アート

2017年05月14日

福ねこ展日記 百段階段に千疋の猫ちゃん編

20170508目黒雅叙園の百段階段で開催されている「福ねこ展」というイベントにご招待されたので、お休みの日に伺ってきたわ。

あの文化財である百段階段と猫とのコラボとなると相当作品自体にパワーがあるか、展示の方法を考えないとありきたりの”和風”テイスト猫展で終わってしまう…あのゴージャス且つ淫靡な香りのする空間にのまれまいと猫達は戦うのか・・・などと思いを巡らせながら会場に到着。

イベントはあちこちで話題になっていたので平日でも来場者は多かったわ。まず目に付いたのは女性客の多さ・・・そして必ず猫グッズをひとつはお持ちの可愛らしい感じのマダムがあちこちでカメラ小僧の如く撮影していたの…そういえば前回この百段階段は撮影の許可が下りなかったのよね。

でも、このイベントでは作品込みで撮影可能になっていたのよ…やはりオーナーが変われば、ちょっと商売っ気も出てくるか・・・などと大人の事情も見え隠れしたりして。

早速、各お部屋に展示された9名のアーティストによる約1000点にも及ぶ作品を拝見したわ…まずは「十畝の間」で可愛らしい猫を神仏化するもりかわじんさんの作品からスタート…所狭しと大小様々、キュートな猫神様達が鎮座し365日毎の誕生日猫たちが空間を彩っていたの…マダム達は自分の誕生日猫を見つけてはパシャッ!!自分も真似して、誕生日猫を探したのだけど、その愛嬌ある表情になんだか他人とは思えず・・・ほんわかした空間を楽しめたわ。

その後も造形作家、小澤安麿さんの歌川国芳の「猫飼好五十三疋」を完全再現した立体作品、人形作家、石渡いくよさんの時代劇にちなんだ猫人形などが続き、当初抱いていた危惧感は展示が進むにつれ増幅。

どの作品もそれぞれ可愛らしさやテーマはあっても、この空間で存分にその魅力を発揮出来るか?と問われれば”否”なのよね。残念な事に猫達は単なる置物と化してしまっていた・・・ニャーン。

20170709ただひとつ異彩を放っていたのは妖怪画でもお馴染み石黒亜矢子さんの「パシフィック・ニャム」!!勿論「パシフィック・リム」の”ジプシー・デンジャー”ならぬ”デンニャー”が描かれていたのよ。国芳のような猫で構成された浮世絵タッチのこの作品、拝見した瞬間に大笑い&(安堵)感心…やはりこれくらいのアイディアとパワーで挑まないとこの空間で息づくのは難しいわ。

アーティスト陣、来場者の猫愛は十二分に伝わって来たけれど、この特異な空間で猫を”魅せる”為には企画や演出は勿論、エンタテイメント性も不可欠ではないかしら・・・さてさて、古の職人たちはこの猫達の様子をどんな心持ちで見守っていたでしょうかねえ。ニャアアアン・・・ガリッガリッ。

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2016年09月12日

目黒雅叙園日記 百段階段の先には・・・編

20160906幼い頃からよく利用していた目黒雅叙園。

リニューアルしてから毎週のようにお食事会で利用していたものの、歴史的な「百段階段」を訪れたのは少なく最も記憶に新しいのは辻村寿三郎氏の展覧会かも…最近機会がありガイド付き見学会に参加してみたのだけど非常に興味深い発見があったわ。

元々雅叙園は1931年に創業者である細川力蔵が”庶民も楽しめる料亭と浴場”をコンセプトに造り上げた施設で伝統的な手法を用いた日本画、彫刻、国内外から集められた銘木に手の込んだ建具とその豪華絢爛な内装は「昭和の竜宮城」と謳われたほど…今では「百段階段」と晴れやかな宴が行われた7部屋だけが唯一現存する木造建築であり東京都の有形文化財に認定されたのよ。

普段は何かしらイベントが行われているので素の状態を見られるのは貴重よ…豪華な螺鈿アートに囲まれたエレベーターを降り、いよいよ・・・というところで、何とも味も素っ気も無い会議室の様な入口に到着。これから非日常的空間に足を踏み入れるのに、と不満を抱いていると、目の前に百段階段が登場・・・!

階段は敢えて頂上が見えない様湾曲に設計され登る人が疲れを感じさせない工夫が凝らされていたの。これこそ、おもてなしの精神よね…6室それぞれに特徴があり、どの部屋にも天井や欄間に作家達の力作が大胆に配置されていたわ。

最初に訪れた「十畝の間」は四季の花や鳥が描かれていて前室は割とカラフルで可憐、本間はシックな黒を主とした色合いで落ち着いた雰囲気…照明もモダンなデザインで素敵だけれどメインで飾られている十等身美人画の掛け軸の扱いが今ひとつ・・・と気になってしまった。20160905

そして次は誰もが息を呑む絢爛豪華な「魚礁の間」…天井には彩色木彫りの四季の花々、欄干には公家の四季の行事の様子、そして床柱には中国の魚礁問答と、その超絶技巧とも言える木彫りと美しい彩色、土台には純金箔が施されるなど、そのゴージャスさは今なお健在よ。見学者からは溜息があがっていたけれど個人的には別の溜息・・・。

数人のアーティストが手掛ける際はテーマ、世界観を統一するのが常…折角技術や彩色は見事であっても、ただけばけばしさしか印象に残らないのよね…これはアーティスト側の問題ではなくオファーした側の責任であると思いたいわ。この部屋ではかつて披露宴が行われていたけれど次第にその数は激減・・・その理由は美人が多く描かれているから、とガイドさんがネタ的に話してくれたけれど、この様にガチャガチャしているだけでなく全面に”欲”を打ち出しているような部屋では新郎新婦も落ち着かなくて当然だったでしょう…美しい空間ではあるけれどどこか空々しい印象が残ってしまい、残念ね。

次の「草丘の間」は自然が大胆に描かれ少し落ち着いたわ…元軍人の作家が描いただけに色合いがカモフラージュ柄らしいものばかりで微笑んでしまったわよ。他にも後に社長室として使われた「星光の間」では四季の花や虫、果物が描かれているのだけど、他の作品と大きく異なっていたのは最近描いたかの様な彩色の美しさ!!…作品を手掛けた板倉星光はかなりのお金持ちで、絵の具をイタリアから取り寄せていたんですって…これだけ長い時間が経ち修復必須な作品が多い中、財力を持つ者は後世に作品を残せるという・・・何とも皮肉なお話ね。

どの作品もひとつひとつは素晴らしいし歴史的に残すべきものも多い…しかしながら全体を通して見ていくと俗物的な匂いは拭いされないわ。更に付け加えさせて頂くと階段についた数字のカウントがボロボロだったり欄干の奥や什器に埃がかぶっていたりと管理の甘さが目についてしまう…しかも襖絵の保存が悪く処分した・・・などあるまじき現状も語られるという始末。

