとは無縁!?のマーベル実写系その他話題作が出番待ち…今年も楽しみな映画業界です!!それではアカデミー2015の見事なニールとアナ・ケンドリックのオープニング「Moving Picture」を見ながらワインでも…フフ。

ちなみに、このオープニングでジャックブラックが乱入しますが、何を言ってるかといいますと…『全ては金さ!!中国にこび売って作る映画はヒーローばっかり!!続編・リメイクにありがちな脚本・・・先週なんかSMだぜ、で、アホどもがスマホで映画さ・・』とかなりなブラックで会場大受けなんですね。是非ご堪能を!!、この時取り出したスマホは実はサムスン製なんですが、広告効果はあったとは思えませんね(小声で)


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2015年02月07日

ヘルプ日記 魂に嘘をつくなかれ・・・編

20150206巨匠レイ・チャールズの伝記的映画「Ray」は公民権運動が謳われ始めた時代を描いたものだけど、時を同じくして人種差別に果敢に挑んだ南部の女性達の物語と言えば2011年「ヘルプ」だわ。

アカデミー作品賞にノミネート、オクタヴィア・スペンサー嬢が助演女優賞に輝くなど名実ともに注目された、いやされるべき1作ね。

物語は事実に基づいて書かれた小説がベースになっており、「Ray」同様当時の人種差別をリアルに描いているの。舞台はミシシッピ州。大学を卒業しライターを志す少女スキーターは、恋人も作らず仕事一辺倒。周囲の友人達は結婚出産を済ませ、家事や子育ては黒人のメイド達に任せっきりという優雅な状況なの。

ようやく地元新聞の家庭欄の記事を担当できるようになったスキーターは友人エリザベスのメイド、エイビリーンに手伝いを頼むことに。日頃からの友人たちの黒人メイドに対する態度に疑問を持っていた彼女は、エイビリーンとメイド仲間のミリーに取材を申込みメイド達の本音と真実を本にしようとするけれど、メイド達は報復を恐れて協力を拒むの。

やがて白人奥方達の一方的な見解から、ミリーや他の黒人メイドも職を失ったり逮捕されたりという事件が勃発。遂にエイビリーンや他の黒人達もスキーターの取材に応じ、出版にこぎ着けたけれど新たな波乱が・・・というストーリーよ。私達は表面的な人種差別しか知らないけれど、こうして事実に基づいた作品を見ることでいかに黒人が過酷な人生を送ってきたのか理解する事が出来るわ。

職業の選択肢はおろか病気になるからという理由で室内のお手洗いを使うことも許可されない。言いたいことを発言しようものなら職を失い罰を受ける、そして命を狙われる…そんな日常があるなんて想像すら出来なかった。本編でスキナーは裕福であるけれど、当時女性が仕事で自立するというのはあり得ないことで、メイド達同様異端者扱い。

しかし自分の考えをしっかり持ち正直だったからこそ、メイド達と通じ合えることが出来たの。それと相反する所に位置するのが、奥様連合のリーダー的存在ヒリー。彼女は自分の考えを相手に押しつけ常に自分のペースで進めていくわ。でも最後は己の内面に弱いお嬢様気質によって崩壊していく・・・その様に、小気味良さより哀れみを感じてしまった。

女優陣の好演ぶりはただただ圧巻だけど、一番印象に残ったのは、アリソン・ジャネイ演じるスキーターの母親よ…娘が結婚しないことに危惧感を感じ、ヘアスタイルから服、立ち居振る舞いにも口うるさいの。ただ、家族同然に娘を育ててくれたメイドを自分の地位を守るために解雇してしまったことを悔やみ、娘にそのことを指摘されていかに自分が流されて生きてきたかを思い知るわ。

スキーターが投げた波紋は方々に広がって行ったけれど、愛する家族に勇気をもたらしたのは最も大きな功績ね…後半ヒリーが母親に直談判しに来た際、いつもならやり過ごす母が彼女に毅然とした物言いをするシーンは圧巻よ。そして成功した娘をNYへ送りだそうとする気概に、見ているこちらが誇らしさすら感じてしまう。

人間正直に生きるというのは非常に難しい事よ。

うまくやり過ごすというのが生き上手、というのが世の常なれど、何か問題に対峙したときに自分がどう行動するべきなのか・・・それが生き様であり、自分の存在する意味がそこにあると思うのよね。やり過ごしても真の解決にはならないし、自分の魂に嘘をつくことだけはせず生きて行きたいものだわ。そう思えるのは、スキーターの投げた波紋が今なお広がっているから・・・なのかもしれないわね!


