2016年03月11日

柳生一族の陰謀日記 これは、夢ではござらぬ・・・!!編

20160306「子連れ狼」で日本のTVエンターテインメントを見事確立した怪優、萬屋錦之介の足跡を追うべく、1978年主演映画「柳生一族の陰謀」をじっくり鑑賞。

当時はTVシリーズ「子連れ狼」が終了した頃で錦之介も脂が乗りきり洗練された時期だけに、その怪演ぶりは後の世にまで語り継がれるべき素晴らしさ!!興行的にも大成功を収め日本映画というものがこれほどまでにしっかりと作られていたのだと知る事が出来、誇らしい気持ちになったわ。

特に興味深いのは、柳生烈堂に復讐を誓う拝一刀を演じた錦之介が今回は柳生一族の長、柳生但馬守宗矩を演じるという点ね…しかもこの宗矩はかなりの悪党・・・一族と我が子を守るために戦った一刀と真逆の役どころというのが良い。更に歴史上の人物と史実をフィクションと織り交ぜ脚色されているのも面白いわ。

監督の深作欣二は任侠映画の第一人者であるし抗争や艶の部分が誇張されて描かれてしまうのではと多少心配だったけれど、人間臭さがプンプンとしながらスケールの壮大さが十二分に表現されていて見事。毎度の事ながら宗矩演じる錦之介は神懸かっており柳生十兵衛演じる千葉真一、三代将軍家光演じる松方弘樹らの若々しくも鋭利な演技も見応え十分…更に山田五十鈴や丹波哲郎、金子信雄等々重鎮の存在感も際立っていたわ。

当たり前の事だけど俳優陣は乗馬も出来れば所作から着物の着こなしまできちんと出来ており、日本の時代劇とはなんたるかということを思い出させてくれたの。ただ錦之介の殺陣はさほど動かずとも相変わらず刀の重みを感じさせる上に美しいけれど、千葉率いるJACの殺陣は見せる事が主体であるせいか、動きは見事で鮮やかだけれども刀の重みはさほど感じられない。これは日本の時代劇がアクション主体へ移行する端境期を垣間見たとも言えるわね。

ストーリーは徳川二代将軍秀忠が急死を遂げた事で、長男の家光を三代目に推す柳生但馬守宗矩や春日局、次男の忠長を推す尾張、紀伊、水戸の御三家と老臣一派、それぞれの思惑が渦巻き、天下を揺るがす将軍家跡目争いの戦いの火ぶたが切って落とされたというものだけど、秀忠の不審死を調査する為忍びが遺体から胃袋を取り出し、宗矩が「Xファイル」のスカリーの如くそれを解剖したり十兵衛の妹演じる志穂美悦子がオスカルのように男装して戦ったり、家光があばたの上吃音症であったなどの脚色が時代背景を無視しているとはいえ斬新。

個人的には成田三樹夫演じる朝廷の白塗り関白鳥丸少将がのらりくらりと公家らしく振る舞うもなかなかの策士で剣の達人であったり、故・原田芳雄演じる忍び三郎が密やかに出雲の阿国を愛するロマンチストぶりははまりすぎていて作品に色を添えていたわ。豪華キャストをこれだけ配置してもお腹いっぱいにならないというのは適材適所キャスティングだという証ね。

やはり最大の見どころは錦之介の宗矩!!

己の野心の為には家族同然の根来衆を根絶やしにし自分の子供の死にも動じない。この極悪非道な男が最初にして最後となる恐怖と落胆、絶望を一身に受けたラストシーン・・・これは日本映画界に於いて歴史的なシーンと断言出来るわ。

全編通し宗矩は歌舞伎の様な口調で話しているのだけど、これが浮いているようで浮かず、すべてはこのシーンの為にこの口調が必要だったと理解出来た。演出も実に見事で、十兵衛は自分の大切な仲間や家族を殺した父に復讐すべく彼の最も大切な将軍家光を殺害し、その首を父に放るの。

その首に驚愕した宗矩は瞬時に切断された己の手首も顧みず乱心・・・「三代将軍様ぁ!!」と寄り目の表情で首を大事に抱き「これは夢だ、夢だ、夢でござーる!!」と見得を切り絶叫する様は歌舞伎とも沙翁とも言えるが錦之介式と呼ぶべきか・・・これは錦之介でなければ演じられないわ!!

この名言は後に「バザールでござーる」の広告の基になっていたと知りかなり驚いたけれど、この映画は社会現象になるほどに沢山の人が鑑賞したという事に安堵よ。創る側も見る側も共に感度が高く、現代の様に事務所同士の癒着もなく、エンタメが最もエンタメらしくあった時代・・・こんなにも素晴らしい作品が日本に存在するという事を今の若者達にもきちんと伝えていかなくてはね。それは夢では、ござらぬ!!

pipopipotv at 00:00│Comments(0) 映画&TV 

コメントする

名前
 
  絵文字