江戸時代から受け継がれた職人技術と伝統・・・細川氏が追い求めた芸術への渇望は時代と共に変化していってしまったのかもしれない。こうしてみると目黒という土地には何かいわくがありそう・・・行人坂と大円寺、日本初のあのファッションホテル、そしてこの雅叙園が同じ線上に存在することの意味が何となく理解出来たような気がするわ。

昨年の森トラストによる買収の件にせよ、どこか色と欲を切り離せない気がして残念…管理する側がもう少しだけ作品に愛情を持つことが出来たら途端に作品達は息を吹き返し輝き出すのかもしれない…アーティスト達のそんな切なる思いが百段階段の奥から聞こえてくるよう・・・そういった戒めの意味も込め、後世に残してもらいたいわ。


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2016年08月12日

デル・トロ コレクション日記 こりゃ凄い編

20160806パンズ・ラビリンス」「ヘルボーイ」「パシフィック・リム」「クリムゾン・ピーク」など毎回独自のファンタジック感を見せつけてくれるギレルモ・デル・トロ監督。

そんなデル・トロのプライベートコレクションがLA住宅街の一画で開催されてるのよ…『At Home With Monsters/Inside His Films, Notebooks, and Collections』とのタイトルでそのままお家の中の怪物達・・・って感じ。

レポート写真を見ると素晴らしい展示物とその見せ方に脱帽…これだけおどろおどろしい物が目一杯なのにどれ一つとして怖さを感じないのがデル・トロコレクションの特徴かしら。

彼の作品関連は勿論、そこに至るまでの彼の思考歴がそのまま展示されてるのよね…中にはあのギーガー作品その他有名なコレクションも多数。

個人的に1番美しさを感じたのが大木に吊されてる女性画…とても悲しい光景なんだけどとても優美で、恐怖の先にあるファンタジックな世界を見事に表現してる。

その詳細なレポート写真は以下のブログをご覧になって下さいね…動画は「Andy Visits Guillermo Del Toro's Bleak House」で紹介されてるのですが、ここで見所が一つ…取材中にカメラクルーがどうやら展示物にぶつかって壊してしまったようで、その時のデル・トロの表情に注目ですよ…フフ。

開催は今年の11月27日までなのだけど、もしLAに行かれる方は是非立ち寄ってみてね。

【Like monsters? You'll love the Guillermo Del Toro exhibit at LA County Museum】 http://boingboing.net/2016/08/03/like-monsters-youll-love-th.html


【Andy Visits Guillermo Del Toro's Bleak House - CONAN on TBS】

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2016年06月17日

フェルナン・クノップフ日記 幻想ロマンチスト編

20160609

あれは確か20数年前のことだったかしら…学校の授業で見た1枚の絵が非常に印象的で、ことある毎に思い出していたのよ。

画家の名は「フェルナン・クノップフ」・・・1870年から1920年に渡って活躍したベルギー象徴主義のトップ画家であり、モローやクリムトなどにも影響を与えたと言われているわ。

その幻想的且つ神秘的な作品は死や性、眠りなどがモチーフになっているものが多く、中でも妹マルグリッドがモデルを務めた作品はその関係性を含めて有名よ。

クノップフは油彩以外にもパステル、色鉛筆は勿論、写真を取り入れたり、挿絵や衣装デザインも手掛けるという多才ぶり…その卓越した構成力とデザイン力は作品を今なお息づかせ、まるで今の時代に描いたのではないかと思えるほどのモダンさを兼ね備えているのが素晴らしい。

クノップフの名を世に知らしめた1896年発表の「愛撫」は人間の頭部とチーターの体を持つスフィンクスが両性具有的な人物に愛撫するという幻想的な作品で、どちらも最愛の妹マルグリットがモデルになっているの…スフィンクスはうっとりとした表情で快楽に身を任せるけれど人物は無表情で鑑賞者側に視線を送っている…この対照的な2者の葛藤がなんとも言えず叙情的で、クノップフは彼らを通じて己の心の在処を表現したのでは・・・と思わずにはいられない。

しかしながら最も自分を惹きつけてやまなかった作品は…1912年発表の「煙草」…これは彼の晩年に描かれているのだけど、今見ても格好良いとしか言い様がないわ。

ハイカラーのジャケットに身を包んだ女性・・・その蠱惑的な瞳、口元には”噛んだ”細い煙草。吸うのでは無く”噛む”、この所作こそが究極のエロティシズム!全体的に円形で切り取られたデザインにより彼女の髪や胸はカットされ、目線と口元が強調されたことが”艶”をたっぷりと醸し出しているの。クノップフも晩年遂に女性の何たるかを熟知したのかしら、などと邪推してしまうくらい見事な毒婦を描ききっているわ。

個人的に歯を描くというのはコミカルだったりホラー的で、特にこの時代の女性を描く場合にはタブーに近いのかなと思っていたけれど、こうして歯を見せることで色っぽさを感じるというのは、描き手の力量とその物語の奥深さなのだと改めて思い知らされたわよ。

他にも1905年「イゾルデ」もタイトル通り「トリスタンとイゾルデ」の彼女がテーマで、同じく憂いを秘めた目と魅惑的な唇からは零れんばかりの歯が・・・恍惚としたその表情に思わずゴクリ、なの。

非現実、夢想、静寂、虚無、どんな言葉を並び立ててもクノップフの世界は表現しきれない。そこには隣のテーブルからほのかに香る紅茶、ドレスが波打つ度に香る上品な香水、白いレースのカーテンから漂う洗濯糊と太陽、そんな香りが瞬時に感じられるのよね。

絵画はシーンを切り取るだけで無く香りさえも感じさせてくれるわ…でもそれは画家本人の描く世界に招待された時だけなのかも・・・ジャンルは関係なく、そんな風に五感をフル活動させられる作品を生み出す事が出来る事こそが表現なのね・・・うーむ、深い。

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2016年06月01日

300-The Art Of The Film日記 何度も楽しめるあと味編

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ザック・スナイダー監督が世界に注目された作品「300」…何度鑑賞しても血湧き肉躍る感動を覚えてしまう。特に2007年公開の第1作目はストーリーも演出もビジュアルも重厚で、生きる為に戦う意味を改めて考えさせられたわ。

そんな神作を映像で楽しむのも良いけれど制作過程はどうなっているのか知りたくて「300-The Art Of The Film」を入手…大判の横長のサイズで見やすく英語の解説も非常に理解しやすいの。

シーン毎のイメージスケッチ、メインキャラクターの衣装デザインも見応え十分…元々フランク・ミラーのグラフィック・ノベルだけど紙面に描かれた瞬間からあの壮絶な世界観が確立されているのだと痛感したわ。