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2015年01月24日

英国王のスピーチ日記 王室という名の会社から・・・編

20150120吃音は実にデリケートな悩みではあるけれど、一国の王がその問題に直面しているとしたら大変な事よね。2011年アカデミー賞受賞作品「英国王のスピーチ」

吃音に悩む英国王ジョージ6世の実話に基づいた物語は幼い頃から内気で、厳格な父王ジョージ5世に威圧されてきたジョージ6世ことアルバート王子は、吃音を治そうと様々な治療を受けるも効果が出ず。

そこでエリザベス妃は独自に探し出した言語療法士ローグがこれまでの医師と違うと感じ、夫を彼のもとへ連れて行くの。しかしアルバートはローグの態度や独特な治療に激怒し、2人は衝突するばかり。しかし彼が行った治療方法は最も効果があり、吃音が治る片鱗が見え始めたわ。

次第にアルバートは彼を認めやがて2人の間に友情が生まれていったというストーリーよ。本編中興味深いエピソードが沢山在るのだけど、アルバートのわがままな兄エドワード8世が人妻の伯爵夫人に翻弄されて王位を捨てたり、アルバート自身が幼少時代、左利きの矯正や乳母に虐待されていたなど、渡る世間も真っ青の人間味溢れるドラマが展開されているのが良い。

特に感心したのはアルバートが父王に対して王室を「家族ではありません、会社です」と言い放ったシーンね…格式高い英国王室とは言えどもきちんと運営していかなくてはいけない訳だから、非常に納得させられたわ。そういう意味でも国王のスピーチは国民に対する重要なプレゼンテーションでもある訳だから重要よね。

ここまで赤裸々に王室を描いたことで、より英国というものが身近に感じられるし、何だか好感度が上がった気がするわ。とにもかくにもアルバート王子を演じたコリン・ファースを始め、役者陣の驚異的な演技力にはただただ脱帽。吃音をどんな訓練でマスター?したのか・・・想像を超える技術と努力としか言い様が無い。

注目はローグ役のジェフリー・ラッシュ…個人的には「ミステリー・メン」「恋におちたシェイクスピア」「ガフールの伝説(声優)」の彼が大好き…役所は元シェイクスピア役者で、その経験を活かして独自の言語療法を生みだし、国王であろうと一般人であろうとも分け隔てなく自らのやり方に従わせるの。好き嫌いが大きく2分するタイプだけど、その自信と真っ直ぐな信念があったからこそアルバートを動かせたのだろうな、とその強さに憧れてしまう。

私自身も人前で話す機会が多く、プレゼンテーションの仕方も自分なりに考慮しているけれど、ローグと共通していることがあったわ…それは自分が役者で、聞き手を観客と思い話すということ。この点に於いては特に納得よ。

そして忘れてならないのは、エリザベス妃の母親的な献身ね。常に夫の立場に立ち、そっと近くで遠くで導くその姿に、聖母的賢母とでも言うべき優しさを感じたわ。国王に即位した後、愛する娘達が「パパ」と呼ぼうとし、慌てて「国王陛下」とお辞儀をするシーンではちょっと切なくなったけれど、それよりもスピーチを終えた国王がローグに「君は友達だ」という言葉に対し、彼が「私達は対等ではなく、あなたに仕える者です」と答えたシーンではグッときたわ…これで自分はお役御免です、もう大丈夫ですよという気持ちが込められているのかしらね。

しかしながら2人の友情が続いたのは、窮地を共に乗り切った戦友であり、身分を超え人としてお互いをリスペクト出来たからなのでしょうね・・・なんとも羨ましい限りだわ。私達も様々な会社や団体で仕事をしている訳だけど、己に自信と誇りを持って生きて行きたいものよね。そう、心は常に国王ね!

