2013年03月09日

火山人間日記 ほろ苦い暗黒童話編

20130306「火山人間」…このタイトルとアートワークを見た瞬間戦慄が走ったわ。

このアプリは世界で10万ダウンロード突破し、NUIT DU LIVRE- Paris2012 電子書籍部門で大賞受賞と非常に評価の高い作品よ。これだけ電子書籍のシェアが広まりクオリティの高いコンテンツが鎬を削る中、後退気味の日本…一体どうなってしまうのかという不安でいっぱいだわ。

この作品はフランスで制作されたもので、日本語、英語、フランス語、スペイン語に訳されているの。内容が内容だけに対訳が困難な部分も多いけれど、感覚的にズン!と伝わってきて読み終えた後は震えが来たわよ。

物語は10歳の少女である「わたし」が弟ジェルマンについて独白するスタイルで進行していくの。勉強嫌いの変わり者の弟は「地底旅行」という本の虜になり、地底人と友になることを夢見ていたわ。学校の成績が上がったご褒美に家族全員で火山へ行くことになり、弟は大喜び。しかし、現地に着くなり興奮した弟はそのまま火山口へと吸い込まれて行ってしまった。

そんな悲劇から4年経ち「わたし」は弟を思い悲しみに暮れていると、聞き慣れた声が・・・!

よく見ると小さく黒く焦げたジェルマンが煙を上げてピョンピョンと跳ねていたの。変わり果てた姿の弟は生前と変わりなく朗らかで、チョコバーに隠れたり、女の子の胸にうずまったり気ままな生活をしていると言う。呆れながらも「わたし」は弟に再会できた嬉しさに涙し、燃え続ける弟を不憫に思って、お得意のお菓子作りの要領で弟をクレープの皮でコーティングしてあげたのよ。

やがて帰宅した母は、コーティングされたジェルマンを息子と認識する間もなく口へ・・・なんとも美しく、なんとも切なすぎて呆然としたわ。ストーリーもさることながら、イラストの美しさには目を見張るものがあるの。フランスらしい茶とグレーのカラーチャートのみで描かれたような細やかな線は存在感がある上に滑らか…いつまでも見ていたい、そんなラインよ。

このアプリは革新的な仕掛けがいくつかあり、どれもが「時間」を見事に表現しているわ。火山に墜ちていくジェルマンの動きは何層ものレイヤーになっていて火山にゆっくり呑み込まれていくし、姉のベットでゆっくり休む弟の炎がシーツに燃え移っていったり、ジェルマンが鬱病のティンカーベルと初めての恋を鍋の中で楽しみ、やがて鍋の蓋が閉められ彼の炎だけがチラチラと燃えていたりと、ストーリー同様動的な部分もゆっくりと進み、心臓をチクチク刺されたような気分になったの。

音楽も同じフレーズのメロディーが要所要所で登場し、火山に墜ちるときは歪んだりして、世界観を邪魔しない匙加減が絶妙で、更に心臓を刺されたわ。一見偏り気味な世界のように見えるけれど、テーマである家族愛がしっかりとしかも自然に描かれているのが絶妙ね。

笑うべきか、嘆くべきか、この結末に対してどう捉えるかは読み手の感性に委ねられている訳だけど、あまりにも素晴らしい作品を目の当たりにすると悔しいというか痛いというか、それでも目を通さずにはいられない麻薬のような高揚があるのよね。

自分の感性に全てがガッチリリンクするというのは非常に珍しい…このアプリを制作したアーティストに是非コンタクトを取らなくては・・・。このアプリは、誰もがどうなるのかと期待していた電子書籍に革新的な一石を投じたわ。歴史的な瞬間を決して見逃すな!

pipopipotv at 00:00│Comments(2) ご本 

この記事へのコメント

1. Posted by ふじにぃ   2014年01月19日 22:07
初めまして。僕はバンドDIONYSOSからMATHIAS MALZIAUの事を知って、今猛烈にこれ読んでみたいんですけど、残念ながらアプリ使っていないので今は断念しています。来月彼の映像作品"JACK ET LA MECANIQUE DU COEUR"が出るみたいですね。日本で入手できるかは不明ですが。

以前EMILIE AUTUMNの事で貴方の日記にたどり着いた事があって、せっかくですからお気に入りに登録させて下さい。
2. Posted by ピポ子   2014年01月20日 17:26
ふじにぃ様
初めまして!ご丁寧に恐れ入ります!貴重な情報も有難うございます。
EMILIE AUTUMNのブログからヒットして頂けたとは・・・これまた嬉しいです。
今後ともお付き合いさせて頂けたらと思います。
よろしくお願い致します。

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