冒頭スパルタの少年が猛獣を倒すシーンではてっきり猛獣がCGだと思い込んでいたのだけれど実際は獣の前面のみ作られており、手動で4人、デジタル操作で2人という大仕掛けで撮影されていたのよ…最終的にザック監督お得意の独特の色味が緊迫したシーンを盛り上げていたけれど、このデジタルとアナログの絶妙な融合の賜だったとは・・・!!そのこだわりと手法を知る事で更に楽しめるわ。

その他にも「Tree Of The Dead」という人間の死体で構成された樹が登場するのだけど、こちらも実際にミニチュアの人形で作られたと知り驚愕…さほど大きくないサイズにも関わらず、その1体1体のリアルさ・・・血や臓器の生々しさには目を見張ってしまうわ。劇中ではリアルなサイズで登場したけれど、これほど精密に作られているのでサイズ感は全く感じられず・・・これはもう国宝ものの腕ね。

20160602そして最大の見どころは絵コンテ!!…しかも左ページいっぱいに絵コンテ、右ページに実際の映像が構成されているの…絵コンテはラフなものだけど、そのシーンの雰囲気や躍動感が見事にパッケージされていて直球で伝わってくるわ。

先日ある日本人若手映画監督の絵コンテを拝見したのだけれど、ただ一定のコマ割りの漫画を見ている様でそこでどんな映像を捉えたいのかは全く伝わってこなかったわ…しかしこうして改めて世界レベルのものを見れば絵コンテ本来の意味というのも理解出来る…簡略ではあっても”線が全てを語る”という感じかしらね。

映画では異形の者やモンスターが多く登場し、デザイン画を見ているとその形状の秀逸さは溜息ものよ…架空のものは一歩間違えればリアル感を失い浮き立ってしまいがち。だけど、やはりその背景にあるものを汲み取って丁寧に作られているからこそ物語の世界観にシンクロするのだという事も痛感…丁寧に描かれたデザインは見ているだけで飽きないし、紙面から香りさえ漂ってくるようよ。

最近このアートブックを使ってデッサンのトレーニングを始めたのだけれど、どのシーンも描き応えがあって練習には最適なの…素晴らしい映画はどのシーンを切り取っても絵として完成しているので、このアートブックは色んな意味で楽しめるわ。さ、今日は王妃のシーンから読み直して描こうかしら。

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2016年03月21日

上村一夫日記 美女解体新書編

20160310以前から気になっていたイラストレーターであり漫画家である上村一夫氏の作品展「美女解体新書展」に行くことが出来たわ。

代表作に「同棲時代」などの作品が挙げられるけれど個人的には「修羅雪姫」などの印象が強いのよね…彼の描く女性はどことなくミステリアスで艶があり何よりも瞳が魅力的。

彼が45歳という若さでこの世を去ってからもう30年・・・そんな月日の長さを感じさせないほど今なお作品達はギラギラと息づいている。

紙という二次元の世界に無限の奥行きを与えたアーティストは多々存在するけれど、上村氏は女の香り・・・それは花や香水などの良い香りだけでなく毎月流される血や体液の様な生々しい香りまでも表現してしまう。

ここまで彼が女性に拘ったのは、当時女性をメインに描いた漫画が少なくそこでうまく第一人者になれれば良いと思ったから、というインタビューを目にしたのだけれど、その理由だけでここまで描ききれるはずがないわ。上村氏が女性を愛おしいと思うのは勿論だけれど彼女達が個々に背負っている情念やドロドロになるほどの濃い生き様…そんな部分から真の美を見出す事が出来たからだと思うの。

”匂い立つ作品”で真っ先に思い浮かぶのは日野日出志氏だけど、蛇のように絡みつく女の怖さや雪のように儚い悲しさを描かせたら筆頭かもしれない。本人は生前、自分を漫画家ではなくイラストレーターであると主張し、晩年はイラストを描いていきたいと語っていたそうよ。

若い頃、広告代理店の仕事で手掛けていたポスターやレコードジャケットは実にセンスが良く、目を引くモダンな作品ばかり…今回の展示でも代表作の幾つかを目の当たりにする事が出来たのだけど、中でも山口小夜子を彷彿とさせる和服の流し目美女を描いた資生堂のポスターは和を基調としながらもヨーロピアンでノスタルジック・・・”ネオ・ジャポニズム”とでも言うべき美しさよ。

嬉しい事に点数が多く見回るのに2時間以上かかってしまったけれど、やはり生原稿の美しさは圧巻!!…時に大胆に、時に繊細に描かれた世界はホワイトが殆ど用いられておらず一発録音のレコーディング的な緊張感を覚えたわ…生原稿にも気の抜けない美を感じ、ぞくぞくしてしまった。

漫画の中で特に気になったのは最近再版された「離婚倶楽部」という銀座の小さなクラブを舞台に女達の人間模様描かれた作品ね…発売当時は売れ行きが良くなかった為1巻しか刊行されなかったそうだけど、丁度この頃同誌で「子連れ狼」や「現代任侠伝」などドラマ性の強い作品が際立っていた時期だけに、テーマ的にも沈んでしまったと思われる。

しかし本編を見ずとも数枚の原稿は雄弁で、ママらしき女がカウンターのスツールに座りタバコをくゆらせる扉絵は怠惰さをクラブ全体を大胆にも見開きでしかも俯瞰で描いたシーンは、店全体の状況とそこにいる女達の心情を一気に理解させてくれたわ…これを見ただけでも本編が読みたい!!という思いが溢れ出してくる。

原稿上でドラマが流れる中、瞬時にキャラクター達の”その瞬間”を知らしめるという神業・・・そういう意味でも上村氏はイラストレーターなのかもしれないわね。

驚いたことにこの神は、原稿を入れるケース迄自分でデザインして作っているのだけど、これがまた素晴らしくどれほど我が子である作品を愛しているのか思い知らされたわよ…出版社に運搬する際も上村ここにあり・・・!!という洒落を感じさせてくれる。いや洒落でなく、念なのか・・・うーむ…彼の作品に関しては改めてご紹介させて頂くけれど上村氏の美女に出会ったらご用心!!一瞬にしてその艶姿、香りで虜になってしまうわよ…そして、そのあとは・・・。

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2016年01月25日

鴨居玲日記1 繊細な死の貴公子編

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電車の中でゆらゆらと揺れる広告…そこに描かれた鮮烈な絵のエネルギーに思わず振り返ってしまった…広告は東京ステーションギャラリーで開催される画家、鴨居玲の個展の紹介…初めて見るその絵の深淵のような深さ、重さに魅入られてしまったわ。