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2015年01月21日

Duet日記 継承か警鐘か・・・編

20150117アカデミーノミネートの長編アニメで巷では大本命だった「LEGO The MOVIE」が選出されず、世界中ブーイングの嵐。

短編集においてもこれが何故ノミネートされないの!?という作品があるのよ。

元ディズニーで伝説的なアニメーターだったMr.グレーン・キーンの「Duet」…ディズニーの歴史を38年間もの長い間支えてきたスーパーバイジング・アドバイザーでもあった彼が『Google Spotlight Stories project』企画で昨年短編映像作品を発表したのだけど、この作品のクオリティの高さと手法に世界中が震撼!

キーン氏はアリエル、アラジンなど数々のキャラクターを生みだしキャラクター達の細やかな動きや、創意工夫のカメラアングルなどはアニメ映画の新境地を切り開いて、言うなればディズニーの父親的存在ね。その彼が発表した作品「Duet」は、なんと鉛筆に紙面にリアルタイムで描き上げて制作されたというから、もはや神業・・・!

制作過程もこれまた驚異的で、動画を確認する作業を機械では無く自分の手を動かして行っているの。それが物凄いスピードで、早送りしているのかと思うほどなのよ。更に画面はメインのキャラクターの部分だけで無くその何十倍もの背景を描いておいて、メインの部分だけ切り取るといった手法なの。この作業によって画面全体に奥行きや広がりを感じる事が出来るわ。例え本編では見えずとも、大事な作業であることは確か・・・しかしこれもすべて手で描いているのよね…凄すぎる!

本編は2人の男女が赤ちゃんから大人になるまでの成長を描いており、成長するに従い変化する2人の心の移り変わりまでじっくり楽しむ事が出来るの。全編音楽のみでセリフは無く、特に女の子がバレリーナの夢を叶え大人の女性へ変貌を遂げる過程が美しい

全編通して恐ろしい程に活き活きとした線で描かれ、何よりも自ら演じているかのようなキャラクターの微妙な表情の変化には参った!としか言いようがないわ。昔は勿論CGは存在しない訳だから、人間の手で1枚ずつ動画を描いていくのが当然だったのよね。だからこそ線に温かみがあり、えも言われぬ躍動感を感じることが出来たのだわ。

キャラクターを息づかせ、物語を紡ぐのは人間の手・・・その最も核になる部分を思い出させてくれた今作は次世代への継承なのか、警鐘なのか。いずれにせよ、日本のクリエーターの皆さん、まずは一度ご覧あれ!


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2015年01月19日

アカデミー賞日記 泣いたらあかん!編

201501152/22の猫の日に発表される恒例行事…米映画アカデミー賞。

アカデミー賞といえば華やかに着飾った女優さん達を見るのが楽しみのひとつであるけど、いつも気になるのは長いスピーチとオーバーリアクション。皆思うところは同じらしく、知り合いの映画好きの男性はわざわざスピーチの部分を編集して授賞式の映像をストックしているわ。

数年前、アカデミー賞を主催している映画芸術科学協会は、オスカーを獲得する可能性のある人々にある呼びかけをしたの・・それは「受賞したら泣かない」!

メリル・ストリープやサンドラ・ブロック等のベテラン組もアドバイスを受けたそうよ。受賞したら感情を抑え、演壇に立ったら涙混じりの感謝の言葉は禁止。

観客に向かっては簡単なスピーチを行い…個人的な感謝はバックステージのカメラで…という内容なの。

確かに監督やスタッフに感謝する・・というのはアリだけど、その後町内会の名簿を読み上げるが如く長々と語られると、見ている方は感動があっという間に醒めてしまうものよね。感謝の気持ちは大事だけど、それは後ほどのPartyでね…フフ。

そして、アカデミーも今年で87回…今年の主なノミネート作品は以下なんですが、協会から好かれてないフィンチャー監督の「ゴーン・ガール」や長編アニメで話題の「LEGO THE Movie」が完全無視などある意味アカデミーらしいノミネートになってます。

こうなると、個人的には独立系ながら口コミで結果を出してきてる天才理論物理学者ホーキング博士を題材にした「博士と彼女のセオリー」を応援したいですね!!

