2015年08月14日

軽部武宏日記 有味有臭なモノクロ編

20150803今から8年ほど前のこと・・・馴染みのギャラリーで圧倒的な存在感を放つ作品に惹きつけられたわ…画家の名前は「軽部武宏」

決して広くはない展示室の中で、モノクロの作品たちがとてつもない奥行きを生みだし、そこここでうねっている。描かれている線の大胆さと繊細さのバランスが完璧で暫しその美しさに見惚れてしまうけれど、その後に来るのは絶対的な”不気味さ”

いつも何の情報もないままギャラリーには訪れるので、そこで初めて出会う作品に刺激を受けているのだけど、何というか・・・これまた導かれるように”見てしまった”というのが正直な感想だったわ。

当時開催されていた個展のテーマは「水辺幻燈」…田舎のよくある風景が描かれていたのだけど、軽部氏のフィルターを通すとこの日常がとてつもないものに変換される。水田で仕事をする子供の頭上に生える奇々怪々とした藁...無表情な顔を持つ水辺の石…睡蓮の花を持つ目のない双子・・・。まさに日常の風景から垣間見る”不気味さ”が見事に表現されていたわ。きっと軽部氏は子供の頃こういったのどかな環境に身を置いて、自然を体感していたのかしらね。

そして太陽が沈み闇に呑まれる隙間に好奇心を抱いていたに違いない。幼い頃は誰でもそういった日常の闇にお化けや異形のものなどの存在を見出して怯えるけれど、軽部氏は大人になってからもその存在を見出し描いている・・・実に素晴らしい事よ!

衝撃的な出会いを遂げ丁度画廊で販売していた彼の絵本「こっそりどこかに」を迷わず購入…今では絶版しているそうなので貴重品となったけれど、更なる宵闇魔刻ワールドが展開されているの。こちらは夜目にも鮮やかな黄色いレインコートを着た少年が、捜し物をして夕暮れ時の街を走り回るというストーリー。

少年が街中を走る間に登場する異形の者達の姿は恐ろしくもノスタルジック、どこか記憶をくすぐるような者ばかりで愛着を覚えてしまう…全編お得意のモノクロだけど一部色が使われていることでアクセントになり一層怖さを引き立てていたわ。絵本というカテゴリーではあるけれど、この本は子供向けではなく私達大人に向けて作られたものなのよ。

どんな美しいものでも視点を変えれば怖く見えたり滑稽に見えたりする。子供の時に畏怖として感じられたものは大人になり様々な経験をして理解する事でその威力を失ってしまうけれど、軽部氏は子供の時の感性を持ちながら更にその存在を愛情たっぷりに不気味に描き続けているわ。

描く力も凄いけれど、その感覚を持ち続けるという事が更に素晴らしい事よね…なんでも長く続けていると慣れやテクニックなどで新鮮な感覚が欠落していってしまうもの・・・最も大事な事は好奇心を持って追い続けること、なのかもしれないわね。さて、夏の夜の帰り道、あなたは揺れる柳の葉の囁きや橋の上からこちらをじっと見つめる視線・・・感じてますか?

pipopipotv at 00:00│Comments(0) アート 

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