非常に残念な事にスケジュールが合わず作品達に会いに行くことが出来なかったのだけど小山田二郎の作品と対峙した時同様自分との共通点を見出してしまった…鴨居玲は革新的な下着デザイナー鴨居洋子を姉に持ち、その美麗なルックスからは想像出来ないほど大胆且つ繊細な作品を残し自殺している。

作品を見ていると後期は自画像が多く、そのテーマから自らの命を絶つのは当然と納得させられる…1982年の作品「1982年 私」では、画家として認められつつも描き続けることへの恐怖と葛藤が描かれ、白いキャンバスの周りを過去の様々なモチーフである人物達が亡霊のように取り囲み、彼を覗き込んだりしているの。下手をすると取り込まれ引き摺られてしまう・・・見ている側の精神状態によっては大変な事になりかねない。

よく同人作家の人がイベント前に「白い原稿」などと自分の作業の遅延を自虐的に書いたりしているのを見かけると、これは大変腹が立つわ…鴨居はプロとして葛藤はしているけれど、その自虐的な部分を作品として見事に白いキャンバスで表現しているのよ。

比較したら彼に失礼だけど、臓物を引きずり出されるような痛みと重さ・・・この苦しみを投影出来るからこそ、鴨居は画家なのだと思い知らされる…彼は生前「絵は私にとって苦悩そのものです」と、語った事があるそうだけど言葉の重みも然り。

ただ本能のまま、がむしゃらに自分の表現をアウトプットしたとしてもビジネスとなればまた別の話・・・鴨居はあまりにも正直で真っ直ぐだったが故に今生を去ったのであろう。妻の留学をきっかけに南米で絵を描くことになった彼は、その陽気さや熱さに身を委ねること無く「こんな悩まぬ土地では絵は描けぬ」と日本に戻ったというエピソードがあり、この点も非常に納得がいく。

苦痛や悲哀から這い上がってくる鋭利な感覚をキャンバスに刻む事こそが彼の”表現”だったのだのではないか・・・だからこそこれほどの作品を残せたのでは無いかと痛感してしまうわ。

人間は表裏一体。

本当に明るく楽しいものを知る人は反対側の暗い闇を知っている…だからこそ鴨居の絵には暗さや重さというより生命力が満ちあふれているのよ…とにかく参りました!!彼の作品については、改めて別の機会にご紹介させて下さいね。

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2016年01月17日

メタルロゴ日記 その背景にある美景!!編

20160106「メタリカ」「ブラック・サバス」・・・そのネーミングは勿論だけど、攻撃的で挑戦的なバンドロゴは一度見たら忘れられないインパクトを持っているわ。まずバンドメンバーの顔よりロゴを思い出す場合が殆どかも。

昔クラスメイトが、休み時間メタリカのロゴを書けると自慢げ気にノートに書いてくれたことがあったのよね。その鋭利なラインを感心して見ながら「やっぱりメタルバンドはロゴと同様攻撃的なのだ」という印象を持った事を思い出すわ。

メタルバンドのロゴを何千も収集しているデザイナーによると、スラッシュメタルの美を象徴するデザインの代表格として80年代に登場した「スレイヤー」を挙げているの。

角張ったアウトラインに文字と剣が交差した星形五角形という見事なバランス。アリス・クーパーの初期のアルバムでも滴が滴るようなフォントが用いられていたりと、これらのデザインはどこか薄気味悪く残虐なイメージを与えるわね…まず聴き手が一目見てその世界観を直感出来るという事が最も重要なのだから、このデザインは他のジャンルと一線を画したと言えるかも。

メタル音楽やそこから派生する多くのジャンルは破壊、誇り、独立といった理想を常に受け入れ、それを外部に発している。ロゴは単にオーディエンスに見てもらうのではなくこういった精神を反映したものであり音楽の独自性を維持するという表れなのだと関係者は語っていたわ。

黒、死、蜘蛛の巣、血の滴りなどの不気味なアイコンはメタルバンドのアイデンティティとして表現されるけれど、その根源に当たるのはやはり「ブラック・サバス」だそう…彼らのアルバムに使用された泡のようなロゴは幻覚のような雰囲気でどこかサイケデリック・・・その流れは今なお受け継がれているわ。

スラッシュメタルバンドは彼らの音楽的性質を反映し直線的で角の鋭いロゴ、デスメタルバンドは凶暴性や宗教や死に焦点を当てる傾向があるので、血や体の器官、手足や頭蓋骨を合体、ブラックメタルは反キリスト教の考えやオカルトや異教徒がルーツなので、左右対称、渦巻きや円を用いた華麗なものが多い…どのロゴもしっかり主張しつつその芸術性の高さには本当に驚かされるわ。

デザイン的にもゴシックや古い英国のフォントのような鋭い文字、最初と最後は中間よりも大きくする方がバランスが良いそうよ…バンド名も然りだけど、やはりバンドのロゴやカラーというのは非常に大事なものだわ。メンバーと同等のイメージや哲学を背負っているのですもの。自分のバンド時代その部分がきちんと定められなかったことを悔いているのだけど、中央に自分の顔を・・・いや、やらなくて良かったかも…ふふふ。

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2015年12月26日

北蓮蔵日記 リアルを超えた才能・・・!!編

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何気なくTVを見ていたら1枚の油絵が目に飛び込んできた・・・!!まるで映画のワンシーンを切り取ったように、まさに息づいているのよ。

作品はミッドウェー海戦で戦艦”飛龍”と運命を共にした山口多聞提督の最期の場面を描いた「提督の最後」…そして作者は北蓮蔵という明治から昭和にかけて活動していた画家だと知ったわ。

蓮蔵は幼い頃から絵が好きで山本芳翠、黒田清輝らに師事しその頭角を現すも作品はなかなか受け入れられなかったそう…やがて帝国劇場の舞台背景画を手掛け生計を立てていたけれど奮起し退職…その後は当時最も人気の高い戦争画を描き、遅まきの入選を繰り返しキャリアを積んでいったんですって。

彼の代表作のひとつであるこの作品は死を前にした提督とその片腕である加来上男大佐が乗員と水盃を交わしているシーンが描かれているのだけど、メインの二人の表情の穏やかさ、そして彼らと別れを告げる部下達の不安や悲痛な表情に心を抉られてしまう。

後方には燃えさかる炎、その中で敬礼をする部下達、それぞれの人物の立ち居振る舞いや表情が非常に丁寧に描かれており、筆でぼやかしている部分が無いので個々の心情まで見えてくる。しかも加来大佐の目線が描き手の方に向けられた”カメラ目線”になっていて絶妙なバランスを保っているのが素晴らしい。

戦艦の鉄の質感、炎の熱さ、決別の悲哀、すべてが生々しく、蓮蔵はまるでその場面を見て描いてきたのかと思いきや、ラジオで聞いた情報を元に描いたと知って驚愕!!