【作品賞】
「6才のボクが、大人になるまで。」
「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
「グランド・ブダペスト・ホテル」
「イミテーション・ゲーム」
「博士と彼女のセオリー」
「セッション」
「Selma」
「アメリカン・スナイパー」

【監督賞】
ウェス・アンダーソン「グランド・ブダペスト・ホテル」
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ「バードマン」
リチャード・リンクレイター「6才のボク」
ベネット・ミラー「フォックスキャッチャー」
モルテン・ティルドゥム「イミテーション・ゲーム」

【主演男優賞】
M・キートン「バードマン」
エディ・レッドメイン「博士と彼女のセオリー」
ベネディクト・カンバーバッチ「イミテーション・ゲーム」
スティーヴ・カレル「フォックスキャッチャー」
B・クーパー「アメリカン・スナイパー」

【主演女優賞】
フェリシティ・ジョーンズ「博士と彼女のセオリー」
ジュリアン・ムーア「アリスのままで」
ロザムンド・パイク「ゴーン・ガール」
リース・ウィザースプーン「Wild」
マリオン・コティヤール「サンドラの週末」

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2015年01月10日

Ray日記 心の眼を開け!!編

201501082006年「ドリームガールズ」で敏腕プロデューサーを好演したジェイミー・フォックスが本人が憑依したかの如く演じきりアカデミー主演男優を受賞した2004年「Ray」…これまたエンタメに関わる人間にとって必見の作品ね。

物語は言わずと知れた巨匠レイ・チャールズの伝記で、本人は作品の完成を待たずして亡くなってしまったわ。

7歳の時緑内障がもとで失明し17歳でシアトルに渡りその才能を開花させたレイ…バンドと共にツアーを敢行し、盲目の天才と呼ばれレコード会社とも契約。ゴスペルシンガーのデラ・ビーと運命的な出会いを果たし結ばれるけれど、その一方で麻薬に溺れ、女性との浮き名が絶えないなど波瀾万丈な人生を赤裸々に映像化しているわ。

とにかく驚かされたのは、その生々しいまでの描写台詞ね。

調べてみるとレイ自身がアドバイザーとして参加していたそうで、そのシーン毎の状況をよりリアルに再現できた要因のひとつであることは間違いないわ。バスで黒人席と白人席がロープで区切られていた1940年代…そんな過酷な時代の中、弟の溺死というトラウマ、更に光を失い、貧しさの中で愛する母も亡くなるという3重苦以上の状況でレイは己の人生を切り開いていくのだけど、その生きていく術は強く優しい母から授かったものよ。

目が見えなくても助けるのは最初だけ、そこからは自分の力で這い上がるという事を厳しく教えてくれた母心には本当に頭が下がるわ。その甲斐あって彼はショウ・ビジネスの世界を見事に渡り、盟友ともいえるアトランティック・レコードのプロデューサーと共に数々の名作を生み出したのだけど、この縁もレイの人脈を”嗅ぎ分ける”才覚があってのこと。更にABCレコード移籍の際には原盤権の獲得を条件に出す等、そのビジネスセンスも類い希なるものよ。

この厳しい時代に誰にも出来ない事を成し遂げ、結果が出ればきちんと権利を主張する…今の時代でもここまで出来るものではないわ。

そんなレイもシアトルに出てきた頃は、ライブバーの女主人にギャラだけでなく己の体も差し出さないと行けない時期もあったの。その時の女主人の台詞がとにかく生々しくて、敢えて記述は避けさせて頂くけれど、机上で台本を書いていたのでは思いつかない究極のリアリティがあり素晴らしかった。そういう思いをしながら自分を守る術を身につけていった彼は、後に女性への”嗅覚”も研ぎ澄まされ、手首から腕を触るだけで良い女を見分けるという技も身につけたわ。

愛人達の殆どはコーラスガールで、中でも麻薬で死亡したマージーが歌う「ヒット・ロード・ジャック」は印象深い。正妻のデラとの家庭を壊す気は無いと言われ、彼への思いを捨てきれられない彼女はレイとこの曲のリハーサルを行うのだけど、涙ながらに今の自分の状況そのままの歌詞をピアノに合わせていくシーンは今なお記憶に鮮明に残っているの。面白い事に、レイは愛人をメインボーカルにする曲は彼女達の心情や状況そのままの歌詞にして歌わせているのよね。だからこそ曲の真意が伝わるし、ヒットに繋がったのかもという気がしてならない。

