2015年02月03日

三島由紀夫日記2 「鍵のかかる部屋」は秩序を保つための無秩序編

20150202一度読んだぐらいでは到底真意を掴めない、読者に挑戦状を叩き付ける・・・そういう作品は実に魅力的であるわね。三島作品の中でも「鍵のかかる部屋」はそんな1作に挙げられるかもしれない。

年の差がある男女間の恋愛小説なんて腐るほどあるけど、三島氏はこの作品で新たな魔性の女を誕生させたわ。物語は、戦後間もない日本を舞台なの。

財務省に勤めるエリート官吏の一雄はある女性と親しくなり、彼女の家の鍵の掛かる部屋で秘密を共有していけど、持病の発作で突然死してしまう。やがて9歳になる女の娘"房子"は彼に懐き、やがて鍵の掛かる部屋で2人は新たな楽しい時間を過ごすのだが・・・というなんともスキャンダラスでミステリアスなストーリーよ。

魔性というのは、この9歳の房子の事なの。母親が色々な男性を招き入れるのを側で見ていたせいか、はたまた天性なのか、男性に媚びるという事を本能で理解してるのよ。物語の後半では、小さくて可愛いかった少女が初潮を迎え”女へ変化”する様が「今まで乾いていた唇さえも潤い光り出す」という描写で表現されていてゾッとしたわ。

しかも一雄と初めて出会ったときも、自分を可愛らしく見せたいが為に微笑の歯を見せたり、片手でスカートをまくり上げ赤い靴下留めを片手でピチッピチッと鳴らすなど、天性のコケットぶりを発揮しているの。時に、子供の無意識の行動は大人を動揺させるけれど、そこに艶めかしさを感じてしまうというのはちょっぴり変質的というか・・・理解しがたいものがあるわね。

一方、一雄は常に日常や仕事に対して無意識を心がけ己の内なる世界で生きていたのだけど、房子と親しくなってからは彼女を意識し内なる世界だけに生きられなくなってしまうの。その葛藤からか、彼は自分の夢の中で『誓約の酒場』という場所に訪れるようになったわ。

そこを訪れる者は皆、己の素直な感情を告白するというルールがあるのよ。ある男は少女を絞った血の酒を勧め、ある男は女の体中に洋服を着たような入れ墨を入れさせ、買い与えたコンパクトを肉を裂いて作ったポケットに入れさせたりと、サディスティックな欲望を話す事で現実世界での常識的な自分を保っているの。しかしよくもまあ、これほど残虐なアイディアが出てくるものだと、文章を通して三島氏の耽美主義を感じずにはいられないわ。

「鍵のかかる部屋」は女性の狡猾さと血なまぐさがドロリと描かれて、女であることに嫌悪感を抱いてしまうほどなの。本編を読み終えると、最もノーマルなのは一雄を誘惑して家に招き入れた女性で、最もアブノーマルなのは房子の面倒をみているお手伝いのしげやだという事に気付くわ。しげやは肥った、髪の薄い真っ白な蛆のような女と2度も同じ描写をされているのだけれど、もしかしたら三島氏は彼女を一雄や房子の淫蕩さを糧に巣くう蛆、と表現したかったのではないだろうかと思える。いずれにせよ、女であることの浅ましさが見事に描かれていることは間違いない。

人と人が関わり合いを持つ以上、何かしら感情や行動が生まれるのは当然。時には感情を抑え笑顔で秩序を保たなくてはいけないことも沢山あるわね。自分がコントロール不能になる前に、人間の最高機能である"想像力"を駆使してこの世の秩序を保っている人も多いはず・・・。一雄がこの秩序を守れたかどうかは結末を読んでからのお楽しみだけど、皆さんはどんな方法で無秩序を楽しんでいるのかしら・・?

pipopipotv at 00:00│Comments(0) ご本 

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