20151214他にも鉛筆だけで描かれた親の葬列に参加する「遺児」や明治天皇が岩倉具視を見舞った「岩倉邸行幸」、更に印刷工場の昼休みの工員達を描いた「午の憩」などの油絵は写実というよりリアル、リアルというよりその場に蓮蔵自身参加していたであろうと言えるほどの”実在”ぶり。

それぞれにまたカメラ目線もあるという構成力、そして何より半端ないデッサン力もあるけれど、その場の空気や温度、そして音や匂いまでも描ききるというのは脅威でしかないわ。

もし蓮蔵が今の時代を生きていたならば、バットマンノエルのように、その読解力と想像力で物凄い絵コンテを描く映画監督になっていたに違いない。

あまりにも早すぎた!!…そう思うのは間違いかしら!?…かつての日本にこれほどまでに表現力を持つアーティストが存在したというこの事実・・・同じ日本人として誇らしい事よ。

でも昭和初期では蓮蔵のようなタイプは異端であり、未知の存在だっただろうから受け入れられなかったのは仕方ないかもしれないわね。

舞台背景画に甘んじること無く、時間をかけてもしっかりと己の道を切り開いた蓮蔵・・・まずはその心意気と決断に深く感謝したい気持ちよ!!

北蓮蔵の絵のように年末はキリッと引き締め、新年は東京国立近代美術館に「提督の最後」を見に行くと致しましょう。さぁ皆さまも御一緒に!!

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2015年11月29日

松岡美術館日記 白金台のエルミタージュ編

20151114以前、白金台を散歩中に落ち着いた雰囲気の洋館を発見…入口には控えめな「松岡美術館」という文字・・・個人の美術館としては規模が大きいし、何よりこんな住宅街に隠れ家的にひっそりと存在するなんて粋だな、と思いつつ吸い込まれるように中へ。

モダンな室内に足を踏み入れれば「美人画展~麗しの女性美を求めて~」というこれまた興味深い展覧会が開催されていたわ…平日の昼間ということもあり、ご年配の方や着物姿の奥様の姿がちらほら。美術館というよりも邸宅に招き入れられたという様なゆったりとした風情よ。

あとで知ったのだけれど館内はゆっくり鑑賞してもらいたいという意志から監視員を配置せずモニターによる監視、作品の世界観を失わないよう解説版を置かずQRコードでの解説など、鑑賞する側がしっかりと楽しめるような工夫がされていたと知り驚いたわ。

しかもこの美術館の設立者である松岡清次朗氏はあの新宿美術学院を設立者で館内の撮影やデッサンが可能なのよ。建物は2階建てで、まず現代美術の展示室にはエミリオ・グレコやヘンリー・ムーアの母性たっぷりの巨大彫刻がお出迎え。これほどの大きさがありながら包み込むような安心感があり、まるで母体回帰したような気分だわ。

その隣は古代オリエント美術のコーナーで、エジプトで発見された歴史的な石像などが展示されていたの…中でも「彩色木棺」の色合いが美しく、赤や緑の発色の美しさは圧巻よ。しかし見ているうちに背筋がゾッとしてきてしまい、この木棺が何の為に使われたのかという意味を考え持ち主の念を感じずにはいられなかったわ。

更に奥の方には「王妃エネヘイ像」が展示されていたのだけれどかなり現代的なデザインで、エジプトの卓越した美的センスを垣間見た気がする。そして2階のメイン展示室では、その時のテーマである美人日本画がお目見えよ…とにかく美しく繊細なタッチで描かれた美人たちは溜息もので、中でも上村松園作の「春宵」には目を奪われたわ。下女に耳くちされた芸奴が描かれているのだけど、そのしなやかさと艶っぽさと言ったら・・・下女が芸奴に耳打ちするのは女の噂話や陰口なのか、こんな艶のあるストーリーが想像出来る作品が昭和11年に描かれていたなんて、いやあ、素晴らしいのひと言ね。

他も見所満載で書き切れないけれど館内から見える広大な庭園はどんな展示品よりも芸術的と言えるわ…手入れの行き届いた緑、灯篭、そして緑からふと覗く鶴の置物・・・時折展示物から目を休めてベンチから庭園を眺めると、なんとも贅沢な気分。このまま何時間でもここにいたいと思ってしまう。

しかしこれだけの美しいものに出会ってしまうと、まるで自分もその美のエネルギーを得られたような気分になるわ…”美”は感覚を研ぎ澄まし潤わせるための特効薬なのね。美しいものを求める皆さん、芸術の秋ですしこの空間で癒やされてみてはいかが?

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2015年11月24日

山崎克己日記 究極のカミワザ編

20151112行きつけの銀座の画廊で版画展が開催されていたことがあったの。版画はさほど関心が無かったのだけど、ギャラリー内が暖かみのある色合いの作品一色でノスタルジックな雰囲気・・・と思いきや、大胆な作風の中に”毒”を見出し思わずニヤリ…それが「山崎克己展」

コミカルな画風故、その背後にあるテーマはより色濃く映し出されているのも魅力のひとつかしら…赤、黄、黒のみの色彩で表現されたシリーズの中で特に目を引いたのは『目白駅前図』という作品…ISSUEを持って手を振る老人の横に高級車で通り過ぎるマダムが描かれていたわ。

そして同シリーズの『人間磁石』という作品では頑丈そうな体つきの母親が子供を磁石で引っ張っている…この2作品共通して表現されているのは"力関係"なのね!!…登場人物の表情が朗らかでポップな印象になっているけれど、この視点には”ぎゃふん”だわ。

他にも気になる作品は沢山あれどモノクロでA3サイズのやや大振りなシリーズもなかなか良い感じ…どうやら山崎氏は猫がお好きらしく所々に猫を発見したわ…『猫嫌い』という作品では、ランニング姿の頑固オヤジが猫を玄関に投げつけ猫が逃げる様を描いており、今展覧会のメイン作品と思われる『猫の出前』はおかち持ちの真似をして猫を担ぐ青年が生き生きと描かれてるの。

どの作品も昭和の古き良き時代がそのままパッケージングされリアルタイムで当時を知らない自分でさえ懐かしさを感じたわ…街角でどこからともなく漂ってくる夕餉の香り、公園で遊ぶ子供達の嬌声、夕方の太陽と夜が溶けあう色など、様々な生活シーンが存在し作品から溢れ出ている。

そして極めつけは、大胆な彫刻刀使いよ…この荒々しいラインが良い味を出しているわ。しかし画廊の方の説明によれば、なんと作品は全て木版画では無く厚さ2ミリのケント紙を彫刻刀で彫っているのだそうよ!!紙をこんなに大胆に削ってるのに穴さえ開いてない・・・まさに神業・・・いや"紙技”ね!!