自分も常日頃から思う事だけど、己が感じ伝えようと思ったことをその経験から描くというのはとてつもなく濃度が濃いものが出来上がるものよ。だからこそ唯一無二のものになる訳で、誰にも真似できないものが生まれるわ。もしかしてこの孤高の天才はそれをわかっていて創り続けていたのか・・・?というのは邪推にしても、ビジネスはビジネス、プライベートはプライベートときっちり分別する強固な姿勢でいたからこそ成功を掴んだのだなと言うこともよくわかる。

目を補うための記憶力が仕事の集中力を導き出しているかは不明だけれど、音を操る事でレイは様々な事から解き放たれて自由であるということだけは間違いないわ。彼はアーティストとしてもビジネスマンとしても超一流・・・敵うわけがないわね。

公民権運動の激しかったアメリカの時代背景、レコーディング、ショウビジネス、当時の衣装、すべてに於いても見所満載だけれど、両の目が開いていたとしても心の眼を開かないことには、自分の夢を追うどころか自分を守る事すら出来ないということを思い知らされたわよ。

何度も見直してしまうほど心に強く刺さってくるシーンが多く、なんとも自分の不甲斐なさを恥じてしまいそうになるけれど、エンタメの世界に生きようと覚悟を決めた人は必見!です。さぁ、心の準備はよろしいか・・・?

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2014年11月14日

エクス・マキナ日記1 怖いご褒美編

20141112最近はインディペンデント系の低予算映画と言っても、技術革新で見た目はメジャーのそれと違いが分からないくらいの質感が多くなっており、違いと言えば誰でも知ってる俳優が出ているか否かぐらいしかありません。

逆にメジャーな俳優が多数出演していても、なんだか安っぽい映画がチラホラありますしね。

そんな中で非常に気になる作品がこれ「エクス・マキナ(EX_MACHINA)」…ポスターも秀逸ですよね。明らかにアンドロイドなんですが心を感じる質感は見事です。

物語は、ある大手IT会社の創業者CEO…殆ど出社することはなく、自らは邸宅にこもり何かの研究をしてるらしく、社員も殆ど会った事が無いという人物。ある日、CEOのお家に一週間社長と一緒に過ごせる特権付き社内公募で当選した人物がいそいそとCEO宅へ。

そこは、上場資金で財をなしたCEOの最新研究開発基地だったのです。が、そこに社長以外の人影が・・それが女性容貌なアンドロイド。

アンドロイドは美しくAI知能は正にレディーにふさわしい処理能力を持つエヴァ…その彼女にチェーリングテストを行うことに。このテストはアンドロイドの人間性を高めるいわゆる人間化なのですが、実はテストの本当の意味は・・・ここからCEOとの三角関係も含めサスペンスへと展開していくのです。

監督は脚本家から初めての監督作品となるアレックス・ガーランド…これはちょっと期待大ですよ…先ずは予告編をご覧あれ!!


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2014年08月22日

エージェント日記 千里眼編

20140821トムクルことトム・クルーズ…アイドル的スタートから今では俳優・プロデューサーとして常に最前線なポジションで映画を楽しませてくれている。

彼の素晴らしさは、オファーを受けたときの脚本読解力…つまりどの作品に出るべきかの選択判断能力がずば抜けてること。アカデミー主演賞をとっても、以後しょうもない作品ばかりに出てアレアレみたいな役者が多い中、かれは常にベストな作品を選んでるわ。

そんな彼のセンスを感じさせるのがアカデミー他様々な映画賞にノミネート・受賞した1996年に公開された「ザ・エージェント」…トムが演じているのは全米一のエージェント会社に勤める有能エージェントなの。やり手である彼は、高価な年棒と引き換えに選手の家族の気持ちを犠牲にしてきた事に気付き、会社に対して提案書を提出。理想に満ちた企画書は同僚の賛同を得たと思ったのも束の間、彼は会社をクビに。

5歳の子供を抱えた経理のシングルマザーだけが彼に付いて会社を辞め、大勢いたクライアントも同僚にさらわれ只一人落ち目のフットボール選手だけが残る始末。全てを失い一から立ち上がろうとする彼はフットボール選手とシングルマザーから愛する事の力強さと素晴らしさを学ぶ。

