2015年06月08日

谷崎潤一郎日記 痴人の愛編

20150605お気に入りの本を挙げるとすれば間違いなくそのうちの1冊に入る、谷崎潤一郎の快作「痴人の愛」…90年も前に産声を上げたとは思えないほど、その突き抜けた感性とこだわりには今なお驚かされるばかりよ。

何度読んでも新鮮で、常にこの特異な感覚に触れていたいとすら思ってしまうわ。言わずと知れた谷崎潤一郎の代表作であるけれど、これはもはや紙面を飛び出した”感覚的小説”と呼ぶべきかもしれないわね。

物語は皆さんよくご存じだと思うけれど、生真面目なサラリーマンの讓治がカフェの女給をしていた13歳年下の少女ナオミを自分好みに育てるというものよ。しかしこのナオミ、成長するにつれ天性の妖婦ぶりを発揮し讓治を悩ませてしまう。自分の魅力を誇示するかのように次から次へと浮気を繰り返すナオミに遂に三行半を突きつける夫・・・しかし彼の身も心も既にナオミに囚われており、逆に彼女に飼い慣らされてしまっていたわ。その後は焼けぼっくりに火、などという可愛らしい和解ではなく、ナオミ崇拝者の讓治は再び彼女に翻弄されながら元の鞘に収まるの。

客観的に見れば、事件が勃発するキッカケはすべてナオミであり悪いのは完璧に彼女の方なのよ。しかしながら讓治があまりにも彼女を愛するが故に形勢は最初から逆転しっぱなし・・・読者としてはしっかりしなさいよ、と応援する気持ちがあったはずなのに不思議とナオミ側についてしまうというのは、谷崎潤一郎の描くマゾヒズムが自分の中にある女性の本能に心地良く響いてくるからなのかも。

”生きる”という戦場において、財力も知力も持たない地味な少女はこれまで前線に出ることすらままならなかったけれど、讓治という武器庫を得たことで最前線に躍り出、更に自分の持つ武器が強靱であることに気付き自分なりの戦術を見出した、ということかもしれないわ。女性が生きて行くには今よりももっと厳しかった時代、この作品を読んだ女性陣はきっとナオミの自由奔放な生き様に憧れ、こうありたいとため息をついていたに違いない。

現代は男性の勢いが弱まりナオミのような女性が増えてきたかもしれないけれど、やはり女性はパートナーに思われてこそ幸せ・・・例え度を超しているとしてもお姫様気分を味あわせてくれる男性がいるとしたら最高よね。お気に入りのシーンは多々あれど個人的に一番好きなのは、カフェを辞めたナオミが讓治と友達のような付き合いをしながら同居する家を探したり、以前から学びたかった英語や音楽を自分の好きな服を着て習いに行く行なの。

まだ妖婦の片鱗は見えず、讓治しか頼る人がいない状況下で言葉少なげにひっそり生活するナオミがなんだか可愛くて仕方ない。やがて大輪の花が咲くように豹変するナオミに対しては20%の軽蔑、70%の憧れ、10%の愛ならぬ哀を感じるわ。この視点ってどこか親父臭い気がする・・・気のせいよね。

しかし女たるもの、自分を主張するには常日頃から武器を磨き、戦況の変化に対応すべく戦術を立てるということが重要であると読む度に痛感させられてしまう。ナオミのような戦術士官にはなれないけれど、まずは美白から始めるとしよう・・・そしていずれは・・・無理ね。

pipopipotv at 00:00│Comments(0) ご本 

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