紙というものがここまで削られ、しかも薄くなっても丸まらずにいてくれるものなのかと山崎氏の躾ぶりにただただ感心させられっ放しだわ…作家の技術力・・・と言ってしまえば当然なのかもしれないけれど、その情熱が道具や材料にも通じるという事を目の当たりにさせられた展覧会でありました。

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2015年11月13日

アネット・メサジェ日記 剥がされた後に残るものは・・・編

20151107今から7年前…六本木ヒルズの森アートミュージアムで面白い展覧会が開催されているとご招待を受け訪れたのが”アネット・メサジェ”というフランスの女性アーティストの個展「生と俗の使者たち」。

そのタイトルから只者では無い・・・と感じていたけれど実際に作品と出会った瞬間”大好き”センサーが全回転!!…最初の洗礼は、天井一面にぬいぐるみの頭を付けられた鳥の剥製がお出迎え。頭部は明るい笑顔の可愛いらしいぬいぐるみなのに体はリアルな鳥・・・ぬいぐるみの色合いがとてもポップで明るい分気味悪さ倍増で、とても重いものを感じたわ。

その後、広い館内はアネット・ワールドが炸裂!!…「残りもの」というテーマの作品では様々なぬいぐるみの手や耳などが壁に貼られ、その中心には頭から腹を一直線にを裂かれ中の綿を出された大きなぬいぐるみの残骸が手を繋いで4体並んでいたの。とにかくダイナミックで圧倒…まさに臓器を出した後の"残りもの"なのよ。

次に「つながったり分かれたり」という作品では人間のようで人間でないような布を縫い合わせて作られた奇妙な形状の物体がキィキィ音をたてながらオートメーションで上から下へと動いていたの。その動きを見ているうちに「ああ、人間なんて単純で浅はかなんだな」と思い知らされたわ。布で出来た"生き物"達が同じ速度で操作されているのに布の重みや形状の違いでそれぞれ勝手な動きをしていているのを見ていると布達に人格があるようでまたぞっとしてくる。

最も印象深かったのは「寄宿者たち"シリーズ」…真っ暗な空間に然程大きくないガラスケースが3つ置かれているのだけど、照明が当たっていないため何も見えないの。よく見てみようと近づいてショック…そこには剥製の小鳥が一羽ずつ、手作りの可愛らしいニットを身に付け横たわっていたのよ。そしてタイトルは「休息」…その右下にあるガラスケースには小鳥の体にラジコンのような操作盤を付けたり、拷問のような事をさせている"玩具”が・・・あまりにも衝撃が大きく残りのひとつは忘れてしまったけれど、この作品は脳裏に焼き付く1作となったのは間違いない。

シニカル且つポップな仕上がりになっていても、これらの作品から発せられるメッセージは非常に重く確かなものばかり…人間は生まれて間もない無邪気な時代、ものを収集したり身体への関心を強く持つわよね…そして命の重みを理解せず平気で残酷な事ををしてしまう。

中には大人になってからもその感覚を持ち続ける厄介者もいるけれど・・・。きっとアネットは誰の心の中にも存在する"負の部分"を、可愛らしいぬいぐるみや生き物を用いて表現したんでしょうね…彼女なりの皮肉が凄く心地良いわ。

俗にまみれてしまった人間が聖なる時期を省みる時、初めて自分の心の奥深い部分を理解する事が出来る・・・そんなメッセージを投げ掛けてくれたアネットはやはり"使者"だったのかもしれない…今再び彼女の作品を体感出来たら・・・俗まみれの自分は何を感じるだろうか。

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2015年11月09日

反主流の美学日記 カウンターカルチャーとはかくありき編

20151105行きつけの銀座の画廊と東急文化村が同時開催という展覧会「反主流の美学」展が開催されたのは今からもう5年以上も前になるかしら

1960年~70年代という混沌とした時代に暗躍した数々のアーティスト達…面子の豪華さもさることながら、その作品の濃度は果てしなく濃い!!

こじんまりとした空間に息苦しさをかんじるほど主張し合っていた…まず目を引かれたのは太田蛍一氏の「猫」…黒い皮の手袋を身につけた婦人がお乳を与えるというシチュエーションも非現実的だけど、そのお乳を飲んでいるのは紛れもなく猫2匹・・・。

婦人の両乳房は猫のひっかき傷でいっぱいであるにも関わらず、彼女の表情は喜びに溢れているのよ…背後のカーテンと窓、ソファのデザインは非常にモダンで色遣いもほぼモノトーンのせいか不気味さたっぷり。

最も衝撃的だったのは、昭和少女文化を築いたイラストレーター、内藤ルネ氏の作品ね!!…内藤氏の作品で真っ先に目に浮かぶのは、大きな瞳の可憐な少女、愛くるしいパンダちゃんのイラストだけど、今回展示されていたのは初代BL雑誌「薔薇族」の表紙・・・やや角刈りの精悍な顔つきのポロシャツの男性が描かれていたわ。

その下には、これまた短髪七三分けで黄色のベストを身につけた青年が、憂いを秘めた目でこちらを見据えるという「心が砕けてしまいそう」という作品が・・・!!タイトルの斬新さも手伝い見ているこちらの心は完璧に砕かれたわよ。

巨匠は男女問わず人物を魅力的に描く天才であると確信したわ。そして丸尾末広氏の生原稿の美しさ・・・今回、寺山修司の作品をテーマに描かれたものもあり、いつもながら画面いっぱいに漂う妖艶さは垂涎ものね…画廊内では渋沢達彦氏や中井英夫氏の希少な幻想文学コレクション等が販売されていたりとツボをしっかり抑えたラインナップに大満足。

改めてこの時代に生まれたアートの持つエネルギーの凄まじさを実感できたわ…何でもそうだけれど反骨精神がもたらす変化は非常に大きいものよね…それだけ若者達が主張し行動するという”生きた”時代であったからこそこういったムーブメントが起きたし、それは今なお新鮮さを失うことはない。

はてさて、今の若者達は反骨どころか流されてばかりいる気がするし、”カウンターカルチャー”もただカウンターでお茶を飲む位の意味合いしかなくなってしまうかも・・・うーむ。

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2015年10月24日

吉田光彦日記 おやつ片手に紙芝居!!編

20151011行きつけの銀座のギャラリーで「紙芝居」が開催されると聞いて行ったのは今から8年ほど前のことかしら。

挿絵画家である吉田光彦氏の書き下ろしということで期待したけれど、そのライブパフォーマンスを含め大変素晴らしかったのを覚えている…吉田氏は元々新聞や雑誌の挿絵を手掛けており、寺山修司の舞台ポスターなど多岐に渡り活躍しているわ。