とにかく前半は、あっという間にトムが契約の鬼であった状態から自責の念にかられる部分までがテンポ良く進み、後半はじっくりと彼が人を愛する事に苦悩しつつ一生懸命になる部分が描かれていて凄く良かったわ。日本ではあまりスポットの当たらないエージェントという仕事の滑稽な部分もリアルに描かれていているから面白いの。

シングルマザーが、トムを愛しながらも子供がいる事で引け目を感じ自分の思いをセーブしたり、いつも冗談ばかり言っている選手が命がけで家族の為に戦ったり、相手を思うが故に自分を犠牲にするという愛情が伝わって人間の強さを改めて思い知らされた気がする。

アカデミー助演男優を受賞したキューバ・グッディング・Jr演じる落ち目のフットボール選手の「金持って来い!」のトムとのかけ合いは素晴らしくリアルで生き抜く原点を感じ取ったのよね。仕事は結果を出してなんぼ、青臭い事ばかり言っていては食べてはいけない…確かにその通りだけど、青臭い部分も持ち合わせていないと心がすり減って大事なものを見落としてしまうわ…改めて今の自分の心の在り方を考えさせられたわ。

そして、トムクルの脚本レベルでの完成時を想像できる千里眼は、その後も「マグノリア」「Eyes Wide Shut」「コラテラル」他、毛色違う作品でも十二分に発揮され、最新作「Edge Of Tomorrow」も成績は今一だったものの、作品の評価は高かったわね。

トム・クルーズ…きっと晩年も素晴らしい俳優・プロデューサーとして大活躍していくでしょう!

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2014年08月02日

ライフ・イズ・ビューティフル日記 生き延びる事の美しさ編

20140803第二次世界大戦下のユダヤ人迫害を描いた作品は多々あれど、1997年「ライフ・イズ・ビューティフル」…アカデミーでも7部門にノミネートされ、3部門受賞した名作ね…その重いテーマにも関わらず、チャップリン作品のようなテンポ良さと明るいトーンで仕上がっているのが素晴らしい…監督・脚本・主演ロベルト・ベニーニの世界よ。

こういった内容だと1度ならいいが2度は辛くて見たくない、と思ってしまうけれど、今作は人生の節目に何度か見てみたいと思えてしまう…きっとそれは、自分が弱っている時に自己治癒力を高めてくれるような、じわじわと愛の深さを思い出させてくれる作品だからかもしれないわね

物語は第2次大戦前のイタリアが舞台よ。ユダヤ系イタリア人のグイドは、地元の権力者の娘で小学校の教師をしているドーラに一目惚れ。彼はその陽気な性格と楽しい話術でドーラの心を射止め、駆け落ち同然で結婚したわ。やがて愛息ジョズエが生まれ、3人は幸せな生活を送っていたの。

しかし徐々にユダヤ人迫害が強行され、遂にグイドと息子は強制収容所に送られてしまう。イタリア人のドーラは彼らを追って自ら収容所に行くことを望み、女性房から彼らの無事を祈り続けていた。グイドは幼いジョズエを不安がらせまいと、収容所での悲惨な状況は全てゲームで、良い子にしていれば点数がもらえて1000点たまったら勝ち、本物の戦車に乗って家に帰れると嘘をつくの。

普段どおり明るい冗談交じりの父の言葉を疑うことなく、ジョズエはゲームを楽しみ父のいう事に従ったわ。それが父の命がけの守護だとは気付かずに・・・。やがて戦況が変わり、ナチスが撤退という動乱の中、父は隠れんぼと言い含めて息子を守り凶弾に倒れてしまうの。最後まで隠れんぼだと信じ抜いたジョズエは救助され、父の言葉どおり勝者としてアメリカ軍の戦車に乗り母に再会したわ。

あまりの悲惨なストーリーに思い出してもじわじわくるはずなのに、それが悲しみではなく人間が持つ最もハートフルな部分に訴えられてほんわかしてくるから不思議よ。

強制収容所での労働、生活、ガス室に関して克明に描かれていたり、もともと知り合いだったドイツ軍の軍医が助けてくれるのか・・・と思いきや何もしなかったりとリアリティを重んじているだけに、グイドのどこか浮世離れした明るさが救いという見事なコントラストは圧巻。

でも一番のリアルは、彼が息子と妻を守ろうとする愛情の強さなのよね。最も印象的なシーンは、兵士に連行されたグイドが息子に恐怖を与えないよう、おどけた行進ポーズをとってみせる場面よ。その直後兵士の連射音だけで彼の死が表現されるのだけれど、秀逸としかい言い様が無い。

彼はどんなに貧しくても、苦しくても、恨んだり泣いたりはしないの・・・それは彼が聖人君子だからという事ではなく、とてつもなく豊かな愛の持ち主だから。それは彼自身しか持ち得ないもので、誰にも奪うことは出来ないわ。自分自身含め、人間は辛い状況に遭遇すると誰でもマイナスに陥ってしまうもの。

即プラス思考に変換出来るようになるには相当の鍛錬が必要だし、なかなか悟りの境地には至らないわ・・・。それでも自分の守るべき愛するもの、自分が楽しんで生きることを忘れずにいられたら、人生はこの上なく輝き出すに違いない。悲しいときにこそ、笑おう・・・そんな事を思い出させてくれた1作でありました。

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2014年03月07日

グラディエーター日記 ローマに滴る男汁編

20140307リドリー・スコット監督月間な最近(笑)今日はアカデミーで作品賞を受賞した2000年「グラディエーター」…北米で今日から公開の「ライズ・オブ・エンパイア」等の流れにもつながる記念すべき作品だわ。

よく、プロデューサー仲間の囁きに『ローマものには手を出すな』という鉄則があるの…実際「スパルタカス」「ベン・ハー」以降、ローマ帝国をテーマにした作品はことごとく失敗しているのよ…何故かと言えば、美術に巨額な費用がかかるし、ストーリーが古びて派生が難しい。鎧と兜に勝るインパクトの強い俳優がいない等・・の理由があるわ。

それをドリームワークス社がCG補完によるコロシアムの再現、男汁タップリのクロウ、TVゲームのバトル系の好調さを背景にシンプルなストーリーで勝負に挑み、大成功となった訳なのよ。これがキッカケで『ローマものには手を出すな』という怨念が払拭され、「300」の成功で180度マーケティング定義までが変わってしまった感。

主演はラッセル・クロウ…物語は至ってストレート…時は西暦180年のローマ帝国。クロウ演じるローマ軍の将軍は次期皇帝として最有力だったけど、現皇帝の息子の企みにより妻子を処刑され、奴隷としてコロシアムで闘う剣闘士に落ちぶれてしまうの。そして、彼のプライドをかけたリベンジが始まったわ!

グラディエーター=剣闘士の基本的なストーリー・ラインは、既に1914年の「Cabiria」とイタリア作品で確立されているの。それは"強い者同士が闘い最後は正義が勝つ"という図式。そこにキリスト教が絡み、正義を問いかけ、ユーモアも忘れず、濃~いロマンスが基本スペックとして構成されれ、「グラディエーター」もしっかりとこれを踏襲しているわ。

男が伝統的な価値観に乗っ取って闘い最後には勝利を得る、というコンサバティブな内容は多少面白みに欠けるけど、「グラディエーター」はとても楽しめる作品と言えるわ。ローマ帝国系を2時間半でまとめる時に難しいのが登場人物の相関関係の複雑さ・・・これがテンポを崩し飽きさせてしまうケースが多かったのだけど、今回は主人公を絞込む事で関係が見えにくいローマ相関図式をオブラートしたのが良かった!

公開当時、予想以上に女性層にも人気だったのよ。これは米の場合だけど、夏本番前の女性を意識した作品が集中する時期にあえて『きっと女性はロマンスものに飽きている』との判断から汗臭い作品を投入した事が功を奏したわ。

ローマの街中の石畳…「グラディエーター」を見終え、ふと、あの石畳は幾人もの戦士達の血と汗で彫刻され、今もなおローマを支えているのだと思うと感慨深いものよ。

リドリー・スコット監督は、どんな時代を背景にしようとも必ず現代の課題とリンクしている描写が多いわね…今回もローマものながら何気に現代社会の構図とオーバーラップさせているのが彼らしいわ…21世紀のコロシアムは意外に身近に存在しているのかもしれない。

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2014年02月05日

トルーマン・カポーティ日記1 冷血になれない洒落者編

20140205作家トルーマン・カポーティの自伝的2005年映画「カポーティ」…昨日の「マグノリア」でも重要な役所を演じていたフィリップ・シーモア・ホフマン主演の作品。