画風は非常にレトロ・・・というと少々陳腐な表現になるけれど、日本ならではのノスタルジックさ、そしてエロティックさを兼ね備えているの…殆ど水彩の作品でありながら重なる滲みが全く無くて職人技とも言うべき正確さで色づけされていたわ。陰影の部分を見ても本当は水彩だけでは無くリキテックスなど混ぜているのではないか・・・と思えどもやはり水彩なのが凄い。

お待ちかねの紙芝居の題材は「髑髏鬼」…源頼光が悪さをする酒呑童子を、安倍晴明操る髑髏鬼を使って退治するというストーリーよ。ボール紙1枚1枚に丁寧に描かれた絵はとにかく美しく、物語を途中から見ても理解出来るようにわかりやすく構成されていたわ。これほどの画力があればどんな題材でもこなせてしまうな・・・と感心する中、拍子木を使いストーリーの緩急を演出するパフォーマンスにもうっとりよ。

幼少期、実際に紙芝居を見る機会がなかった自分にとっては至極新鮮であり、これほどまでに視覚、聴覚共に夢中にさせるコンテンツが昔の日本に存在していたなんて、なんとも誇らしい気分になったわ。しかもギャラリーの粋な計らいで、おせんにキャラメルを楽しみながら鑑賞という当時の習わしを踏襲し最高に良い雰囲気!!…昔の子供達はこうしてお菓子片手に紙芝居を楽しんだのね。娯楽が少ない時代だからこそ、こうしてアイディアに富んだ素晴らしいイベントを楽しんでいたのでしょうね・・・羨ましい。

ギャラリーに集まった人達は拍手喝采!!・・・実に楽しい夜になったわ。公演後吉田氏と少しお話をしたのだけど、今でも最後の印象的なひと言を思い出す…「今でこそ僕はイラストレーターと呼ばれるのかもしれないけど、敢えて言うなら・・・挿絵作家だね」これだと思うことを突き進んできた人の言葉はずっしりと心に響くものね。

技術は身についていくものだけど、それを継続させるのは自分の情熱であり自信しかない・・・御年60歳の人生の師に諭され今一度、この言葉の重みを噛み締めるのでありました。

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2015年08月14日

軽部武宏日記 有味有臭なモノクロ編

20150803今から8年ほど前のこと・・・馴染みのギャラリーで圧倒的な存在感を放つ作品に惹きつけられたわ…画家の名前は「軽部武宏」

決して広くはない展示室の中で、モノクロの作品たちがとてつもない奥行きを生みだし、そこここでうねっている。描かれている線の大胆さと繊細さのバランスが完璧で暫しその美しさに見惚れてしまうけれど、その後に来るのは絶対的な”不気味さ”

いつも何の情報もないままギャラリーには訪れるので、そこで初めて出会う作品に刺激を受けているのだけど、何というか・・・これまた導かれるように”見てしまった”というのが正直な感想だったわ。

当時開催されていた個展のテーマは「水辺幻燈」…田舎のよくある風景が描かれていたのだけど、軽部氏のフィルターを通すとこの日常がとてつもないものに変換される。水田で仕事をする子供の頭上に生える奇々怪々とした藁...無表情な顔を持つ水辺の石…睡蓮の花を持つ目のない双子・・・。まさに日常の風景から垣間見る”不気味さ”が見事に表現されていたわ。きっと軽部氏は子供の頃こういったのどかな環境に身を置いて、自然を体感していたのかしらね。

そして太陽が沈み闇に呑まれる隙間に好奇心を抱いていたに違いない。幼い頃は誰でもそういった日常の闇にお化けや異形のものなどの存在を見出して怯えるけれど、軽部氏は大人になってからもその存在を見出し描いている・・・実に素晴らしい事よ!

衝撃的な出会いを遂げ丁度画廊で販売していた彼の絵本「こっそりどこかに」を迷わず購入…今では絶版しているそうなので貴重品となったけれど、更なる宵闇魔刻ワールドが展開されているの。こちらは夜目にも鮮やかな黄色いレインコートを着た少年が、捜し物をして夕暮れ時の街を走り回るというストーリー。

少年が街中を走る間に登場する異形の者達の姿は恐ろしくもノスタルジック、どこか記憶をくすぐるような者ばかりで愛着を覚えてしまう…全編お得意のモノクロだけど一部色が使われていることでアクセントになり一層怖さを引き立てていたわ。絵本というカテゴリーではあるけれど、この本は子供向けではなく私達大人に向けて作られたものなのよ。

どんな美しいものでも視点を変えれば怖く見えたり滑稽に見えたりする。子供の時に畏怖として感じられたものは大人になり様々な経験をして理解する事でその威力を失ってしまうけれど、軽部氏は子供の時の感性を持ちながら更にその存在を愛情たっぷりに不気味に描き続けているわ。

描く力も凄いけれど、その感覚を持ち続けるという事が更に素晴らしい事よね…なんでも長く続けていると慣れやテクニックなどで新鮮な感覚が欠落していってしまうもの・・・最も大事な事は好奇心を持って追い続けること、なのかもしれないわね。さて、夏の夜の帰り道、あなたは揺れる柳の葉の囁きや橋の上からこちらをじっと見つめる視線・・・感じてますか?

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2015年08月09日

東京湾大華火大会2015 人生最大の特等席から・・・編

20150806去年中止になってしまい、今年こそは・・・!!で待ちに待った「東京湾大華火大会」

この日のために仕事も調整し、やっと当日を迎える事が出来たわ。

新居はこの華火大会が家のベランダのど真ん中で鑑賞できるというのが大きな売りのひとつ。

そのセールポイント通り、この上ない贅沢な光景を堪能させて頂いたわよ…当日は周辺道路が閉鎖されマンションの住人以外は立ち入り禁止という厳戒態勢…1階の庭では専用の屋台が出るという賑わいぶりよ。

プライベートな空間で華火を楽しむという贅沢な状況に99年ドンペリを開けて乾杯!!その音、色、大きさ、どれをとってもスペシャル級で過去最高よ。

華火が打ち上がる前の準備から海上に沢山の船が集結するまでの過程をベランダからずっと観察できたのも貴重な体験…これまで何度も華火を楽しんできたけれど、これほどまでに色々な意味でゴージャスな華火大会は初めてかも。

さぁ、美しい夏の夜に彩られた華たちをご堪能あれ!!