昨日、悲報を知ったのは劇場で「ソー/ザ・ダークワールド」の鑑賞後…え、彼ってまだ40代のハズと思ったら死因は薬物によるもので死体からは注射針が刺さったままの状況だったとか・・。彼の薬物歴は凄く近年はリハビリ施設の出入りが頻繁だったと聞いてたただけにひたすら残念。

一部では彼のそんなプライベートが個性を作り出してるなんて意見もあるけど真っ向反対意見よ…自宅からはフェンタニル配合ヘロイン50袋と注射器20本が見つかったらしいけど、薬物と演技力は絶対に無関係と確信してます。

彼はインディペンデント作品にも積極的で、作品の規模的背景よりも内容重視でインディペンデント映画界にも大損失よ。

そんな彼の代表作とも言えるのが「カポーティ」…アカデミーでも主要5部門(作品/監督/主演男優/助演女優/脚色)にノミネートされ主演男優賞を受賞したわ。

内容は、1959年にアメリカ中西部の田舎町で一家4人が惨殺されるという事件に興味を抱いたカポーティが、6年掛りの取材の後『冷血』という作品を書き上げるまでの、ドキュメンタリータッチの作品。

カポーティ作品『叶えられた祈り』を読み始めようと思っていた矢先だったので、自分勝手なイメージを描いていけど思い描いた通りの色合いだったわ!

彼はホモセクシャルで衣服にこだわるお洒落さんで、ボソボソと話をするけど話し上手で強烈な印象の持ち主。しかも記憶力が良く、インタビューの内容の殆どを暗記出来たというのだから驚きよ。でも彼自身の根底にある"人間臭さ"が犯人達や周囲の人間の心を動かしたお陰で良い取材が出来たのだと思うわ。

カポーティは自分の欠点をわかっていながら直そうとはしない、つまり人に媚びないの。常に自分本位で、"イヤな面"を表に出したがるけど実に素直で憎めないわ。彼の理解者である女性作家は、カポーティが上等のスーツを見せびらかしても無視するし、犯人の死刑の日が決まりふさぎ込む彼に「彼らに死んで欲しいんでしょ?」と彼が一番欲しい答えをくれる。彼が成功した陰には、こういう素晴らしいパートナーが存在してたからなのね・・。

取材をすすめるうちに犯人に親近感を覚えるカポーティ…でもかれがこの本を出版させる為には彼らが死刑という結末を迎えないといけない。『冷血』というタイトルは犯人にではなくカポーティが自戒の意味で付けたのでは…と思わずにはいられないわ。

でもこの映画でカポーティという人物に対してどんどん興味が湧いてきたけど、彼を演じたフィリップ・シーモア・ホフマンの演技はどう言葉で表したら良いか・・分からない!

"細胞クラスで演技をする名優"とでもいうべきかしら。天才・・いえ、そんな凡庸な呼称の枠を超えた、ハイ超えました。内容が内容だけに様々な解釈が出来る作品だと思うのだけど、見事に"人間の心の微妙な色加減"が表現されて、静かに圧倒されたわ!とにかく凄い。

そんな彼を演じきったフィリップ・シーモア・ホフマン…本当に悔やまれる死です…ご冥福を。

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2014年01月12日

スタートレック日記13 VFX編

20140110先日に引き続きアカデミー賞最優秀視覚効果賞狙いのノミネート投票に向けたILMのPRリール…本日は「STAR TREK:Into Darkness」編。

昨日の「パシフィック・リム」同様にILMが手掛けたVFXですが、近年はリアリスティック感が物凄くて、解析してくれないとどこの部分がCGなのかは難しくなってきましたね

SF作品に限って言えば背景がそもそも現実的な場所ではないので、どの部分と言うより、どこがレイヤーなのか気になる部分です。

レンダリングの精度やスピードも向上したことで、水や煙などの粒子が細かく計算量の多い流体力学的な部分がリアルになったおかげで「パシフィック・リム」や「Into Darkness」など巨大なオブジェクトにまとわりつく大気の流れなどが忠実に再現できて凄いことになってきましたね。

この先、表現としてCGはどんな進化の道を歩むのか楽しみです!



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