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2015年08月07日

真夏の積乱雲日記 ヒルズのお山は滅びの山!?編

20150705毎日暑い日が続き熱中症で運ばれる人も多数なこの数日。

東京でもエアコンを入れないと部屋の中が40度近くまで上昇してしまうと言う人も・・・。そんな最中、昨日の日没から巨大な積乱雲がモクモクと漂いはじめ音も無く物凄い閃光が・・・。

それが丁度、六本木ヒルズの上空近辺だったので撮影してみると、幾度もヒルズの方角に閃光が走るではありませんか。

その時、ふと思ったのが、ヒルズの上に「ロード・オブ・ザ・リング」に出てくる悪の親玉、サウロンの目を乗っけてみたらそれっぽくなるかと・・・。

合成してみると、いい感じでサウロン・ヒルズタワーの目に滅びの山からの閃光が…そうかやっぱり六本木ヒルズはサウロンだったのかと(笑)

閃光は30分ほどだったのですが、雷的な音は無く、ただ光がダークな雲を照らし出す様は素晴らしいアートで驚きでしたよ。このようなダイナミックな光景を目にするとしないとでは確実に自分の色彩感覚が違ってきますよね。自然は最高の先生です!!

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2015年07月30日

幽霊画日記 掛軸からの視線編

20150720夏の風物詩といえば、やはり「幽霊」…以前、千駄木にある「全生庵」というお寺で三遊亭円朝の幽霊画コレクションを見に行った事があるのだけど、これが実に見事なのよ。

毎年夏限定で公開されているそうなのだけど非常に人気が高く、多くの来訪者が所狭しと飾られた幽霊たちにヒンヤリ・・・。

幽霊=女性=怖いという感覚で見てしまいがちだけど、その考えは一瞬にして吹き飛んでしまう。

どの作品も女性の「情念」「暖かさ」「ユーモア」が表現されているわ。目をむき出し血を滴らせ、蚊帳の上からニヤリと家主を覗くなど、オーソドックスな光景でありながら背筋にゾクッと来るものがある。

しかしながらやはり美人の幽霊というのは怖い!掛け軸の中で「うらめしや・・・」とか細い声を漏らしながらも急に変貌して襲いかかってきそうな勢いを持っているんですもの…中にはだまし絵風に表現されているものもあったりして、現代の広告に繋がるデザイン的な作品もちらほら。

幽霊というものがこれほどまでに生々しく且つアーティスティックに描けるなんて羨ましい限りだわ。

個人的に気になったのは、菊池容斎作の「蚊帳の前に座る幽霊」…行灯の中に紛れ込んだ蛍・・・そのうちの1匹が灯となってぼうっと照らし出した蚊帳の先には、女性の幽霊が!という構図なのだけれど、タッチが非常に現代的で行灯しっかり描かれているのが興味深い。

通常なら蚊帳の手前をしっかり描き向こう側が淡く描かれて当然なのだけど、わざと逆転しているのが面白いのよね。きっと現実世界ではおぼろげな幽女が、あやかしの世界で現実感を増すという趣向なのだろうけれど、特に際立っていたのは彼女の目よ!誰かを待っている・・・でもそれは流れない時間の中で、寂しいと言うよりも虚しさが増してゆくだけ。そんな物語を想像してしまうほどの切なさを感じるわ。近くで見ると行灯と幽霊の質感に違和感があるというのに、全体的に見ると完璧な融合!終わりのない女の悲しみが見事に表現されているのが素晴らしいわ。

他にも俗世的な感覚を超越していると痛感したのは、円山応挙の「幽霊図」かしら…他の幽霊画は墨の濃淡や別色の加筆でアクセントを出すという手法をとる中、この作品はワントーンで勝負しているの。袂に手を添えややうつむき加減の幽女は、今世の私達を「クスッ」と笑ってるようにさえ見える。気品に溢れた表情としなやかさに暫し見とれてしまったわ。

絵というものは見る側の気持ちや状況によって解釈が変わるもの…彼女達から放たれるメッセージはその都度変化し、私達の心の奥底をじっと見つめているに違いない。どの幽霊からも人間が人間であることの愛おしさ、そして虚しさすらも感じるわ。もしあなたが幽霊になるとしたら、どんな風に描かれたい?そうねえ、自分ならスリムでセクシー・・・ひゅーどろろ~。

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2015年07月07日

エコエコアザラク日記 怪奇伝説編

20150703以前、銀座のヴァニラ画廊でホラー漫画の巨匠、古賀新一先生の個展が開催されていたわ…古賀先生の代表作といえば現代の魔女、美少女黒井ミサの生き様を描いたホラー巨編「エコエコアザラク」。

幼い頃、主人公ミサの黒魔術の儀式のシーンを見てエロティックで怖いと思ったことを思い出す…何度もドラマや映画化を繰り返しているけど、この原作の重みを表現出来たものは皆無ね。古賀先生の作品は腰を据えて読んだことはないけれど、その線の細やかさや美しさには目を奪われるわ。

出版社の管理が珍しくしっかりしていたお陰で「エコエコアザラク」前の作品もいくつか展示されていたのだけど、数十年、いや恐らく永遠に"生き続ける"線というのは、こういう事なのだろうか・・・それが、展示された古賀先生の生原稿を目の当たりにした第一印象ね。現代のようにPCで様々な効果や修正も簡単に出来るのは喜ばしいことだけど、そんな事を超越して先生の原稿は美しい。

展示物の中には先生が「エコエコ・・・」を描くに当たり研究していた文献なども展示されていたわ。コマのひとつひとつにぼやけた部分は全く無く、どこもかしこもしっかりと描かれているのは、きちんとした調査に裏付けられてストーリーが描かれているからなのだと納得。

ミサを始めとする女性陣は魅力的でどこか生々しいし、白黒の世界からじとっとこちらを覗いているモンスター達は生臭ささえ感じてしまう。壁一面に展示された原稿たちは重苦しい程のパワーを放ち、観客である私達をあざ笑っていたわ。ペンと筆というシンプルな道具から生み出される表現・・・原稿用紙の向こうに広がる無限の世界・・・漫画って本当に素晴らしい!

更に驚くことに、古賀先生はそろそろ活動60周年!!…これからもどんどん新たな作品を生み出していって頂きたいわね。後世に残る作品というのは、絵も音楽も何でも同じ。どれだけ命を込められるか、どれだけ愛を与えられるかということなのね。また大事な事をひとつ教えて頂きました・・・エコエコアザラク、エコエコザメラク

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2015年06月29日

2015夏至日記2 627は凄かった編

昨日(6/27)の夕空の写真が見たいとのリクエストにお応えしてアップいたしますよ~。

先ずは日の入りは火山噴火口のようにも見える雲とのコントラストから始まって、何やらただならぬ気配!!
20150621

この時期は丁度ヒルズに日が入り美しいのです
20150622

日が沈み始めると、なんと雲がゴールドに。
20150623

やがてだんだん赤と言うよりピンクに近い輝きで反射する海の色がピンクゴールドじゃありませんか!!20150624

空のコントラストは見事なグラデーションで視界を圧倒!!20150625

最後に東京タワーがライトアップされる頃には深みのあるワインレッドがアートなSKYLINEを描いていました。20150626

驚きの空模様にtweetも大賑わい…美を感動共有できるのっていいですよね!!







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